J.シュトラウスⅡ:ワルツ「ウィーンの森の物語」

サモスード指揮ソヴィエト国立放送交響楽団(melodiya)LP

序奏部は軽音楽に止まらないリッパな後期ロマン派管弦楽曲の世界だ。ホルンソロの美しさ。フルートのかもす朝の空気。グリーグやディーリアス的ですらある。そこからヴァイオリンソロでそくっとさりげなく始まるワルツにはぞくっとする。このひとの曲は新しい。クラシカルでアカデミックなロマン派音楽のそれではない。人々の心を捉えたのは魅力的なリズムと旋律と用途+イメージだけだったのだろうか。この美しい序奏・・・ロシア国民楽派の、特に折衷派チャイコフスキーが憧れた高音域だけによるハーモニックな旋律に通じるもの。ロシア国民楽派と呼ばれる一派はプロコショスタコ大好きさんたちに言われるほど頑迷でアマチュアに拘った集団ではなく(そんなのスターリンのイメージにすぎないし時代が半世紀以上違う)、元々ペトログラード楽派(五人組ら独自性を求めた陣営)を中心としたロシア国民楽派の人たちは、本業とウォッカ以外の人生の全てを西欧の伝統的な・・・とくにハイドンやベートーヴェンといった源流部分の・・・音楽の研究についやし、室内楽で実験を繰り返し、そのうえで革新的な表現を求め同時代の前衛であったワグナーらの手法を取り入れるとともに民族音楽の世界に足を踏み出し、ナショナリズムの風を受けてリストの轍を踏み自国の民謡収集から初めて「新しさ」とはどう表現すればいいのか、その源泉は実は足元にあったのだ、ということに気づいた。それはさらにムソルグスキーなどの天才の手によって昇華され、アカデミズムとの拮抗に悩む若きフランス楽派に核心的なインスピレーションをあたえ、結果的に世界の音楽地図を塗り替えた。モスクワ楽派(ルビンシュテイン、チャイコら折衷派と言われた西欧寄りの陣営)とて外から見れば五人組から遠いところには決していない。長い作曲家の人生の中で作風だって変わる。チャイコの初期曲は五人組に模範とさえ言われた。辺境に多いシベリウス至上主義者たちだって政治的に迫害を与えたロシアそのものからの根本的な影響を否定はできまい。ナショナリズムを大管弦楽によって高らかに宣言したのは(伝統的なドイツイタリア以外では)ロシアが初めてなのだ。西本某がロシアオケを振ってフィンランディアを演奏しているCMを見て奇妙な感覚を覚えつつもそのあからさまな表現手法のベースにロシア国民楽派のやり方があることを感じる向きはいなくもないだろう。ヨハン・ユリウス・クリスティアンさんが純粋なフィン族と言えるのか疑問を投げかける人もいる。フィンランディアが最初から民族鼓舞のために作曲されたものなのかという人もいる。そんなとこまで網羅したうえで(そんなのどうでもいい雑音だとは思うが)まだイデオロギー的な口ぶりでロシアを否定するマニアはもう100年前までタイムスリップしちまえと言いたいところだが極東の黄色猿が言うことでもないのでこのへんにしておく。だいたい私もド素人だ。・・・何の話だ。

ワルツ部分は有名なものだが、それより室内楽的な部分でのさすがロシアと思わせるアンサンブル、弦楽器のウィーンより深い音色に感動しました。リズムを多少ズらしているのも意外。まあ、「多少」であり、けしてウィーン独特の体感的ズラしとは違う機械的なものではあるが(否定的に書いてるけどオーストリア以外のオケは大抵そうだ)。上品に踊れるがいささか遊びはないリズム。ただ、音楽として非常にまとまりよく、オケの力量が発揮された・・・特に音色と各パート、ソロ楽器の実力において・・・そのへんのガキが文句付け様の無い立派な(この曲に似合わない形容だが)演奏だ。ロシアなめるな。ボントロが野暮ったいって?あんたの音のほうがよっぽどみっともないわ(暴言)!楽想の多さのわりに大規模?管弦楽曲的な楽しみは少ない素人聴きカオスっぽい曲ではあるが、好きな人はどうぞ。
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