フランセ:ハープと管弦楽のための6楽章の詩的な遊戯

マリー・クレール・ジャメ(hrp)デルヴォ指揮ORTF(ina配信)1973/11/7放送live

時期にしてはやや録音は落ちるか。ハープが典雅なひびきの走句を終始奏で続けオケがほとんど前に出ず、譜面めくりの音が入るなど、室内編成と思いきや管弦楽団との二重構造で仕上げられているようだ。なかなかフランセらしい巧緻さである。終盤で盛り上がりを見せてくると書法のメカニカルなところにマリ・クレール氏の感情が入ると少し揺れてしまったりオケのソロ楽器の一部に軋みを生じたりはするが、フランセがあくまで自分の音楽に忠実に、編成と書法を変えるだけでこんなロカイユ風組曲のような曲になってしまうのだ、BEAセレナーデに近い響きも換骨奪胎されてハープの新しい可能性を引き出している、まさに、ギターやハープシコードなどいろいろな楽器でやっていたことが、この曲では娘ジャメ氏のちからを借りてうまくいっていて、今でも演目に上がるのもわかる魅力がひときわ際立って聴こえてくる。デルヴォーは思ったより引きのスタンスで、むしろ後ろへ引っ張る感もあるが、協奏曲ではこういうこともあるだろう。客席反応も悪くない。アナウンス等なし。
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フランセ:オーボエと管弦楽のための「花時計」

デ・ランシー(ob)プレヴィン指揮LSO(RCA/sony)1966・CD

フランセの音楽は愉快だ。しかし演奏者が愉快とは限らない。ヒリヒリするアンサンブルに聴いているこちらも神経をすり減らす思いがすることがある。でも、この演奏は優しい。曲の華やかさをことさらに引き立てることなく自然に、柔らかく厚い音もなつかしい。緩いと思う人もいるかもしれないが、こういう録音は癒やされる。精度という機械的な部分とは別で、こなれており、ライヴでは実現し得ないものかもしれない。この曲はオーボエというところがまた癒やされる要素でもある。

フランセ:オーボエと管弦楽のための組曲「花時計」

ゲーテリュック(Ob)アルベルト指揮ORTF(ina配信)1964/3/17フランス初演放送live


円熟期後に顕著にみられるような筆の遊び感は無い曲で、耳心地良い旋律音楽から後半フランセらしい歓びのあふれた音楽に帰結する。フランセの音楽もプーランクなどと同じく木管アンサンブルに向く。だが、肝心の木管セクションとソリストの技巧的なやりとりが延々続くところでズレる。ソリストは個性的ではないが技師だ、ところがオケ側がソリストと何度もズレるのは、書法的に無理があるのか?木管セクションだけでのアンサンブルはまとまっているので不思議だ。

フランセ:6つの大行進曲~第一帝政のスタイルで(映画音楽「ナポレオン」に基づく)

ツィピーヌ指揮コンセール・コロンヌ管弦楽団(forgotten records:CD-R/pathe)

1954年映画「もし、ヴェルサイユが語られたとしたら」の音楽・編曲を担当したフランセが、それよりまとめた管弦楽組曲の裏面に収録。副題のとおりこれも、フランス革命を主題としており、フランセらしい部分はごく僅かで、いかにも復古的なブラスバンド行進曲の寄せ集めである。しかしながら、劇伴を多くやったフランセらしく、個性を出さず職人的に仕立てる腕は完璧だ。ナポレオン時代の覇気に満ちた雰囲気を(フランセらしい洒落っ気は抜きで)楽天的に打ち出し、もちろんそれ以上のものではないが、ツィピーヌの勢いのある棒と楽団の力で、一般の人にも受けそうだ。コロンヌ管の管楽器はなかなか力強い。

フランセ:2台のピアノのための協奏曲

作曲家、クロード・パイヤール・フランセ(P)マルティノン指揮ORTF(ina配信)1968/10/3(放送)live

父娘共演でもセッション録音よりずっといい。パラパラ流れるように細かい音符がちりばめられ、気まぐれにジャズのリズムを導入してみたりリズム面でもトリッキーな面白さがある洒脱な音楽だが、二台であることを意識させない、四本の腕を持つピアニスト(フランセは技巧派ピアニストとしても活動していた)の演奏といった風情。勢いはライヴならではのものがあり、セッション録音が冗漫で飽きるものであるのに対して、これはこういう「ライヴ音楽」なんだ、とわからしめる。マルティノンもまったくその勢いをそぐことなくつけており、色彩感がいい。気持ちのいい朝の音楽。長いことは長いが、BGMにどうぞ。

フランセ:映画音楽「もしヴェルサイユが語りかけるなら」

ツィピーヌ指揮コンセール・コロンヌ管弦楽団(forgotten records:CD-R/pathe)

フランスらしく華やかなオケの音に感銘を受けた。曲が貴族風の擬古典的フレーズ(ラ・マルセイエーズを含む)に彩られたものであることもあるが、ツィピーヌという指揮者はオケによって印象がけっこう変わる人なのだなあと改めて思った。ひびきが拡散的で華麗。終曲だけはYouTubeで聴けるが少しコントラストが強調されており、原盤ではより細やかな表現が楽しめる。フランセは映画音楽もよくこなし、そういうときは書法のマンネリズムが避けられて却って面白く聴ける。職人性が良い方向にあらわれたプロフェッショナルなものである。

フランセ:交響曲

マルティノン指揮ORTF(ina配信)1972/7/23(放送)live

叙情的な演奏でフランセ特有のきびきびした動きより横の流れを重視したようなところがある。統制もそれに従ってやや緩く、響きもリズムもフランセというよりルーセルのようになっている。曲自体はっきり言って佳作とも言いがたい冗長なものであり、つまらない軽音楽をだらだら聴いているような残念なところがあるが、これもまたマルティノンの個性なのだろう。この曲はフランセにしては洒脱さが足りないが規模的にやりやすいのか、室内楽団の演目にあがることがたまにある。

フランセ:幻想曲

ジャンドロン(Vc)作曲家(P)(ina配信)1962/2/4(放送)

溌剌としたフランセらしさがあらわれる曲ではフランセ自身粒だった音で溌剌としつつもそつなく連打していく。バックに徹する場合はまったく前に出ず無個性にひきこなす。一方チェロにそれは酷というような高音の細かい動きなどある曲で、特に前半ジャンドロンの音程など非常にあやうい。終わりに近づくにつれ安定してきてほっと楽しめる。ジャンドロンの音はじつに味わい深い。

フランセ:ピアノ協奏曲

○作曲家(P)プレートル指揮ORTF(ina)1960/11/22live

構成感、立体的な造形が見事。くっきりと非常に見通しがよい。曲自体がシンプル志向であることも手伝い素直な魅力にあふれ、なおかつ両端楽章ではオケとソリストのスリリングなやりとり(フランセの真骨頂、ポリリズム、ポリトナル!)に胸のすくような思い。また全体の作り方がとてもうまく、他の演奏によくあるようなただ楽譜を音にしたような演奏ではなく、しっかり音楽をやろうとして成功している。このような、フランセのこの曲を理解しきったさま。覇気あふれるプレートル壮年期の名演。

フランセ:幻想曲

ナヴァッラ(Vc)作曲家(p)(spectrum)

技術的問題を軽々と乗り越えアンサンブルの名手でもある作曲家と高度なやり取りを行っている。録音に鄙びたところがあり、安定しすぎている点も含めこれといった強く打ち出す所は少ないも抒情表現は感傷に頼らず音で心を打つ。 

フランセ:バレエ曲「月の婦人」

○ロザンタール指揮ORTF(ina)1960/3/29live

フランセはマンネリズムの作曲家、しかしここでは巧みな技術を発揮して飽きさせない。紛れもないバレエ曲、寧ろミュージカルというかオペレッタというか、愉しませるための音楽である。ロザンタールにはお手の物。弛緩せず聴きとおさせる。録音も良い。

フランセ:幻想曲

タウアー(c)作曲家(p)19630209エコールノルマルlive(belle ame)

チェロという楽器の渋い響きがこの作曲家の作品特有の薄っぺらさに良い意味で足枷となり、新しい聴き方ができる。フランセは弦楽器に過酷な要求をするのでタウアーもテクニック上苦しい所があるが、貴重。モノラル。拍手喝采入り。

二枚組3500円という今時信じられない値付けで躊躇したCDだが、フランス放送音源は元々高く(amazonデジタル盤も無茶高)、inaは版元にものすごくふっかけるので有名なので末端価格高騰もやむなしらしい。DENON製造韓国盤。

フランス放送音源が単発で再発されない、中古高騰するのはそのへんに起因すると思ってる。韓国はごくたまに歴史的録音マニア垂涎の廉価復刻レーベルを輩出するが、最近ミュンシュボックスなど再び怪しげな動きをはじめている。これは昨年盤だが。
DENONが海外のマニアレーベルの下請け、てのmusic&artsにもあった。背景には事実上ダボハゼみたいな日本のマニアのみを対象にした商品であることもあると思ってる。日本のクラシック歴史的録音復刻シーンは異常で、海外ディスコグラフィに日本盤ばかりなことは多々ある。

フランセ:映画音楽「四人の郵便屋」

デゾルミエール指揮(動画配信)

Le Lit à colonnes
4人の郵便屋
1942年作品
曲、ジャン・フランセ
指揮、ロジェ・デゾルミエール

映画本編
https://youtu.be/Wnf6owXvzmc

フランセ:ギター協奏曲

○セグレ(G)ハンス・リヒター指揮南西ドイツ室内管弦楽団(wergo)CD

長ったらしい。フランセの滅多に見せない硬派な部分が出て面白いかと思いきや、極度に単純化された書法のうえで晩年に常套的な和声やリズムが飛び交うのは同じ。ギター協奏曲なのにギターに超絶技巧を要求するではなく旋律をつまびかせ、バックはギターの撥音にピチカートで対応するという何とも言えない「全部ギターでよかったんじゃないの」的な印象も持った。使用した楽器の特異性という意味で価値ある作品かもしれないし、もっと簡潔なら意地悪な感想を持たなかったかもしれないが、可もなく不可もない作品。演奏はちゃんとしている。

フランセ:ピアノ三重奏曲

○ハヴェニス(P)ガウリロフ(Vn)ゴリツキ(Vc)(wergo)1989・CD

ピアノ三重奏曲というとチャイコしかりラヴェルしかり内容が濃く技術的にはソリスト級の演奏家が集まってやるレベルのものを想起させるが、そこはフランセいつもの調子で軽い。楽章数は4つと平凡だがどれも4分前後で、洒脱な旋律と軽いアンサンブルを楽しむだけの15分強。ジャズふうの走句も「え、現代でまだそれ?」などと言わず素直に楽しむべきだろう。取り立てて言うことは無いが、この作曲家の職人的作風が好きな人ならどうぞ。演奏はやや地味。

フランセ:クラヴサン協奏曲

○作曲家(hrps)ナウモフ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団(wergo)1988・CD

華やかなハープシコードの八連符連打に始まるフランセらしい明るく軽く楽しい音楽。楽器の特性のせいで、あの世俗的なピアノ小協奏曲に似た内容であるにもかかわらず、典雅さや古雅さが漂うのも面白い。オルガンのように響く重音もフランセの響きとしては異色。5楽章制だがフランセにありがちなこととして「尻すぼみ傾向」があり、特に終楽章はもっと派手にしてほしかった。漫然と聴くより数十倍演奏するのが困難なことが予想される数学的な書法が目立つ中間楽章など聴きこむとそれなりに面白みも見いだせそうだ。巧みな対位法、不規則なリズムや休符の飛び交うさまは聴いているぶんには楽しい。ハープシコードはきほんひたすら伴奏音型を弾き続けるのだがここではフランセの前進的で目覚ましい技師ぶりを再確認できる。○。

フランセ:フルート、弦楽三重奏、ハープのための五重奏曲

○リノス・ハープ五重奏団(X5 Music Group)2009・CD

このSERENADEと題された盤(現在は有料配信で手に入る)、珍しいと同時にハープアンサンブル好きには堪らない作曲家の作品が満ちており、つまり私好みであり、おすすめ。フランセらしくない曲、というか真面目なのが不思議な曲で、諸所六人組的な簡素な表現をとってみたり響きに先鋭的なものを混ぜたり変化に富んでいて、マンネリフランセしか知らない向きには1934年のこの作品を薦めたい。フランセはSP録音時代に作曲的頂点を迎えていたのだなあと思った。ドビュッシイストにももちろんおすすめ。演奏もたいへんリリカルで美しい。

フランセ:フルート・ソナタ

○ランパル(Fl)バイロン・ラクロア(P)(HORIZONS,AJPR)1955プラハ放送・CD

トッカーティナから始まる5曲の組曲だが、そのトッカーティナが物凄い踏み外し方をしていて面白い。もう即興的に音をぶらし、ピアノもその調子でつけていく。フランセの作品はピアノで作られている。八分音符十六分音符がパンチカードのように羅列され不規則なリズムに配分されている。メカニカルな構造は通常は決してこういう奏者の自由を許さないし、それではフランセではなくなってしまう。旋律だけならキッチュな30年代サロン音楽なのだ。だがまあ、フランセを知らない人がこれを聴いたら、他は聴けなくなる。他の楽章では夜想曲など緩徐楽章の旋律がフランセにしては魅力的で、ランパルの表現もゆたかである。最初に書いたがフランセはピアニストである。弦楽器にも管楽器にもきほんとんでもなく疲れる譜面を提供する。ランパルの顔面筋肉の強靭さを知ることができる演奏と言えるだろう。私的には一楽章はやりすぎだと思うが、全般はおすすめ。

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フランセ:三つの二重奏曲

○ピエッティ、シャモナン(Sp)R.パスキエ、O.シャリエ(Vn)B.パスキエ(Va)R.フォンタナローザ(Vc)(cybelia)LP

弦楽四重奏伴奏付というのは珍しくないがソプラノデュオというのはなかなかないのではないか。派手かと思いきやそんなこともなく、フランセの室内楽の面白さと歌曲の旋律の絡み合いを楽しめる佳品。演奏は比較対象が無いのでナンともいえない。○。

フランセ:バカンス

○R.パスキエ、O.シャリエ(Vn)P.フォンタナローザ(Vc)作曲家(P)(cybelia)LP

これも組み合わせが楽しい曲でこの「子供のための音楽」という曲集ではイチオシの小品。50年代作品とあって晩年よりも和声や旋律の魅力がある。こちらのご本人サイトでこの演奏そのものが聴ける(LPもこれ)。軽く派手だが弦楽合奏的な厚みがとてもよく、雰囲気を盛り上げる。小品だがぜひ。ピアノは娘の可能性あり。

フランセ:5つの子供の歌

○ピエッティ、シャモナン(Sp)作曲家(P)(cybelia)LP

「子供のための音楽」というシューマン張りの曲集ではダブルソプラノというなかなかにぎやかな面白い曲。といってもこの歌唱ではまるで小学校の女教師が子供にぴしぴし躾けているような雰囲気はなくもないが。こういう曲も書けるんだなあ、という単純性、あ、この人はイベールや六人組の系譜の人なのだ、ということにも気づかされる。30年代の作品。○。

フランセ:オーギュスト・ルノワールによる15人の子供の肖像~4曲(二台ピアノ編曲)

○カテリーヌ・フランセ、作曲家(P)(cybelia)LP

「子供のための音楽」というシューマン張りの曲集では唯一作曲家と娘によるデュオ作品。4曲。なかなかに親子ともども達者である。わりと平易に書いている、子供のためのエチュードなのかな、と思わせて、いやこれは弾けないだろう、という聴後感。さすがだ。これはかなり演奏ともども聴きばえがする。もとは長い管弦楽曲。○。

フランセ:小さなパガニーニ

○R.パスキエ、P.フォンタナローザ、O.シャリエ(Vn)(cybelia)LP

「子供のための音楽」というシューマン張りの曲集の嚆矢を飾る小品で前奏曲とワルツという二曲。平易だが簡単では無い(ワルツをはさむ無窮動などアンサンブルは難しいだろう)。晩年作としてはけっこういい線だと思う。子供には弾けないか。ヴュータンなら弾ける。ヴァイオリンソロと4台のヴァイオリンが指定されているがここでは3本でやっているようだ。○。

フランセ:フルートのためのディヴェルティメント

○ランパル(Fl)ヴェイロン=ラクロワ(P)(Felsted/barclay他)1950年代・LP

webに出回っている音源は正規録音であるこれと思われるが、ノイズのなさから協会盤かもしれない(その場合ピアニストは異なるが未確認)。モーツァルト、クレメンティ、そしてピストンのソナタとの組み合わせ。楽曲はフランセでもかなりいいほうの充実した作品で、技巧的な部分を散りばめながらも30年代ふうのレトロチックなロマンを漂わせる旋律が美しい。ランパルはもっと若いころだと曲にあっていたのかもしれないがこれでも十分に燻し銀?の美しさが伝わってくる。なかなかいいので探してみてはいかが。○。ランパルに献呈されている。

フランセ:弦楽三重奏曲

○ジャリ(Vn)コロー(Va)トゥルニュス(Vc)(FRENCH BROADCASTING SYSTEM)1969/3放送・LP

スピードのある即物的な演奏だが過剰なキレがなく柔和な部分もあり好ましく聴ける。技術的に不足はないのだが、技術要素を聴くよりも音色を楽しむ演奏と言うべきだと思う。予想外に達者な演奏だった。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

フランセ:弦楽三重奏曲

○シベリウス三重奏団(INTEGRAL)CD

こういう軽い曲の演奏は如何に遊ぶかで(もちろん「名技性において」)決まってくるものだが、実にまっすぐに、譜面に忠実に、若干控えめに演じている。しかし、聴きなれた同曲が実はこういう構造をしていたんだ、とか、技巧派フランセの仕組んだからくり時計のような仕掛けにはっとさせられることしきりで、とくに終楽章展開部やコーダでは現代的な硬質な響きが精妙に組み合わされているところがはっきりとききとれ、古いヴィルツオーソらのただ弾きまくるような演奏にくらべ内容的に勝っていると感じられるところがある。私など譜面も持っていて弾いたりしていたのに、終楽章にカットがあることがあることに(この演奏ではカットはない)初めて気が付いた次第でもある。フランセが軽音楽作曲家兼ピアニストだと思っていたら大間違い、ナディア・ブーランジェの秘蔵子、アンファン・テリブルだったことを実感できる。○。

フランセ:二台のピアノのための協奏曲

○作曲家、パイヤール・フランセ(P)デルヴォ指揮ORTF室内管弦楽団(FRENCH BROADCASTING PROGRAM)LP

芸術とは存在しないものの模造品、とはラヴェルの言葉だが、フランセの美学においては存在しそうなものの模造品、ということになる。この作品はいつものフランセのように小規模編成ではあるが、長さは一般的なピアノ協奏曲並の長々しいものとなっている。WERGOに別録の自演CDがあったと思うが、親しみやすい主題をひたすら機械でいじくりまわしたような、退屈な印象があった。この古い録音でも印象は変わらない。より狭い音場で親密なアンサンブルが繰り広げられているあたり残響の多い新しいものより聴き甲斐はあるのだが、主題がどこかで聞いた様なものばかり、それも半端にいじくられて机上論的なリズムの組み換えを施され、弾き辛そうだなあピアノ以外、とか思わせる余裕を与える冗長なかんじがある。終楽章などフランセがフランク(のシンフォニー終楽章の主題)を模しているんだなあ――あるいはドビュッシーの幻想曲でもミヨーのピーコンでもプーランクの何かでもいいが――と思ってから終わるまでが長い長い。いや、楽しい曲で、気軽に聴けるのだが、本領はもっと短くスッキリまとめる手際のよさにあり、二台のピアノが必要なのかすら疑問に思わせる「疎」なスコアにも、「らしくなさ」を感じるのであった。○。

フランセ:BEAセレナーデ

○モーリア指揮ツールーズ国立室内管弦楽団(PIERRE VERANY)CD

フランセの曲集は極めて少ない。しかしLP時代、多作家ゆえフランスでは自作自演を含めけっこうな数のものが存在はしていたようだ。フランス国内LP盤高騰の昨今あおりを受けた形で入手が困難になっている(人気作家ではないので突然安売りもされるがCDにはならない・・・左欄にも書いたけどデルヴォと自身でやったコンチェルトなんて放送音源ゆえまず無理、喉手だ)。好みにもよるがサロンふうの、イベールの後をつぐ清新なオトと手法を駆使した小規模作品の数々はいずれも雰囲気音楽として癒しと感興の刹那をあたえてくれる。当たり外れはあるがどの作品も同じといえば同じ、モーリアらのこの曲集がボックス廉価復刻でもしたら、ライト派は手にされてはいかが。

同曲はトップ作品とは言わないが若きフランセの尖鋭な部分も適度に残っており、古きよき時代の艶が同時代者として織り込まれた、今となってはレトロな趣も魅力の大きな部分を占める組曲。ヴァイオリン独奏が狂言回しのように生温い旋律を引っ張り、機械仕掛けのアンサンブルがきびきびと逆にひんやりと絡み、全体としてバランスよく仕上がっている。自作自演のまさに「その時代」の演奏様式で聴くのがいちばんいいと思うが、音が古く技術的にもアバウトである。もっとフランセのプロフェッショナルな書法と、スコアの美質を味わいたい向きにはこの「真面目な演奏」をお勧めする。冒頭より金属質で線の細いヴァイオリンが雄弁に、若干多めの残響の中で実に簡潔なハーモニーを引き立てていく。スケールが大きくコンサートホールの趣である・・・ビヤホールではなく。技術的瑕疵が無く現代の聴き手には向いている。たっぷり時間をとり表現している場面が印象的で、曲間もしっかり時間をとる(自作自演は比較的アタッカに近い形で通していく)。それまでの流れとくらべ終曲がちょっと小粒で尻切れだけれども、これはそうかかれているのだから仕方ない。いずれ、フランセ入門盤としていい演奏。BEAしか使わず旋律を作っているのに、ちゃんと世俗音楽になっているという技を楽しもう。○。

フランセ:友パパゲーノを称えて

○作曲家(P)マインツ管楽アンサンブル(wergo)1987/1

クラシック作曲家の伝統芸といってもいいパロディ作品で、フランセはラヴェル以上にこういったものを好んだようだ。確かにモーツァルトのメロディなのにハーモニーや挿句がモダンな感傷や殆どジャズのような刹那的快楽を持ち込み、それを流石技巧派フランセの冷たいピアニズムが、気取ったさまで「どうだ」とニヤリと笑ってみせる。くるくる次々とあらわれる主題が基本ピアノで、更にアンサンブルの職人的な手による組み合わせから息をもつかせぬ隙の無い書法に昇華されているさまは、そんな言辞が野暮に思えるほど楽しい。フランセの後期作品はピンとこないものも多いが、冒頭から旋律の魅力が美しく新しく引き立てられているから、個性的かどうかは別として、聴き易い。まあ、フランセのピアノが魅力の8割を占めているかも。○。

フランセ:プーランクによる「楽しむための音楽」

○作曲家指揮マインツ管楽アンサンブル(wergo)1987/1

「プーランクの息子」フランセによる軽妙な小品。プーランクのような妙な重みや毒は無く、モーツァルト的な、ストラヴィンスキーの香りを仄かに織り交ぜた作品で、まあ日曜の午前にはぴったりである。その場限りの楽しみといった要素は否定できないが、何の邪魔もせず、楽しめばいい、それだけのものである。○。
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