ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

クレンペラー指揮ケルン放送交響楽団(weitblick)1966/3/17・CD

音は何とかレストアしたようなステレオで、ボロボロな所もあるが聴けるレベル。クレンペラーは各セクションをバラバラにし単純化してガツと積み重ねるようなやり方をする。それは各声部が互いにしっかり正確に、凝縮された音を松葉を排した丸太の如く強く打ち出すことで全体のバランスが保たれ、特有の太筆描きの迫力が発揮されるたぐいのものだ。だがここではそれが裏目に出ている。管、打はよい。弦楽器がイマイチすぎる。この時期のこのオケなので弱体は仕方ないが、とくにヴァイオリンのバラケ味が強すぎる。各セクションを乖離させ再構築する方法に対し、もっと小さく、各楽器が乖離してしまっており、SP時代の録音のようだ。往年のロシアオケのような音色の不統一感が、パワーに裏付けされることなく提示され気持ち悪い。それゆえに全体的に薄くなってしまっている。ドイツ的な音にならず、ニュートラルなイギリスオケのように響くのはこのオケというよりこの弦楽器の非力さゆえだろう。クレンペラーのやり方が剥き出しになっているのでわかる人にはわかりやすいと思うが、自身スピードと力強さが持ち味の時期も過ぎており、老境の「振ってるんだか振ってないんだかわからないくらい」スコアの書き込みをそのまま音にしようとした記録に聞こえなくもなく、もちろん録音が悪いせいかもしれないが、私は終盤も終盤まで惹かれなかった。いや、ブラスやティンパニ、木管ソロはビシッと良いのだ。
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ベートーヴェン:交響曲第1番

クーセヴィツキー指揮ORTF(PASC)1950/6/25放送live

PRISTINE発掘音源、クーセヴィツキーのベートーヴェンシリーズで田園との組み合わせだがこちらは少なくとも初出(田園もおそらく初出とのこと)。比較的珍しいオケとのライヴではあるが、1番の記録はほかになく、最晩年記録でもあり貴重だ。レストア過剰で残響付加やノイズ除去痕が好悪わかつ復刻具合だけれども聴きやすさをとるならレンジも広く分離もなんとか聴けるレベルまで明確にしており(といっても一般的に楽しめるレベルではけしてないが)満足いくと思う。オールドスタイルのベトであり小粒な1番を想定して聴くと裏切られる。編成をしぼりモーツァルト的な軽妙さを楽しむ、ことはまったくできない。むしろ後期交響曲、7番あたりを聴くような感じで迫力とスケールの大きさにびっくり。これはもう4番以降の世界で、田園もそうなのだが、とにかく後期ロマン派的な方法論で押し通しているというか、とくに弦楽編成がでかいのは確かだと思う。その音のマスの強さで、かっちりした曲に筋肉をまとわせ、ORTFらしからぬ集中力を引き出している。音色はBSOにくらべ良く感じる。BSOなら重すぎると感じたかもしれない。機会があればどうぞ。うまいといえばうまいです。

ベートーヴェン:コリオラン序曲

フルトヴェングラー指揮BPO(history他)1943/6・CD

ベートーヴェンの序曲等の中でも目立った派手なところがなく精神性を求められる曲である。私ははっきり言って苦手で、フルヴェン先生の厳しく引き締まった、ナチ時代の異様な録音であっても、ただの精神性の塊で音楽とは認識できなかった。

ベートーヴェン:交響曲第7番

クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団(PASC)1944live

四番とともにpristineの新発掘とのこと(演奏日が明確になっていないため同年の1/8live録音と同一の可能性は残る)。同じくレストアしすぎて擬似ステレオそのものだが、より音が良かったようで拡がりがあり情報量もある。ただ、ストコフスキのそれのように、音楽が開放的に聞こえてしまい、ベートーヴェンらしさを却って損ねている。おなじくノイズや傷もクリアになってしまいストコフスキ録音と聞きまごうような音になっているのは痛い。初期ステレオ、とくにトスカニーニ最晩年ライヴによく似た聴感なのは、スタイルの近似ともども「いやステレオじゃなくていいのに」と思う。トスカニーニ最晩年同様、音のキレがなくなっているのも聴こえてしまう。しかしプレスト楽章と終楽章終盤は流れにはクーセヴィツキーらしい熱気を帯びながらブラスの冷静なテンポ感に象徴されるように愉悦的なリズムに不可欠の縦の厳しさが保たれ、聞き所とはなっている。四番よりは勧めないが、一部分においては至極まっとうに聴ける。楽章間に拍手が入るのはいかにもアメリカだ。そのくせラストの拍手はカット。

ベートーヴェン:交響曲第4番

クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団(PASC)1943live

クーセヴィツキーの同曲唯一の記録でpristineの新発掘とのこと。レストアしすぎて擬似ステレオ状態だが、元の音は悪かったんだろうなあ、という篭ったりキンキンしたりガサガサするところは耳につくが、戦中録音としては破格の聞きやすさで普通は(おそらく)ノイズまみれの原盤よりこちらを好むだろう。クーセヴィツキーと思えないほど緊密な中期ベートーヴェンで古典的な佇まいを崩すことなくロマン派的なメリハリきいたメロディアスでリズミカルな音楽をきっちり聴かせる。これ本当にクーセヴィツキー?というマトモさがあるが、四楽章では特有のロシアっぽい感情が弦楽のドライヴに迸り僅かに甘くなるので、本物だと思う。

ベートーヴェン:交響曲第7番

セル指揮クリーヴランド管弦楽団(DA)1968/2/7ボストンlive 放送

同日のプログラム5曲が二枚組に収録されているが、録音状態が異なりアナウンサーも変わったりするので別の音源から取ったものを寄せ集めたか。いずれもステレオではあるものの、ベートーヴェンについては状態が劣り、始めのほうはアナウンスからして心許なく、最後のほうは僅かに音飛びしているようだ。演奏も始めは客観性が強く、スピードも一定して遅く、響きは拡散的で迫力に欠ける。オケのキレの悪さは舞踏の神化と呼ばれた同曲には致命的だ。セルの非正規ライヴ音源には時々こういう覇気の無いものがある(最初のトラックのウォルトンのパルティータについてもセルにしては弦のキレがなく、やる気が少なく感じた)。遅いインテンポは変わらないが三楽章になるとブラスと太鼓で派手な響きを打ち出し、アンサンブルの緊密さで激烈さを演出するのではなくサウンドとしてムリクリ激烈さを出している。この楽章はそれでも緩徐部があり爽やかな響きが耳を休ませるので良いが、四楽章はそのスタイルのままただ拡散的に音を轟かせて、客観的な視点からいかにもわかりやすさを演出しており(トスカニーニの新即物主義とは根本的に違う)、確かにブラヴォでおわるのだが、ボストン交響楽団にはないものを持っているのはわかるが、この流儀の演奏としてはお仕事感が強かった。

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」

ロジンスキ指揮トリノ放送交響楽団他(SLS)1956/2/2

フルトヴェングラーを想起させられざるを得ないが緩急の付け方が非常に滑らかで恣意的な表現が気にならない。ザッツが揃わながち、いつものロジンスキとくらべオケの統制がゆるい感じもするものの、このオケだから良い方。揺れない(僅かに前へ流れる)テンポに対し急進部の強靱でリズミカルな表現や緩徐部にあらわれる歌心には惹かれるものがある。雑味があったとしても弦楽セクションは褒められて然るべきだろう(三楽章一箇所ポルタメントはこのオケらしいなと苦笑)。木管の音色も美しい。冒頭からブラスがトチる性急な四楽章には賛否あろうがここでも弦楽の歌心が際立って私は好き。緊密なアンサンブルも楽しめる。歌唱もロジンスキ流にのっており違和感はない。終盤の合唱は力強く偉大にひびく。毅然とした、がっちり組み上がったスケールの大きい演奏を好む向きには甘く思われるかもしれない。それを考慮したうえでも飽きさせない解釈ぶりには引き込まれるものがあった。録音はSLSクオリティでノイズが酷い(ロジンスキライヴ録音クオリティとも言える)。

ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番

モントゥ指揮BPO(TOE他)1960/10/7live

野太い音だなー、このオケはやっぱり特別だな、と思わせる録音で、モントゥーとも相性が良いらしい。ほつれの一切ないアンサンブル、全パート見事な技術、そしていづれも個性的な野太い音。楽曲的に小フルトヴェングラーといった印象は否めないが、筋肉質で引き締まった演奏ぶりはモントゥーのプロフェッショナルな統率力があらわれたものとして特筆できる一夜の、前プロがこれになります。

ベートーヴェン:交響曲第7番

○スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立交響楽団(放送)1970年代/4/6ブダペストlive

強奏部になるとぶっ放し音が鳴り響き、合奏ではブラスが突出する、しかし弱音のやり取りはなかなかバランス良くビシッとアンサンブルを決めてくる。ブラームス的なベートーヴェンで、後期ロマン派として聴けば非常に納得感のある演奏。最盛期ソビ響の激烈アンサンブルは当然四楽章でハデハデに炸裂するので安心だ。○。

ベートーヴェン:交響曲第1番

○ゴロワノフ指揮モスクワ放送管弦楽団(melodiya他)1948

CD化されていたと思うのだが今検索すると出てこない。動画共有サイトなどで聴くことができる。演奏は後期ベトの様式で大管弦楽を鳴らしまくるもので、楽章間の対比が激しく、速い楽章でのバラケっぷりと激烈さはシェルヘンルガーノを思い浮かべる。静かな楽章が余りぱっとしないが、両端楽章を楽しもう。○。

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」

◯エリアスベルク指揮レニングラード交響楽団、グリンカ教会合唱団、アンドルシェヴィチ、ティクニュス他(放送) 1974/12/10live

大変引き締まった演奏で、二楽章が素晴らしい。オケはウィーン交響楽団みたいなものでかなり問題はあるのだが、エリアスベルクの気合が曲をしっかり芯の通ったものに仕立てている。四楽章冒頭の弱々しさが気になった他は私は文句が無い。第九にふさわしい名演。合唱も覇気に満ちているがソリストは私には力不足でよくわからないすいません。

ベートーヴェン:交響曲第9番~Ⅰ抜粋

◯エリアスベルク指揮レニングラード交響楽団(ペテルブルグ放送)1963?

冒頭から二箇所アナウンスを重ねてのごく一部の抜粋のため評はできない。しっかりした勢いのある演奏のようだ。全曲は1974/12/10のライヴがネット配信されていた。

ベートーヴェン交響曲第1番

○ヒンデミット指揮スウェーデン放送交響楽団(andromedia)1955live・CD

アグレッシブで重めの響きがかっこいい。いかにもヒンデミットの指揮といった様相を呈しており凄く個性的であるとか即物的であるといったことはなく、普通のロマン派音楽の演奏として楽しめる。○。

ベートーヴェン:交響曲第1番

○ヒンデミット指揮スウェーデン放送交響楽団(ANDROMEDIA)1955ストックホルム・CD

オルフェオ(再CD化)のボーナストラックとしてCD化された放送音源。記念盤としてLP化はしていた気がする。やや音は悪い。篭っていて、オルフェオ同様エアチェックかもしれない。ヒンデミットの指揮は重く、とくに中間楽章は引きずるようにすら感じる。ロマン派として同曲をとらえているのだ。しかしロマンティックではない。きっちりかつ滑らかに職人的にさばいたふうで、奇をてらうことも派手に見せ付けるようなこともしない。抽象化の程あいがよく、とても聴きやすい1番だ。どうもクレンペラーあたりの伝説に起因する謗りが吹聴されることが多い指揮者ヒンデミットだが、ああいう曲が書ける才人が下手なわけがないのである。じじつ、ブラヴォが飛ぶ。○。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

○バルビローリ指揮ウィーン交響楽団(aulide:CD-R)1969live

意外とNYP時代を思わせるしっかりした演奏で、音符もキレており、VSOもドイツ風の重量感を示している。バルビらしさは確かにテンポルバートのケレン味にあらわれてはいるのだが、殆ど違和感なく、そして殆どルバートとも感知されない。意外なほど正統的な演奏を目して成功しているのである。NYP時代を思わせる、というと2楽章や4楽章第一旋律の恣意性の感じられる揺れが、旋律の大幅な揺れというよりフレージング処理の範疇におさまり、とくに4楽章のほうは意図的に遅くとることで、ただコケオドシの見得を切るのではなく、計算されたバランスをとろうとしていることが読み取れる。この人のベトでは成功したものと言えよう。ただ、録音最悪。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

○トスカニーニ指揮NBC交響楽団(LIRA PANAMERICANA/PASC)1944/4/18カーネギーホールlive放送

PRISTINEの配信データによればトスカニーニの運命の中でもレアにして最高の演奏ということだが、プライベート盤LPからの板起こしであることもあり状態は悪く、音量的に平板で迫力が損なわれているように感じる。トスカニーニのベートーベンといえば運命や七番など疾駆する爽快さと怒涛の力強さが売り物で、NBCなら音にも特色はない。直球だからそうそう差が出るものでもなく、また凝縮されすぎて少々スケールが小さく感じる点どれも同じ。楽しいがマニア向け。○。

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ベートーヴェン:交響曲第9番

クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニアO、ジャネット・ベイカー、シルレイほか(CD-R)1970年ライヴ1970年チクルスの記録とされている怪しいCD-R全集の一部。実に優美で壮大な世界が構築されており、この超低速に殆ど乱れることなくアンサンブルを続けるオケの高潔な響きも出色です。個人的には2楽章が気に入っています。最晩年のクレンペラーの貴重な実演記録ですが、結構柔和な表情が意外でした。恐らく放送をそのまま録音したとおぼしきモノラル録音です。年代がら映像も残っているかも。計80分以上。,

ベートーヴェン:交響曲第9番

○ガウク指揮ソヴィエト国立放送交響楽団他(MELODIYA他)1960':LP(CD化?)オケ名は疑問有り。恐らくソビ響だと思う。録音状態も私の盤面も惨いのでちょっと評価しづらいところがあるが、野趣溢れる演奏と言える。といいつつ私はどうもこのガウクやサモスードやハイキンのいわゆるいにしえのロシア大指揮者たちの芸風を掴みかねている。確かにロシアのオケや歌唱にはつねに素朴・強引・技量の高さの三点が揃っているから「野趣溢れる演奏」とは言えるのだが、それは指揮者のものではない。ゴロワノフは関係無い変な位置にいるから放っておくとして、この三名の演奏で「これは絶対この人!!」というものを私は知らないのだ。そういう点からするとムラヴィンスキーは凄かったわけで、ロシアでは逆に極めて個性派だったと言える。ガウクの演奏はハッキリ言えば「大味」であり、それは大曲になるにつれ際立ってくる。だがしかし。この「第九」は必ずしも大味とは言い難い。我々はフルトヴェングラーを初めとする異様な演奏を知ってしまっているのでガウクのこれに新味は薄いのだが、声部間のバランスがとても良いのだ。モノラルだが音場は広い感がある。迫り来る気合いのカタマリのような弦、頂点にて偉大な光彩を放つ分厚いブラスのバランスが野暮なガウクというイメージからは「多少」離れた安定感をもたらしている。設計はやや単調。奇をてらうところが微塵も無いのが意外といえば意外だ。いつものバラケも殆ど無い。音色にやや幅があるかなといったぐらいだ。あと忘れてはならない、この演奏、終楽章の歌唱・合唱は全てロシア語で行われている!そこが異様。その独自性を評して私は○をつけたと言っていい。ロシア語馴れしていない者にとっては何か昔のラテン語か何かを聴くような、これはこれで面白いカツゼツの妙を感じる。奇盤好きは必聴だ。録音の問題は看過できないところもある。終楽章がとくに編成が大きいせいか遠く引いてしまい平板に聞こえる。またとくに一個所かなりハッキリした編集痕が聞かれるところがあり、びっくりする。声部ごとの微妙な調整はいいのだが、完全に音色や雑音、バランスが変わっているところがあるのだ。マイクを違う位置に複数立てて、この中途半端な箇所でいきなり切り替えたように感じたのだが如何なものなのだろうか。最後の残響をブチっと断ち切ってギリギリLP半面に納められている1-2楽章も気になった。これは復刻されることがあれば恐らく修正されるものだと思うので、その時まで待ちましょう。3楽章に言及せねば。この演奏、各楽章いずれもイマイチクライマックスの盛り上げが足りないのだが(ダイナミックレンジの異様に狭い録音のせいかも)3楽章はいちばんイマイチ。もっともっと歌うべきだ、ガウクともあろうものが。とても古風で普通の楽曲に聞こえた。私にとってこの楽章の指標にはワルターがあるのでひときわそう感じたのかもしれない。ワルターはやりすぎだけれども。そんなところか。正直期待外れな感もあるが○ひとつつけておく。,

ベートーヴェン:交響曲第7番

ロジンスキ指揮ニューヨーク・フィル(ASdisc)1946/1/6liveベト7の聴きどころといったら勿論終楽章、”舞踏の神化”といわれた楽章だろう。なめらかで気持ちの良いデュナーミクにのせてロジンスキは筋肉質な演奏をくりひろげる。ニューヨーク・フィルはやや音が薄いが(録音のせいでもあろう)よく統率されている。3楽章プレストも面白い。いや、終楽章よりこちらのほうが聞き物かもしれない。弦楽器のめざましいアンサンブルが心地よく耳を揺らす。ロジンスキの古典曲演奏については全く知らないが、ベートーヴェンの奇数交響曲はその芸風にあっているのかもしれない。ただ、「ベートーヴェンらしさ」は希薄かも。気風の高さ、気高さが感じられない。ロジンスキはやはりロマン派の人だ。,

ベートーヴェン:交響曲第7番

クレンペラー指揮北ドイツ放送交響楽団(music&arts)1955/9/28liveクーセヴィツキーなどとは全く異なる異星人。重々しいテンポ、決然とした表現、要所で響くティンパニの重い破音。スピードもないし、ドイツ的かといえばそうでもない。ベートーヴェンを解体し、クレンペラー式の重々しい曲に仕上げている。クレンペラーのベト7は他にもあるが、みな同じ印象をあたえる。この曲ではやや客観にすぎるきらいもあるが、クレンペラー独特の世界ではあり、こういうものが聴きたくなるときもある。スケール感だけはばかでかい。これは特筆すべきことだろう。あと、非常に格調が高い。これは管や打を弦と同等もしくはそれ以上に響かせる事によって音に奥深さをあたえ、聴感を古典曲にも似たものに仕上げている事にも起因しているだろう。面白いが好みはわかれそうだ。,

ベートーヴェン:交響曲第7番

○クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団(ASdisc)1944/1/8liveクーセヴィツキーは古典曲に対してはけっこう客観的で常識的な演奏を行うようだ。「あー、スタンダードだなー」というのが第一聴象。ちゃんと「ベートーヴェン」を演じている。適度に熱した演奏にも関わらず非常に格調高く、踏み外した場面というのはほとんど無い。水際立った指揮ぶりが胸のすくような終楽章に傾聴。ボストンの弦楽セクションは強力だ。スピード感を失わずに最後まで見事に弾き切っている。,

ベートーヴェン:交響曲第7番

○オッテルロー指揮ウィーン祝祭管弦楽団(concert hall)LP迫力有る演奏・録音(ステレオ初期)で圧倒される。立派な演奏だ。オケの機能性と音色美が際立っており、力強い音に忘我で聞き込んでしまう。長らく聞いてなかった曲だがこの盤を聞いただけで曲の全てを思い出した。名曲だ、ベートーヴェン嫌いの私が言うのだから間違い無い。1楽章冒頭をはじめとしてモーツアルトの時代に立ち返ったような白い音楽がベースにあるのだが、ベートーヴェンらしい強奏表現、和音の重さ、リズムの微妙なずらし、旋律における強いロマン性がちょっとモザイク的に折り混ざるさまが至極楽しめた。無論オッテルローの表現が素晴らしいせいもある。終楽章はもうちょっとトスカニーニ的なところが欲しかったが、1~3楽章は解釈が板についていて、しかも部分的にはちょっと現代的な表現というかエキセントリックな部分も無きにしもあらずで楽しい。ちょっと意外にいい演奏でした。オッテルローはウィーンと相性がいいのだろうか。ステレオ録音の醍醐味を感じられます。○。,

ベートーヴェン:交響曲第7番

○C.クライバー指揮バイエルン放送交響楽団(MEMORIES)1999/2/20ヴァレンシアLIVE・CD生命力に満ちた終楽章などこのあと事実上の引退を迎えてしまう指揮者のものにしては余りに激しく余りにカッコ良すぎる。バッカスの饗宴そのものの乱痴気騒ぎでいながら一種別格の気高い気風があらわれているのはこの名手ならではの味か。終演後の凄まじいブラヴォも納得のとんでもない名演の登場である。ここではバイエルンの渋い音が硬派な雰囲気をかもし、重量感のある表現を加えて一味を示している。ところで私はこの曲は終楽章以外は苦手である。ふつうベートーヴェンファンに言わせるとこの終楽章が余りに浅薄で聴く気にならないとかいうものだそうだが、私は運命、第九しか聞かない浅薄人間なだけにその浅薄な4楽章にのみ魅力を感じる。それはこのクライバー盤でもやはりそうだった。ベートーヴェンと聴いて予想できる範囲内の音楽、と言ってしまったら言い過ぎかもしれないが、私にとって3楽章まではそういう音楽にすぎないのである。そこで他人の手を借りて3楽章までを評すると、「柔軟な音楽作りは相変わらずでしっとりとした情緒など絶品」。とりあえず○をつけておくが、◎とする人がいてもおかしくはない。モノラルであるのがほんと信じられない。ちなみにメモリーズはクライバーの死にさいしていくつかのライブを再版した。この盤もそのひとつ。ちなみにCDーR盤とは重複しているので注意(私は思いっきり引っかかっていくつか重複買いしてしもた)。(2004/9記),

ベートーヴェン:交響曲第5番

ガウク指揮ソヴィエト国立放送交響楽団(YEDANG)1957/1/23LIVEこれはアマオケの演奏か?と言うくらいバラバラの弦に脱力。でも演奏自体は熱い。ライヴでこの時代のソヴィエトの録音であることからして総合的な完成度の低さには仕方ないところもあろう。強い意志がオケに行き渡らず、縦すら揃わない乱雑さ、ガウクのこれも芸風と言っていいだろうが、弟子ムラヴィンスキーとの落差は凄い。まあ、ライヴですから。「スーパー・チューブ・サウンド」、残響が多すぎてうざい。もっと生々しさが欲しかった。無印。,

ベートーヴェン:交響曲第5番

◎ロジンスキ指揮ニューヨーク・フィル(HISTORY)1945LIVEびっくりした。無茶苦茶引き締まった演奏で、ロジンスキの気迫にたじたじ。この終楽章の高揚感は並ではない。ベートーヴェンもびっくりの激烈演奏、シェルヒェンもたじたじ。苛烈な指示で知られたロジンスキだが、チェリビダッケのようなかけ声がびしびしと入っていてこれがまた耳に心地良い。どこにも抜けたところのない完璧なライヴ。録音は悪いがロジンスキの真価を問う演奏、ぜひ一度。,

ベートーヴェン:交響曲第5番

○フリッチャイ指揮ベルリン放送交響楽団(TOE:CD-R)1961/9/10LIVEフリッチャイのラスト・ライヴだそうである。だがこの演奏に蝋燭の最後の輝きは見られない。まだ成長し続けているフリッチャイの個性が孤独に輝いている、そのさまだけが悪い音の奥に垣間見える。惜しいひと・・・。非常に遅いが確信に満ちた重い歩みはコトバ面だけだとクレンペラーを想起させるかもしれないが、その音に漲る熱いものはやはりフルヴェンに近い。ワルターではないがまるで音楽という神につかえる司祭のように、自分の信念を貫き通そうとする芸術家の姿がある。ライナー?にもあるけれどフリッチャイのこの演奏はけっこうゲテモノというか、奇妙である。声部間のバランスがおかしいし、テンポもどこかぎくしゃくしている。それが解釈だったのか、病によるものだったのか、今となっては詮索するほうが野暮というものだが、フリッチャイ・ファンなら聴いておいて損はないだろう。フリッチャイ・ファンでなかったら、正直聞いてもフーンくらいしか感じないかもしれない。でも、終演後の聴衆の熱狂は、これがただの凡人の演奏ではないことを物語っている。オマケして○。,

ベートーヴェン:交響曲第5番

○クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団(ASdisc)1946/3/2LIVE・CD割合とオーソドックスでまじめ、音も引き締まってドイツっぽさすら表れている。そのぶん個性が薄い気がするのも確かで、ロジンスキほどの激しさも持ち合わせていないから、録音の悪さを考えると余り魅力の無い盤と言わざるをえない。ただ、1楽章をかなりいじっており、びっくりするような改変(だと思う)が聞かれる。そこをひとつの個性、魅力と感じて聴くぶんには十分面白く、パキパキ決まるリズム表現と併せていったんノったら最後まで聞きとおせるだろう。一応○をつけておきます。,

ベートーヴェン:交響曲第7番

○メンゲルベルク指揮ACO(PHILIPS/ANDROMEDIA他)1940/4/25live・CD

何故かしっくりこない演奏が多い気がする。粗いとはいえこの古典的名演は光っている。ワルターほどの激烈なテンションはないしストコほど変な解釈もないけど、トスカニーニやクライバーの一種即物的な軽さが無い、ベトとしての重量感を音響に保ったうえでハメを外さない絶妙なリズム感が、嗚呼この曲ってこうだよね、と思い出させてくれる。余りに有名ゆえに正統でない演奏が正統になってしまったというか・・・メンゲルベルクが正統とはスコア上決して言えないにせよ伝統的と感じられる。緩徐楽章は無難だが、リズム楽章は素晴らしい。ANDROMEDIAはいじりすぎ。○。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

○メンゲルベルク指揮ACO(PHILIPS/ANDROMEDIA他)1940/4/18live・CD

デュナーミク変化が細かいだけでテンポは速めストレートの直球だ。ロマンティックな演奏ではありそれは音色変化にうかがえるが、当時のACOならではのものか。冒頭アンサンブルが乱れる。その後は気にならない。音がよければもっとアピールしたであろう娯楽性を秘めているが、基本的にベートーヴェンという構造をしっかり維持しつつのものである。それにしても裏拍からのメロディを持つ曲なんて作曲当時は異例だったろう。舞踏性を高め曲に変化をもたらすとともにひときわ注意させて引き締める効果もある。ただ、この「運命の主題」を後世の人がオマージュするさいは音のみそのままで、リズムは必ず表拍からに改変されるんだよなあ。じっさいメロディが裏拍からはじまり机上計算的に対位旋律と絡み進行していく理性の音楽を嫌ったり不得意とする指揮者は非ドイツ圏にままいて、バンスタあたりも余り巧くはなかったというか「そう聞こえていた」んだろうなあ。リマスターでも限界あり、ANDROMEDIAは残響付けすぎ雑音除きすぎ。○。

ベートーヴェン:交響曲第7番

○シェルヒェン指揮スイス・イタリア語放送ルガーノ放送管弦楽団(ARIOSO,PLATZ他)1965/3/19live・CD


初出時にはそのとち狂った速さとテンションと雑さと吼え声でマニアをあっと驚かせたシェルヒェン最晩年のルガーノライヴで、ウェストミンスターの素っ気無い大量録音指揮者シェルヒェンのイメージを一変させ、後支持者をやたらと増やすことになったべト全である。骨董ライヴCD販売におけるエポックメイキングな盤群でもあり、マイナーレーベルの日本盤発売を待てないという(私も含む)マニアに対し、バブル崩壊時満を持してあらわれた外資レコードショップの日本進出という現象とシンクロしてもいた。このあたりから神経質な日本のマニアの世界でも音盤における演奏瑕疵があるていど許されるようになり、却って面白いライヴや戦前録音がたくさん出回るようになった。思えば骨董CD黄金期でもあった。


これはシェルヒェンでは唯一と思われるステレオ優秀録音によるライヴ録音集でもあり、他の悪音のものに比べても価値は高い。当初日本盤の分売であったが現在ARIOSOから廉価ボックス化している。この曲あたりが一番シェルヒェンライヴらしさがあらわれており、まずとにかく異常なスピード、必死についていくハイテンション二流オケ、それでも縦をびしっと揃えようというドイツっぽい整え方、その鋭い音符のキレ、芸風的に緩徐楽章が面白くないことを除けばこのハイテンション交響曲にはうってつけ。終演後も大拍手が入る。惜しいのだ、緩徐楽章をもっとデロデロにしてコントラストをつければ・・・いやドライな分析家のシェルヒェンにべトでそれはないだろう。○。


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これはPLATZ再発盤。全集もあるがえらく高い。外盤はライナーが無い(ARIOSOは録音日すら記載がない)ので注意。
ヘルマン・シェルヘン ベートーヴェン交響曲
ルガノ放送管弦楽団
プラッツ

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(参考)ウェストミンスターのスタジオ盤はこちら。ウィーン国立歌劇場管弦楽団。
ベートーヴェン:交響曲6&7番
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
MCAビクター

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