コープランド:バレエ組曲「ロデオ」4つのダンス・エピソード~Ⅰ、Ⅱ、Ⅳ

作曲家指揮クリーヴランド交響楽団(SLS) 1970/8/1クリーヴランド ブロッサム音楽祭live

これはもう代表作の良いとこ取りの組曲、自作自演にありがちな硬直したところもなく、情熱すら感じる熟れた演奏で聴き応えがある。簡潔なコープランド節に対してオケ(ないしいずれのソロ楽器も)が開けっぴろげでハデハデな表現をなし、またこれがとても巧く、録音は直前のラヴェルよりノイジーで悪いが恐らく音量がやたら大きいせいもあろう、野外音楽祭の記録のような開放的なライヴ感が良い。1.カウボーイの休日から思いっきりアメリカンダンス、楽曲のアピールポイントをしっかりアピールする。ここで掴まれて(いきなり拍手が入ってしまう)2.畜舎の夜想曲でしっとり(あざとい曲だなあとは思うが)聴き入ってからの飛んでⅣ.ホウダウン。管弦楽版ではソロ楽器を織り交ぜての大規模なオーケストレーションのせいで、器械的に組み立て取りまとめる必要性からスピード感やリズムの魅力が損なわれることが多いが、響きの派手さ(耳をつんざくノイジーな破裂音!)がすべてを攻撃的にして、スピードこそ二年後に編曲されるelp版に劣るもののノリはすこぶる良い。コープランドもこの頃のライヴでは(オケの外交的な性向と作風が合っていることもあろうが)随分気を煽る演奏をなしたものである。ノイズが無ければ普通の生硬な自作自演に聴こえる可能性もあるが、客席のいくぶん盛大な反応から、悪くはなかったことは伺える。二枚組の最後を飾る憎い選曲だ。
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コープランド:静かな都会

メージャー(trp)スペイヤー(コーラングレ)作曲家指揮ボストン交響楽団(SLS)1945?/3/10live

「静かな街(静かな市)」とも表記されるが日本語だと若干意味合いが違ってくる。大都会NYの夜の片隅でユダヤ人の少年と浮浪者の織り成す人間模様を描いた劇音楽の付随音楽として構想され、本来ピアノと管楽三本による室内楽編成であったものを、コーラングレを含む弦楽合奏+2本(二人の登場人物を示す)の編成として書き換えられた小品である。冷え冷えとした情景を示す弦楽器の全音符による和音、その上(もしくは下)で管楽器がやり取りするのが基調となり、基本はトランペット(少年)がわかったようなわからないような旋律を吹き通し、中盤で弦楽器が動き出しコーラングレ(浮浪者)と絡んでいく場面がさしはさまる。純粋に音楽として聴くとコープランドがわかりやすい方の作風によって西部の大平原を描写するさいに、弦楽器のピアニッシモで高い音域の協和音を伴奏する下でトランペット等管楽器に主題を吹かせるといった手法に近く(これこそ「アメリカ的表現」でありかつてアイヴズの得意とした方法である、原点は「中央アジアの平原にて」かもしれない)、作曲意図を知らないと都会ではなく田舎の印象を持つだろうと思うのは、この演奏だと中盤のコーラングレと弦楽合奏のやり取りが実に「ヴォーン・ウィリアムズ的」であり(簡潔な立体的書法で和声的に耳なじみ良すぎるからでもある)、木管ソロと弦楽器という暖かな音の重なり合いが感傷的に聴こえ、まるで優しいからだ。もっと劇的には変化に富んだものであり、これは「巧すぎる」がゆえの印象変化だろう。もっとも、冒頭からほぼひたすら最後まで剥き出しで吹き通しのトランペットソロの譜面の超絶さの前に、ソリストが少しとちったり息切れしたりするところも聴いて取れ、それは静かな情景の雑味にはなっている。自作自演なのでこれでいいのだが、個人的に悪い録音(40年代なので推して知るべし)であってもこの音楽的にまとまりある演奏のほうが整えられたがゆえ硬質の新録音より好きだけれども、もともとの劇音楽としてのテーマは薄くなっているかもしれない。録音年はクエスチョンマーク付きだそうである。正しいとすると昭和20年3月10日。東京下町が最大の劫火に焼かれた日。太平洋戦争勃発が報じられるとシンシナティのグーセンスはいち早くコープランドに兵士を鼓舞する音楽を依頼する。しかしコープランドは兵士のためではなく、コモン・マンのための吹奏楽を返した。それが作曲家のみならずアメリカ合衆国の20世紀前半に生み出した代表作「庶民のためのファンファーレ」である。

コープランド:インスケープ

作曲家指揮クリーヴランド交響楽団(SLS) 1970/8/1クリーヴランド ブロッサム音楽祭live

この曲は流石に自分のものだけあって、いつもの冷たく組み立てるスタイルで楽曲そのものの持つ思索性へ誘っている。破壊的は破壊的でも現代音楽的な破壊で、耳をつんざく不協和音が意図した通りの不協和音として響くように整えられているのである。なかなかに取っ付きづらい作品でもあり、スコアを見るか、ソロ楽器など一部に主眼を置いて構造を確かめながら聴けば楽しめるだろうが、私は結構。雑なステレオ録音はこういう曲・演奏だとほんと聴くのが辛い。

コープランド:ピアノ協奏曲

ノエル・リー(P)作曲家指揮ORTF(ina配信)1971/6/30live

硬派なほうのコープランドではあるが、途中からピアノの不規則なリズムの下で管弦楽によりガーシュイン風の旋律が「しめやかに」流れ始めサブリミナル的に雰囲気が変わってゆき、そのあとはピアノがソロでジャズ風のフレーズを途切れ途切れで演奏したあとは、一気に耳なじみ良いいつもの世界で大団円、というふうの作品となっている。連続して演奏される。ノエル・リーはクラシカルな透明感を失わずノリを演出して巧い。聴衆はやや戸惑い気味か。ステレオの比較的良好な録音。

コープランド:クラリネット協奏曲

フランソワ・エティエンヌ(cl)作曲家指揮ORTF(ina配信他)1955/5/28コープランドフェスティバルlive(29放送)

いきなり耳馴染み良い旋律から始まり、直前の「ステートメンツ」との対比が激しいが、ピアノや打楽器、特殊奏法を絡めた変則リズムの楽章が現れると一筋縄ではいかない。じきに新古典主義、特にストラヴィンスキーの骨張った協奏曲からの書法的な影響を感じさせるところも出てきて、ジャズのそれを含むリズム込の脳天気な旋律との組み合わせがかなり複雑となる。こういう曲になるとさすがにオケにも綻びがみられ、なかなかピッタリ揃わない(新古典主義だから揃わないと話にならない)箇所も散見される。ソリストはわりと一本調子。そのかわりミスはほとんど無いし音色は綺麗。amazon配信とina配信は同じ音源。

コープランド:管弦楽のためのstatements

作曲家指揮ORTF(ina配信他)1955/5/28コープランドフェスティバルlive(29放送)

三楽章にならないと脳天気なコープランド節が出てこないしそれもイメージ通りとはいかない、そのあとも退嬰的に謎めいて終わる、これがコープランドの「硬派なほう」の作風である。晦渋なブラスの挽歌から始まり、基本的に木管はほとんど出てこない。ブラスと弦楽器が前面に立つ。確かにコープランドの好む和声は使われるが、リズムは複雑とわかるように複雑で、旋律は無調に近い。各楽器はわりと剥き出し、新古典主義的なからみをするところもみられるが、ユニゾンでメロディを推し進める箇所もあり、全般はとつとつとした音楽の感がある。同時代音楽と歩調を合わせた抽象的な五楽章制の組曲である。演奏はこなれており、軋みやミスもなく、よくまとまっている。録音瑕疵が気になる部分がある。amazon配信とina配信は同じ音源。

コープランド:戸外のための序曲

作曲家指揮ORTF(ina配信他)1955/5/28コープランドフェスティバルlive(29放送)

掴みにはもってこいの聴きやすい曲。尖鋭なところもロデオなところも抑え気味で(リズムとか内部構造はともかく)、面白かったのはラフマニノフの3番終楽章から取ったようなフレーズがとてもわかりやすく柔らかく音楽を鞣し、ウォルトンをほうふつとさせる「一般に受けそうな音楽」になっているところだ。庶民のためにファンファーレをぶっ放しビリー・ザ・キッドのように複雑に踊りまくるコープランドっぽい音楽に飽きた向きに、むしろ勧めたい。といっても結局は思いっきりブラスと打楽器が活躍する。ストラヴィンスキーみたいに硬い指揮をする人のイメージがあるが、ここでは生き生きとしていて、オケの個性もきちんと作品の中に収まっており安心して楽しめる。

コープランド:交響曲第3番

作曲家指揮ORTF(ina配信他)コープランドフェスティバル1955/5/28live(29放送)

Amazon配信のものは同じ音源。ひたすら自演、長いコンサートで、直前のクラリネット協奏曲はストラヴィンスキー的な骨張った構造、簡潔な管弦楽に「アメリカンジャズ」のコープランド流「崩し」のリズム要素を取り入れ、六人組風の明快な和声をもってまとめた、作曲家の非常に出自のわかりやすい作品で面白いが(エボニーコンチェルトを意図的に真似ているのは明白)、このメインプロ、動画サイトにイギリスのユースオケによるプロムスライヴがあがっているので一見してほしいが、とにかくどでかく、分厚く、それなのにラヴェル的な意味で煩雑ではなく、剥き出しの声部同士が「込み入って」いるから、これだけやったあとに最後に演るのは無理がある。各楽器への要求レベルの高さ、とくにリズムについて、ORTFはとても苦労している。ブラスなど、とくにトランペットなど、アメリカオケを想定した凄まじく技巧的で力強さを要求する書き方に太刀打ちできない場面が多発、地獄のようである。分厚いのに細かなアンサンブルを要求される弦もなかなか地獄である。フランスオケの明るくカラフルで開放的なひびきはそもそもブーランジェの教えを受けたコープランドの和声にはあっていて、アメリカオケの力は強いが整いすぎた音色のひびきよりも耳を惹く。むしろそれだけがこの事故だらけの演奏で魅力となっている。コープランドの指揮は時期的にまだ若いせいもあってか、揺れは無いものの無機質ではなくそれなりに音楽的な流れを作れている。最後をあまり引き伸ばさずさらりと流すテンポ設定はこれはこれでかっこいい。ゴツゴツしていないのは木管の少し低めの響きが音を丸めているせいもあるか。いいとこなしのオケにあって、木管の魅力が唯一、さすが定評あるところをみせている。庶民のためのファンファーレを拡大した終楽章は他の楽章にもまして冗長感があるものだが、なぜか楽しく聞き通せた。クラシックを聴いているというより、プログレッシブロックを聴いている錯覚に陥った。しっかり盛り上がりを作ることもなく構成感も大してないのに、これは作曲家指揮の魔力か。とにかく、動画サイトにてとてつもないブラスの編成を見てから、ORTFが用意できた楽器の数を想像しつつ、同情を持って聴いてほしい。さすがに録音は古くこもって、良いとは言えない。当然時期的にモノラル。

コープランド:劇場のための音楽

作曲家指揮小管弦楽協会(SLS)1958/12/15live

コープランドの作品では比較的よく演奏される組曲で、バーンスタインも二度録音している。時期によらずコープランドの作風は晦渋で先鋭なものと平易で一般受けしそうなものに二分されるが、これはどちらかといえば後者だろう。恐ろしい若者と評された20代の作品であるにもかかわらず後年の著名作品にみられるようなダンスチックな楽しく複雑なリズム、厚いブラス(冒頭ファンファーレはコープランドが得意とするところか)、木管の込み入ったやりとり、ジャズの昇華(途中唐突にクラリネットがラプソディインブルー張りに入ってくるがこれは台本的なものに基づくのだろう)、明るくフランス六人組風の響き(一楽章などに前期特有の尖鋭晦渋なものは残るが)、いずれも聴衆受けしたであろうことは想像に難くない。クーセヴィツキーの庇護した作曲家の中でもこの人は同時代アメリカ作曲家がただ高尚な音楽を志向するあまり似たような晦渋な響きを前面に出してしまう中、それを残しつつ大衆性もその個性において獲得した点で才能のレベル差を感じる。ライヒテントリットもまだクーセヴィツキーが現役の時代の著作にてコープランドについてはかなりの紙数を割いている。コープランド自演についてはストラヴィンスキー自演のようなもの、と書けばその様子はわかるだろう。きびしく杓子定規のリズム指示に楽団がバラけるところなど、ああ、、、と思ってしまう。でもモノラルでそれほど良くない録音なのに伝わってくる響きの透明感からは、コープランドが(この作品では繊細かつ多少複雑ではあるが)新鮮で明瞭な和声を自身の作風の中核をなすものとしてこだわっていたことが伺える。SLSにしてはノイズレスで情報量が多く良好な状態。まあ、演奏的には好きな人は聴けばいい程度のかんじ。

コープランド:交響曲第1番

作曲家指揮ORTF(ina配信)1971/6/30live

ショスタコーヴィチを思わせる骨皮な響きとリズムから始まるが、楽器の使い方と主題の能天気さが違う。二楽章ではよりコープランドらしいリズミカルで明るい音楽が展開するが、同じ音形の執拗な繰り返しが飽きをきたさせる。もっとも良く鳴るオケに確信を持った棒は曲はともかく聴かせる。三楽章はわかりにくく晦渋で焦燥感のある、コープランドの特に前期に聴かれたような、同時代アメリカ交響曲にありがちな雰囲気がある。織り交ざるソロヴァイオリンや高音木管楽器の軽妙な走句が面白い。執拗な反復、ピアノの用法などあきらかにストラヴィンスキーではあるが、独自の新鮮な(後年マンネリ化する)表現が後半楽しく聴ける。最後やや尻切れでも聴衆反応は暖かい。

コープランド:エル・サロン・メヒコ

カンテルリ指揮NYP(NYP/youtube)1955/3/13live

トランプ大統領になったらこの曲も壁の向こうに放り棄てられるのかなあ(なわけない)。リズムのキレ、響きの派手さ、引き締まったアンサンブル、ニューヨークフィルという油断すると弛緩するオケをここまで「しっかり」ドライヴして、夢見るように、浮き立つように演じることのできたカンテルリ、伊達に世界床屋選手権みたいな髪型していたわけじゃない。録音が悪くても、良い演奏はちゃんと伝わるのだ。いたずらに「アメリカを煽る」わけでもなく「技術を見せつける」わけでもなく、これが「ライヴ」である。

https://youtu.be/zMINnAhO10I

コープランド:交響曲第3番

◯バーンスタイン指揮NYP(eternities:CD-R)1976/6/1live

ややザラザラした音だが録音状態はまずまず。正規録音にくらべミスが目立つ、というのは当たり前として、バーンスタインらしいアバウトさも孕む迫力といったものが両端楽章では感じられるし、愉悦的なリズムをきざむ2楽章、怜悧な静謐さを示す3楽章とも楽しめる。正規録音があれば別に要らない盤だと思うが、興味があればどうぞ。

コープランド:ロデオよりホウダウン

◯バーンスタイン指揮NYP(eternities:CD-R)1976/6/1live

わりと整然とした印象があった。色々と編曲されている小品であり、勢いやリズムの強さについては小編成のもののほうが有利ではあるか。デン・ハーグでのライブ。拍手喝采が凄い。

コープランド:短い交響曲(交響曲第2番)

○バーンスタイン指揮NYP(whra)1957/1/27live・CD

コープランドの曲はこういう感じのものも多く、響きやリズムはコープランドそのものなのだが、メロディが形をなさず、晦渋さすら孕んでしまう。交響曲でいえば2番と3番の間には大きな溝がある。とはいえ、この曲は15分程度の小品ではあり単純比較はできないが。ストコフスキーの録音があったようにおもうが、三楽章フィナーレのバンスタはアメリカの伝統を感じさせる熱狂を時々持ち込んでいる。

コープランド:アパラチアの春(ピアノ版)

○作曲家、スミット(P)(SLS:CD-R)1944/7

酷いノイズだが仕方ない。元は透明感に満ちた静謐な演奏のようであるだけに一層惜しい。コープランドは作曲家演奏家に多い、かなりよたるところのある演奏を繰り広げているが、リズム感は良く、良し悪しである。○にはしておく。私はよくわからなかったが全曲ではないとのこと。ロジンスキの同曲とのカップリングで、そちら演奏はNYPのボックス収録のものと同じ。

コープランド:交響曲第3番

○セル指揮NYP(SLS:CD-R他)1947/12/21live

ノイズがかなり耳障りだが仕方ない※。即物的でぶっきらぼうな感すらある出だしからセルらしさを感じるが、音楽の盛り上がりとともに畳み掛けるような表現はまるでショスタコを聴いているようで迫力ある。二楽章では新古典的な構造がこれまたプロコを思わせる迫力だ。四楽章は庶民のためのファンファーレがややせせこましく弱いものの、それなりにまとまっている。けしてセルのトップクラスの演奏ではないし、この曲の透明感ある感興を引き出した解釈でもないが、それなりに聴ける。 ※ノイズリダクション版ダウンロード音源が発売された。

コープランド:アパラチアの春

○バーンスタイン指揮ロス・フィル(DG)1982/7・CD

コープランドに期待される明るく軽いだけの音楽では必ずしもなく、重心の低い響きで心象的な風景を描き出すところもあり、バーンスタインならではの深みがあらわれている。音楽自体が余り意味深いものではないだけにそれが正しいのかどうかはわからないが、田舎の風景を素直にゆったり楽しむだけではなく、、、まあそれでいいのだけども。ロスフィルは雑味なく楽しい。

コープランド:庶民のためのファンファーレ

○リットン指揮ロイヤル・フィル(放送)2011/8/16プロムスlive

開始を告げる短いファンファーレで特筆すべきものはないが、わりと第三交響曲の一部として聴いてきた曲なので、新鮮な感じがした。

コープランド:静かな都会

○ゴルシュマン指揮コンサート・アーツ管弦楽団(Capitol)LP

コープランドの有名な小品だが、このコンピレーショナルバムではダイアモンドの楽しい曲からの流れで小気味良く聴こえる。コープランドは硬質でクリアな響きが特長であり、そこからするとちょっと埃をかぶったような無駄な充実ぶりがあるとも言えるが、このコンビらしい楽しさと落ち着きのバランスよい聴き心地が楽しめる。

コープランド:交響曲第3番

○バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(CBS/sony)1966・CD この盤CDで欲しいなー!自作自演もいいけど、こういうふうに料理してくれるとゴージャスだ。透明感のある硬質なハーモニーでアメリカ賛歌を高らかにうたう大曲だけれども、バンスタがやると肉が付き血の通ったロマンティックな歌になる。音楽が不透明になるのは決して悪いことではない。この曲はこうやるとまったく前時代の後期ロマン派交響曲のようにひびくが、それこそが本質ではないかと思わせる説得力がある。中間楽章、とくに緩徐楽章の暖かい抒情がとても心にひびく。終楽章へ向けてのいささか冗長なアンサンブルも弾むようなリズム感で煽ってくれる。もっとも極めて有名な「庶民のためのファンファーレ」から始まる大団円終楽章の冗長さは残念ながらフォローしきれていない。ここでもっと畳み掛けるような音楽作りをしてほしかった、との思いをこめて、○ひとつ。コープランドというと西部の荒野の朝の、ぴんと張り詰めた空気を思い浮かべるけれども、これはやわらかい朝の光に照らされた開拓民たちの横顔を思わせる。アメリカが誇る個としての人間という本質に立ち返った佳演。,

コープランド:バレエ音楽「ビリー・ザ・キッド」組曲~プレーリーの夜(プロローグ)と祝祭の踊り

○ストコフスキ指揮ニューヨーク・フィル(WING)1947/11/3&17LIVE「ビリー・ザ・キッド」はコープランドの代表作のひとつだ。「プレーリーの夜」などかれらしいひんやり乾いた抒情がいかにもアメリカ西部の荒野を思わせる。セレブレイション・ダンスはまさにコープランドらしい田舎ダンス。モダンな感性と意図的な野暮ったさが、いささか通俗的だが面白い効果をあげている。ストコフスキの指揮はじつにそつがない。「踊り」ではとても生き生きとしたリズムが伝わってくる。録音は悪いが、ストコフスキを「デフォルメ指揮者」と聞く前から決め付ける向きには、一度聞いてみて欲しい。,

コープランド:エル・サロン・メヒコ(1936)

カンテルリ指揮ニューヨーク・フィル(NYP/ASdisc)1955/3/13放送LIVE・CD~この曲一回弾いたことがあるが・・・思い出せない。録音は若干マシ。何でも振っていたカンテルリの特殊なレパートリーだが、曲の魅力をよく引き出せていないように感じる。踊りのテイスト、楽天的な感覚が不足している。実直に譜面に忠実にやったせいなのか、カンテルリがこの曲を嫌いだったのか、理由は不明だが、最後まで曲の流れが読めなかった。ただ右から左に流れていった感じ。バレエとして踊るのは楽だろう。しかし演奏会の演目としては、この演奏では何か今ひとつである。いや、最後の旋律でやっと思い出したくらいなので、私がそもそもコープランドの曲に適性がないせいかもしれない。でも言い切ってしまおう。無印。最後は盛り上がりブラヴォーが飛ぶ。~どこかで聴いたことがあると思ったら弾いたことがあることに最後で気が付いた。コープランドの代表作でけっこうわかりやすい曲の印象があったのだが、こうして完全に聴衆として聞くと、冒頭からしばらくなんだかとりとめのない感じがした。リズムに特徴的なものが現れ出すと徐々に音楽が流れ出す。メキシコの酒場の印象をメキシコ民謡をまじえて描写した作品というが、カンテルリがやるとけっこう冷たい肌触りがするのが意外。ラテンな感覚の発露は感じたが録音が悪いせいかそれほどキレがあるとは言えない。それより民謡旋律の歌謡的な歌いかたが印象的だった。オケのせいもあるのだろう、カラッと晴れた空に乾いた大地というこの曲の描写する風景が、若干北のほうへ移動しているような感じもした。それでもクライマックスに向けてしっかり盛り上がるし、響きは美しい。こういうのもアリなのだろう。管の発音がやや締まらないところもあり、ノリが悪いようにも感じた。娯楽性が後退している、但しこれは好き好きだろう。最後は空疎な太鼓の一打で終わるが、やや尻すぼみ気味で拍子抜けする。しかし客席からはブラヴォーがとぶ。録音と実演の違いということか。,

コープランド:エル・サロン・メヒコ(1936)

○クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団(PEARL/HMV)1938/12/1・CD溌剌として聞ける演奏だが、ちょっとマジメ過ぎるか。もっと軽やかに踊って欲しい。ストラウ゛ィンスキーの影響バリバリな曲ではあるものの、趣旨は酒場の踊りなんだから遊びが欲しい。そんな実直なテンポとアバウトなオケがこれまたアンマッチ。力感はあるし余裕も感じられるのに、打点から微妙にズレたり音程もやや甘い。音が鄙びているのは録音のせいだろうがスタジオ録音とは思えない所が少なからずある。全般に下手ではないがクーセウ゛ィツキーだと思って聞くと拍子抜けするかも。○。,

コープランド:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ

カウフマン(Vn)作曲家(P)(MASTERS OF THE BOW)最初のフレーズから「フランクみたいなんじゃないかな」と思ったらそのとおり。和声的にはこの作曲家の影響が強いように感じた。連綿と続くいつ果てるとも知らない旋律は、基本的にヴァイオリンによって綴られる。あまり魅力的ではないが、不協和なひびきがほとんどないので聴いていて不快ではない。ちょっとトリッキーな動きにはコープランドらしさを感じる。しかしどうも地味だ。カウフマンはなぜか線が細いように感じた。コープランドは達者である。興味があれば一聴を。無印。 ,

コープランド:「ホウダウン」作曲家による編曲版(1942/43)

◎ルイス・カウフマン(Vn)アンネ・カウフマン(P)(CONCERT HALL/VOX)コンサートホール(VOX)原盤によるMasters Of the BOWシリーズLPの一枚に収録。コープランドをはじめさまざまなアメリカ現代作曲家の曲を演奏しているが、さしあたってポピュラリティある「ロディオ」終盤からの魅力的なピースを挙げておく。同曲の依属者カウフマンの精力溢れるボウイングは、管弦楽のヤワな響きを一本で退ける。同曲の決定盤はEL&Pのものだと思うが(あのくらい速いテンポの原典演奏ないのかなあ)、クラシック流儀ならコレ!作曲家の手短なコメントが付いている。ちなみにこのカウフマン・レガシーのVol2、コープランドだとほかにヴァイオリン・ソナタ(作曲家のピアノ伴奏)、2つの小品が入っている。ヴァイオリン・ソナタは響きにアイヴズのソナタを彷彿とさせる郷愁が篭り、フランク風の節回しもある。しかし頭の中で管弦楽に置き換えて聴いてみると、この不規則なリズム、この中音部空虚なアメリカン響き、嗚呼明らかにコープランド。 CDになっているような気もするが、確認していないので不明。MB1032。,

コープランド:バレエ組曲「ロデオ」

○作曲家指揮BBC交響楽団(DA:CD-R)1975/9/16live

録音は極めて優秀なステレオ。BBCオケは反応が速く正確な表現で現代音楽演奏団らしさが感じられるいっぽう、やはりイギリスオケだなあという部分が諸所感じられる。弦や木管は柔らかく特有の情趣があり、アメリカ楽団のスカっと突き抜けた音とはまた違い、ロデオといえども冷え冷えとした西部の荒野ではなく広大な薊の野原を思わせるところがある。ピアノや打楽器がスコアになければRVW的だったろうとすら感じる。アメリカ楽団と比べブラスの弱さも感じるが、パワーなのか奏法なのか楽器なのかよくわからない。ソロを派手にとちったりもしている。最後のホウダウンなどリズムが硬くコープランドらしい折り目正しい整え方がやや興をそぐものの、おおむねコープランドがスタジオでは見せない感情のより直接的な表現が聴き取れるところも数多く、終演後の異様な大ブラヴォーはこの曲と作曲家の人気を裏付けるものだろう。○。

コープランド:庶民のためのファンファーレ

作曲家指揮ハンガリー国立管弦楽団(DA:CD-R)ブダペスト音楽祭1973/9/28日本での放送音源

萎縮したように生硬で心もとない吹奏だがアメリカオケと比べるほうが悪いか。アメリカ音楽特集の端緒として取り上げられた代表作。

コープランド:交響曲第1番

○作曲家指揮ボストン交響楽団(DA:CD-R)1960LIVE

硬派な大曲ほど熱気が必要だと思うのは私だけだろうか。初期に先鋭な作風の完成をみてのち古風な作風に立ち戻った作曲家は二十世紀に数多いが、コープランドもまた(後年でも硬派な作風を使い分けてはいたが)その一人だった。この作品は三番のような人好きする顔はしていない。しかし、短く引き締まった構成、高度に抽象化された独自の「アメリカンモダニズム」の隙のなさにはなかなかに耳をひかれるものがあり、プロフェッショナルなわざが光る。なるほどアイヴズをアマチュアとヤユするほどのものがある(コープランドは実のところ異能アイヴズを嫌いはせず指揮記録も残しており、晩年にアイヴズによせたような小品も書いている)。もちろん一般的に勧められるものは少ないが、ここには熱気があるからかなり救われている。たぶん実演であれば現代ものに慣れない向きも違和感なく入りこめたろう。舞踏リズムの高揚感はわかりやすい旋律をともなわないものの後年のバレエ作品を予告するような煌びやかさをはなち、このライヴにおいては腕ききのBSO相手に思うがままのドライヴをきかせて一種娯楽的な印象すらあたえる。静謐な音響表現は後年ほど単純化されないがゆえ魅力的だが、ボストンの冷たく正確な表現がはまっている。ともすると客観分析的にすぎる指揮を行いがちなコープランドだが、オケがそのぶん補っているようにも思える。ブラヴォが一声とぶ。音劣悪。○。

コープランド:交響曲第3番

○バーンスタイン指揮NYP(DG)1985/12/2,5-10LIVE・CD

言われるほど旧録にくらべ落ち着いているかんじはしない。自然でスムーズ、リズムは歯切れよく、NYPの調子もいい。バンスタにしてはクリア、そこが地味かもしれないが、かなり録音操作されているかもしれない。ライブのつぎはぎで詳細不明。5日のみ全曲が別途海賊盤で出ている。コープランドと同世代を生きその使徒となったバンスタの最晩年の記録。○。

コープランド:交響曲第3番

○作曲家指揮トロント交響楽団(DA:CD-R)1976/11live

ロデオとともに演奏されたもの。録音瑕疵はあるがステレオ。ライヴの生々しさが売りの演奏だが、CBS正規録音のものに近い客観的なテンポ感が若干興をそぐところもある。トロント交響楽団はアメリカオケの典型ともまた違ったもう少し深みのある音を聞かせて美しい。マトリックス上はイギリスオケに近いところに示せるのだろうが、それよりはアメリカやフランスに近いか。まあ、でもオケは素晴らしく腕がある。○。
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