ルーセル:弦楽四重奏曲

パレナン四重奏団(vega/westminster/forgottenrecords)1956

vegaではイベールと組み合わせられていたがfrはソゲを加えた三曲でお得。モノラル時代のこの楽団の勢いが伝わってくる。しかし後年をおもわせる濁らない響きで、晦渋な二楽章でルーセルが本来響かせたかったであろう透明な美しい音響を美麗に再現しているのもよい。こういう解釈を施ししっかり音にした録音は意外とすくない。三楽章もしっかり軽やかにコントラストがつき四楽章の盛り上げはバッハ的構造性に囚われざるを得ないながらもともとのルーセルの嬉遊性を拾い集め、最晩年の散漫な暗がりから、もうカルヴェ譲りの力強いファーストで押し切っている。この曲を初めて知ったのはこのvega盤だったが裏のイベールの印象がつよかったせいか何故か今まで全く触れてこなかった。私の中では同曲の基準である。
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ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第二組曲

ミュンシュ指揮ORTF(ina)1959/9/15モントルー音楽祭live(20放送)

録音がクリアではないが力強くこの曲では十分楽しめる。半音階的でワグナーの孫のような重厚なうねりから、ドスンドスン単調なリズムが重さはそのままに楽しげな音楽に転じていく。だがそこにはつねに地に足の着いた、浮つかない目の詰まった音響があり、ミュンシュはむしろそういった非フランス的な部分を交響曲のように展開させ耳を惹く。ブラヴォの嵐もさもありなんな、ルーセルにとってもミュンシュにとっても名作である。

ルーセル:交響曲第1番「森の詩」

ブリュック指揮ストラスブール放送交響楽団(ina)1960/6/21live(7/24放送)

まだ作風の固まっていない時代の作品だが雑多な要素の詰め合わせは楽しく聴ける。リアルでロマンティックな性向の指揮がルーセルの古い面を浮き彫りにしてしまい、透明感が出ないところが少し気になる(マルティノンの正規盤に慣れすぎたのだろうか)。一楽章「冬の森」は前の時代の描写音楽の影響が色濃く、弦の刻みとブラスのユニゾンなど直近ではロシア国民楽派のようだ。形式的にも堅苦しい。もっと堅苦しいソナタ形式の二楽章はバレエ音楽に転用されるのもさもありなんな、ピエルネのように軽やかな音楽で、「春」にふさわしい。ここにきて和声的な新しさを前に出すようになり、印象派を標榜しても良い気がするが、どうも、グリエールの「イリヤ・ムーロメッツ」を思い起こさせる低音ブラス(一楽章でも重用される)など、展開していくところで雑多散漫な印象は否めない。三楽章「夏の夕べ」は期待させる題名に比してパッとしない。ディーリアスを退化させたような音楽だ。四楽章「牧神と森の精」はなるほど冒頭から野蛮ですらある新鮮な響きで、ここへきて、多少キッチュでダンディふうでもあるがルーセルらしさが聴こえてくる。バレエ音楽ふうで響きの重心が上がり、半音階的な動きに拘泥されず作風に取り込んで、虚仮威し的な太鼓などちょっと邪魔だが、手法の新規性はドビュッシーにはとても及ばないものの、南欧ふうの要素をかなり取り入れたうえストラヴィンスキーに近づけようと(近づいてないが)野蛮さ奇怪さすら少し忍ばせて、総体的にはずっと後のアメリカの音楽に似た効果をあげる曲になっている。ハープとフルートが出てくるとやはりドビュッシー後の典雅さが醸し出されて良いが、長続きせず、こういう場面転換の速さがバレエ音楽に転用された所以でもあろうか。やっぱりドビュッシー後とは思えない古臭さが主としてティンパニの用法と半音階的な旋律にワグナーやリストの孫引きのような書法が、「題名ほどの夢幻的な作品ではないよ」と知らしめる。モノラル。少しノイズは入るが概ね可。ina.frとAmazonデジタルは日付が違うがおそらく同じ音源。

ルーセル:弦楽四重奏曲

ロート四重奏団(COLUMBIA)SP

第三期メンバー(ロート、アンタール、モルナール、ショルツ)。戦中プレスの日本盤で。ルーセル晩年作、形式的には明暗をしっかりつけ、おおむね古典的なソナタ形式による四つの楽章を保とうとしながら、雰囲気においてそれに囚われてはおらず全曲を通してのムードの変化があり、またオーケストラ的発想に基づいた音楽を四本に縮めたようなところがあるが、全盛期の「管弦楽のための組曲」といったリズムや旋律重視の曲とはまるで異なり、分厚い和声のみに語らせるような内省的な音楽で、過去のフランス楽壇の甘やかな記憶が夢のように浮かび(ルーセルはそこに定住せずむしろ中欧で評価を受けた作風の人だが)悲痛さすら醸し出してくる。これはしかし後年のレーヴェングートなどの演奏からは聴こえないものなので、終始整った客観的姿勢を崩さないロートにあっても、時代が音に出てしまった、と言えなくもない。明るく軽い音の持ち味がラストではルーセルの弱みである重い構造をカバーして、何か開放的な雰囲気が凄い。重苦しい中間楽章からの変化は聞き物。

ルーセル:交響曲第4番

フレイタス・ブランコ指揮ORTF(forgottenrecords)1960/02/11live

派手でガツンガツンくる精力的な演奏で、謎めいた暗闇、あるいは浅浅しい律動を一貫して意味あるものとして、正面から突き通していく。スピードや力感こそミュンシュを思わせるも、ミュンシュ特有の肉感的な変化の付け方はせず、音色はカラフルで旋律はリリカルで、そこにド派手な音響で有無を言わせない。ブランコにこういう暴力的ですらあるやり方ができたのか、という面と、ルーセル適性を強く感じる。ルーセルの中でもクセのある構成の交響曲だと思うのに、ベートーヴェン的起承転結がついて、拍手でおわる。モノラル。

ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第二組曲

ミュンシュ指揮ボストン交響楽団(RCA)1952/10/27・CD

何故か同年録音として組み合わされているオネゲルと違い疑似ステレオ処理が加えられている。悪いとは言わないが、オネゲルとルーセルの両曲の単調だが強靭なリズム、和声の微妙なクセに似たものを感じる私には違和感があった。時代なりの古びた音でもあるが、オネゲルにくらべれば十八番という感じで楽想の赴くままに起伏を作り明暗を描き、気楽さすら感じる。(いい意味で)中身のないルーセルとオネゲルには歴然たる違いがあるけれど、ミュンシュは楽しいダンスを床板を踏み抜くほど激しく踊らせて、ペットなど管楽器もスピードに力感まで保たせてよくついてゆく。ラストのカタルシスはミュンシュならでは、音質的にもこのくらいの曲なら十分。ハデハデに楽しく終わる。

ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第二組曲

ミュンシュ指揮ソヴィエト国立交響楽団(melodiya)1965/5-6LIVE・CD

冒頭少し録音がイマイチだがおおむねまずまずのステレオ録音(レンジが広く分厚くクリア過ぎるのは録音操作かもしれない)。ロシアオケのパワーを発揮しやすい曲のようで聴き応えはある。ミュンシュ色よりロシア色が強いというか、弦楽器も他のオケとは比較にならない力強さとスケール感、ブラスはワグナー張りの吹きっぷり、それがやや重さにも通じているがルーセルをこうやることもできるんだと思う。繊細さ、描写性に欠ける感もあり客席反応は少しブラヴォが飛ぶ程度の理解のさせ方(まず初耳の聴衆が多かったろう)になってしまったようだが、ミュンシュ晩年の徒に煽りまくるだけではない円熟した芸風も出ていると思う。まあ、曲に慣れないオケに奏でさせるために客観的に大人しくしているのだとは思う。

ルーセル:バレエ音楽「蜘蛛の饗宴」

プレートル指揮フランス国立管弦楽団(ERATO/icon,warner)CD

この盤では「交響的断片」の副題が使われている。最初と最後の幻想的な響きは美しいのだが、蟻から蜉蝣の描写的表現はいささか灰汁が強い。荒っぽく力強く突き進み、リズミカルに浮き立つような舞踏表現はワルツ以外あまりうまくいっていないように聴こえる。僅かズレるような感覚があるのだ。あくまで交響詩的に捉えて聴くならばこれで良いが、ただでさえ野蛮主義の影響を受け始めたルーセルの重い響きにそのまま推進力を与えると、アタックの激しさこそ逆にプレートルらしいとも言えるが、このような少し濁った趣を醸してしまう。円熟期の作品であるバッカスが曲の趣旨に沿った佳演だけに、併せて収録されているこの少し遡った代表作にはこの作品向きの繊細な表現が欲しかった。録音は良い。

ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」全曲(第一組曲・第二組曲)

プレートル指揮フランス国立管弦楽団(ERATO/icon,warner)CD

ミュンシュがさかんに第二組曲(第二幕)だけを取り上げたこともありそれが普通のように捉えられているが、派手なダイジェストのようなもので、ダフニスとクロエの第二組曲だけを聴くのと同じ。ラヴェルの導入した新奇要素であるウィンドマシーンが第二組曲に含まれないのは象徴的で、あれはああいうもやもやしたところから周到に計算された筋書きのあとで派手な踊りに至る。これも印象は第一組曲(第一幕)と併せて全曲だと少し異なってきて、ただのバレエではなく筋書きの上にあること(読まなくても聴けば単なる抽象音楽ではないことがわかる)、モチーフがどうやって登場してどう流れて行って第二幕に至るのか(まるで印象派から新古典主義へ向かうルーセル自身のよう)、またプレートルは明瞭なステレオ録音のうえで、いかにもフランス的というような響きの明るさとわかりやすい表現で作品を追っていくので、全盛期ルーセル特有の「曇り」が一切無い同曲を導入版としてお勧めするうえで格好の素材となる録音です。

ルーセル:組曲ホ長調

コープランド指揮クリーヴランド交響楽団(SLS) 1970/8/1クリーヴランド ブロッサム音楽祭live

両端楽章の破裂的な舞踏表現、その迫力はまるで本職指揮者のようで、コープランドの作る娯楽的なアメリカ音楽の能天気な破壊性に通じる要素が同曲にあり、だからこそレパートリーとしたのだとわかる。新古典主義音楽だからといって娯楽的に煽って悪いわけはない。中間楽章サラバンドは抽象的な意味でも良演で、伝統的フランス音楽として適切に仕立てており、ルーセルの体臭や晦渋さは目立たない。現代作曲家として、殊更響きや構造を浮き彫りにするのではなく、音「楽」として「聴かせ」にかかっている。録音はノイズ塗れのステレオだが、ノイズがなければ「破壊的な」印象は変わるかもしれないが、この演奏のスケール感、迫力、娯楽性はそのまま感じ取れるのではないかと思う。

ルーセル:交響曲第3番

マルティノン指揮ORTF(warner,icon,ina/ina配信?)1970/6/21シャンゼリゼ劇場live・CD

実は、このマルティノン後期録音集ボックスを知ったのが最近で、バラバラ集まっていたフランス秘曲CD、eratoからEMIの録音が網羅されているばかりかina所蔵のライヴ音源(しかもina.fr配信の音源と違うもの!)等初音盤化トラックも多くて、14枚2000円台とはなにごと!と思った。昨今古いモノラル音源や余りに名の通った指揮者の音源ボックス叩き売りは多いが(そしてその多くがEMIからワーナーに流れたものだったりするが)、マルティノンクラスの指揮者でこれをやられると、今までの投資なんかどうでもよくなって、聴いてない音源をひたすら再生させ続ける日々になる。つい最近もプレートルで。。このライヴ、データ上は初出だが、ina配信のものは放送日が記載され演奏日とは限らないので、ダブっているかもしれない(確認したところ音源には6/21という日付だけが記載され演奏日・場所は第三者による推定なので、同じ可能性が高い)。もっともあちらはストリーム配信、もしくはmp3なので耳にはこちらのほうが優しい。

と言って、正直これはちょっと打楽器のドガシャーンで誤魔化しているようにも思う。オケに弛緩が否めず、集中力を欠いているかのように聴こえるところがある。これをスケールがでかくなった結果と取るか、統率力の問題と取るか、解釈の問題ととるか。そのすべてだろうか。でも、ina配信で聴いてない方には、このルーセルの弟子が同曲に籠められた意図、特にバレエ音楽的な要素や、前衛的な響きや陶酔的な表現を強調することによって師の歴史的位置を改めて示し直したものとして、薦められる。娯楽作品というだけではない、この曲にはこれだけ情報がこめられているんだ、というのをついでにユーチューブ的なところで何年か前のプロムスライヴで視覚的にも確かめて(あちらBBCsoなのに緩いがルーセルの効果的なオケ(とくにブラス)の使い方がよくわかる)、楽しんで欲しい。最後の妙に性急な終わり方はマルティノン独自のもの。一声ブラヴォが入る。

ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第二組曲

ブリュック指揮ORTF(ina)1960/3/8live

これがけっして壮麗とか豪速球とかそういう極端な特徴を挙げづらい演奏なのだが、非常に良好な録音、オケのコンディションの良さ、美しく激しくルーセルの人好きする面をひたすら追った、流れ重視の演奏で、ここでは大見得切ってくれ、というところでそれほどルバートしないし音量変化も普通、しかし、まあ、終わると同時に大ブラヴォとなる華麗な演奏なのである。ブリュックはプロコフィエフの炎の天使初演及び録音でのみ知られるがフランスにはまだまだ録音はあるようで、職人的と表現するには惜しいフランス音楽に対する素晴らしいセンスがある。ルーセルのきっちりした構造への配慮をわきまえ、色彩や舞踏表現からは全盛期ルーセル特有の「臭み」が感じられず、素直にドビュッシー後ラヴェル同時代の鋭敏な作曲家のさまを効果的に提示する。しっかりしているが重くはない。曲も良いのだが、何度聴くにも耐えうる録音である。

ルーセル:ヴァイオリン・ソナタ第2番

アンドラーデ(Vn)カステル(P)(meloclassic)1955/3/17フランス放送用スタジオ録音・CD

フルートトリオや交響曲第三番といった作品を生み出した、ないしその直前の全盛期1924年のものだが、一楽章はいきなりの晦渋さ、対照的なピアノのフランス的なリリカルな響きの奇妙な重なりに、少し後の名作とは言い難い難解なピアノ協奏曲を想起させられる。だが古典音楽的な均整(と窮屈さ)もあり、二楽章にてオリエンタリズムが炸裂するも結局古典的な型式感が支配的になるところは、どうにもまだ個性が出し惜しみされ惜しい。三楽章はそこまでほとんどピアノ、たまにヴァイオリンのメロディの一節にしかあらわれなかった叙情が、一連の三重奏作品に共通するサロン音楽的な躍動を持ち込み安心する。ピアノの細かい動きは他の有名トリオには現れなかった技巧的なもので、オリエンタルな展開もまじえた全盛期の大規模作品にむしろ接近している。ピアノの粒立った音、パラパラ胡麻をまくようにこなれた技巧が素晴らしく、主張せずソリストを引き立てている。フランス的な品も感じさせながら曲自体に内在する中欧古典志向を汲んだ芯の通った演奏もなかなか。短い曲だがもともとルーセルは長い曲はオペラにしかせず、まとまった簡潔な作風である。その短さの中で言うことを整理し尽くした感じはせず、わかりにくさも残る。そのぶん噛みごたえはある。和声を除けばフランクとは対極にあろう。

録音はこんなものか。

ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第二組曲

ミュンシュ指揮ボストン交響楽団(RCA)1952/10/27・CD

ミュンシュが初演した組曲で、ルーセルの体臭が純音楽的に洗練されロマンティックなパセージも含む汎用性の高いバレエになっている、その過渡期的な特質をフランスオケではない機能的なオケでやることにより、さらに万人に受け入れられるような表現に昇華させている。ルーセルの押し付けがましい単調なリズム、空疎な嬉遊性をただ突きつけるのではなく、構造の強固なところも見せつける録音となっている。モノラルは惜しい。

ルーセル:交響曲第3番

ル・コント指揮ORTF(ina配信)
1965/3/11放送 live

ステレオだがバランスが悪くペットなど引っ込んでいるためアンサンブルが今ひとつピタッとハマって聴こえない箇所が散見される。一楽章など音響も空疎で客観の勝る演奏に聴こえるが、演奏の実態を録音が伝えきれていない可能性がある。二楽章後半の盛り上がりはミュンシュを思わせる攻めの姿勢で胸がすく。最後のコンマスソロが掠れるのを聴いていて、他の場面の瑕疵もひっくるめるとオケ全体として少しコンディションが悪いのかもしれない。四楽章のラストで弦楽器の音量が上がらずブラスと乖離したようなのはどうなのか。だがさかんにブラヴォが飛んでいるのを勘案すると悪くはなかったはず、これも録音のせいかもしれない。ミュンシュより現代的に整っているがマルティノンより主情的で耳馴染み良い演奏。

ルーセル:合唱付バレエ音楽「エネアス」

マルティノン指揮ORTF他、クレーデル(ina配信)1970/4/22放送 live

1935年ブリュッセル万博のためにシェルヘンから委属された作曲家最晩年の大作(以前のパドマーヴァティに比べれば小規模だが)。ベルギーの歌劇台本作者Joseph Weteringsによる同作には最終合唱 “A Hymn The Roman People”~ムッソリーニの国の首都ローマを想起させフランス人を怒らせた~が含まれていたので、論争の的になった。バレエがパリに到着するには3年かかった(1938初演、作曲家の没後)。その後もめったに上演も行なわれず、1960年弟子マルティノンによってeratoへ録音された。しかしながらその後も演奏はほとんどなされていない。これは同じマルティノンによるライヴになる。

曲は劇性が高く、40分余りかかるがルーセルの少し癖のある作風~重いリズムと生々しいオリエンタリズム(若い頃の「セレナーデ」にある南洋の鳥のようなうわずったポルタメントも聴こえる)~が職人的な腕によって引き伸ばされ、聴きやすくなっている。最晩年作品としてはやや後退した感もあり、ルーセルならではの書法は定型化しているものの、しっかり出来上がっている。反面正直飽きてしまうのも確かで、死亡説流布後に発表された4番交響曲の内省っぷりを求めても裏切られる。マルティノンはセッション録音にくらべわずかにライヴ的な攻めの音楽作りを持ち込んではいるが(そのせいか最初の方で縦がズレかける)、原曲のせいもあって全体構成は弱いように思う。オケはしっかり表現しておりマルティノンの作為的な彫刻より音楽的な調和が前に立っている。録音状態は放送レベルでは良好なステレオ。

ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第一組曲、第二組曲

ロザンタール指揮ORTF(ina配信)1968/9/5放送

見事な演奏で、舞台音楽をやると水を得た魚のようになるロザンタール(逆に四角張って前に向かないこともある)、色彩感がとくに抜群である。同時代のミュンシュが重量感あるルーセル特有のリズムに重点を置き、中欧的な重い響きを強調し色味に配慮しなかったのとは対照的で、ルーセルとは師弟関係にあったマルティノンのカラーに近いが、あちらはあちらで少し透明で無機質なところがあり、肉感的要素も兼ね備えた(ロザンタールに「肉感的」と言うと語弊がある…?)この長さを緩急すべらかににつけながら、ルーセルらしさはルーセルらしさとして明確に叩きつけつつ、印象派の残響的なところやワグナー的な法悦性はそれ相応の表現へ切り替えて見せる、じつに演劇的に手慣れたところをみせている。バレエ音楽というと場面場面でコロコロ変わる印象があるが、ここでは管弦楽組曲、さらに一種まとまった交響音楽のように聴くことができる。なかなか良い聴き物。

ルーセル:フランク人の軍歌

ツィピーヌ指揮パリ大学合唱団、パリ音楽院管弦楽団(EMI)CD

晦渋でルーセルとしては前衛的な作品。哀歌ふうであり、トランペットによる警句の織り込まれた不安感に満ちた音楽で、短いが重い。この演奏はやや地味な感がある。

ルーセル:詩篇80番

セネアル(t)ツィピーヌ指揮パリ音楽院管弦楽団、パリ大学合唱団(EMI)CD

比較的重い響きをもち半音階的なうねる低音部をともなう古風なメロディなど、ルーセルらしさともとれるが少し野暮な雰囲気が続く、と思いきやエキゾチックなフレーズがあらわれ、しばし新鮮な空気に触れるとルーセル特有の単純で強いリズムがしっかりした、若干攻めた響きに支えられて最盛期の作風に至る。高音の長い音符の下で不可思議にゆったり揺れる旋律など前衛にも受けていたこの作曲家の独創性を象徴しており、それが単なる前衛で終わらず、「セレナーデ」を思わせる次世代印象派的な魅力を持っているのが素晴らしい。ちょっと色々と変化に富みすぎて散漫な感もあるが、歌曲や合唱曲も多く残したルーセルの歌唱の扱いも自然でうまい。ツィピーヌはルーセルの譜面に示された変化をデフォルメすることはないが、聴きやすくまとめている。合唱などなかなか良い。モノラルのスタジオ録音。

ルーセル:交響曲第3番

ミュンシュ指揮WDRケルン放送交響楽団(WEITBLICK)1966/9/30live・CD

細部まで明晰なステレオ録音。軍隊みたいな一楽章に圧倒される。厚い和音が一糸乱れず、ザクザクと重く切り裂くように迫ってくる。こういう響きこそ必要だ。ルーセルはドイツオケに向いている。ただ構造的な部分を無視とは言わないが流れと勢いの方を重視しているのはミュンシュ流で(二楽章は印象に残りづらい、もっとも内声は良好な録音のため実によく聴こえる)、ERATO録音に似た印象を与える。スケールを保ち、決して前に流れない四楽章の迫力も出色。これはERATO録音とは違う点かもしれない。拍手なし。ほんとにライヴ?

ルーセル:交響曲第3番

マルティノン指揮ORTF(ina配信)1975/1/6(放送)

おそらくライヴではなく放送用録音。構築的な演奏ぶりは別録と変わらないがいくぶん「内圧」が高いというか、熱量が大きいように感じた。冒頭はやっぱり叩きつけるような激しさがほしいものの、磨き上げられた響きと透明なアンサンブルはマルティノンの持ち味として堪能することができる。二楽章もよいが後半楽章楽しめる。

ルーセル:交響曲第3番

○チェリビダッケ指揮ORTF(ina配信他)1974/10/25live(1975/2/2放送)

ina配信されているものはステレオの録音状態も良く、前記の既出音源と同一と比定されているものの改めて総括的印象を書いておく。組み立てのうまさが尋常じゃなく、実演経験豊富な、諸所ツボを押さえた生粋の専門指揮者(実際はどうだか知らんWikipediaでも見てください)といった風情で、響きはがっしりしているが前進する力は凄く、かといって即興的なほつれなどあるわけなく、周到に準備された「決定版」である。立体的な造形がオケの華やかな響きと相まってルーセル特有の野暮ったさがなく、厳しく整えられたからといって痩せることも決してなく、アンサンブルというものを強く意識した各パートのデュナーミク等への指示が素晴らしい演奏効果に結実している。二楽章つまらないとか、四楽章間延びするとか、そういうこととは無縁。終盤の激しく単調なリズムの畳み掛けはルーセルの魅力ってここに尽きる、という印象を残す。客席反応は通りいっぺんのものだが、壮年のチェリビダッケらしさの詰まった佳演。同じコンビで別の放送ライヴ音源もあり既出(inaでも配信されている)、昔書いた。

ルーセル:組曲ヘ長調

ブール指揮ORTF(Ducretet-Thomson/forgotten records)1951

frはCD復刻から漏れているようなLPの板起こしレーベル(裏青)で、そういう趣向からしてモノラル期のものが多く、中古高騰のフランス盤がメインなのは嬉しい。ほとんど稀少盤ではないものの、網羅するには非常な労力がかかる。逆にここで復刻されてしまいLPの希少性が失われてガッカリという方も多いのではないか。ただ、私見ではあるが音は篭り気味、手を加えていないせいだろう昔のイタリア盤のように機材が雑な感じもして、資料用・収集用ではなく観賞用としては少し問題があると思う。正規ルートでCDになっているものもあるのでそこも注意。ブールはマニア向けの現代音楽指揮者で、音は冷たいが、瑞々しく明確な表現が持ち味。録音はフランス物が多い。シェルヘンの系譜には決して並ばず、ロスバウトよりも色彩的というか、時代が下るので、むしろベルティーニに近いところがあるかもしれないが、より情緒的である。案外と数が多くて、私も一時期LPまで手を伸ばしたがやめた。この曲ではオケの性向からか、少し重く、ミュンシュに近い聴感がある。セッションなのでミュンシュのライヴよりは余程響きよく感じるが、そこは古いLP起こし、過度な期待は寄せないほうがいい。この人はラヴェルの新しい録音がCD化していることからもわかるとおり、ルーセルのような単純な作品よりも、技巧的な曲に適性を示すようである。

ルーセル:交響曲第3番

マルティノン指揮ORTF(ina配信)1970/5/4ボルドー大劇場(ボルドー五月祭)live 6/21放送

師の代表作を振った記録ということで興味深く聞き始めたが、落ち着いたテンポに四角四面の表現で拍子抜け。マルティノンらしいとも言える響きだがこれが徐々に熱をおびはじめ、シンバルの音に煽られるように迫力が増していく。二楽章が確信犯的にドラマティックで出色。力強いがあっさりとした三楽章、コンマスソロの入る緩徐部が丁寧過ぎて間がもたない感もある(響きはとても美しい)がしっかりとした足取りでスケール感を出した四楽章は、チェリを思わせる構築性があり、好きな人は好きだろう。徹底した明晰な響きへのこだわりは、この曲が野蛮主義を利用した受け狙いな作品ではなく、まぎれもなく現代フランスへ続く系譜に連なる作品であることを意識させる。もっともミュンシュ好きには物足りない。voxのプロコフィエフ交響曲全集を想起させる。この時期にしては音が悪い。inaにはもう一種ある。

ルーセル:ヘ調の組曲~Ⅱ、Ⅲ.

ツィピーヌ指揮ORTF1972/1/30(放送日?)

重苦しい緩徐楽章から始まるせいもあろうが濁ったような、渋い演奏に聴こえる。三楽章の躍動もあまりキレが良くない、ラストはブツと切れるのに。録音としてイマイチと言うべきだろう。ina配信

ルーセル:ピアノ協奏曲

ボロフスキー(p)ミュンシュ指揮BSO1951/10/12sls

3番交響曲辺の最盛期の作風に依るがピアノを使った点で趣が異なり、両端楽章は露骨にプロコフィエフを模倣した箇所が散見される。2楽章はアメリカ風のドライなリリシズムが光るがこれはオケの特性か。

ルーセル 交響曲第3番 ミュンシュ指揮(データ)

すべてCDないしCD-R

(1)1964/8/19ORTF(エジンバラ音楽祭ライヴ)disque montaigne、Valois他
(2)1965/4/20~23ラムルー管弦楽団(パリ・セッション録音)ERATO、MHS他(French Broadcasting System(Masterworks Of French Music PROGRAM No.205)のLPはモノラルだが同一)
(新)1966/9/30ケルン放送交響楽団(ライヴ)weitblick
(3)1967/2/16、18シカゴ交響楽団(ライヴ)CSO
※1967/2/16無編集 "O"“O”“O” Classics、Disco Archivia
(4)1967/2NYP(ライヴ)Disco Archivia
(5)1967/5/29ハンガリー国立管弦楽団(ライヴ)Aulide

ルーセル:バレエ音楽「くもの饗宴」

アルベルト指揮セント・ソリ管弦楽団(OMEGA/hector:CD-R)1960年代

往年のフランス録音ではお馴染みの指揮者だが、つまらない。録音が弱く悪すぎるのもあるが、四角四面で、繊細なソリストたちの音色は辛うじて美観を保っているが、もう、聞き取り辛いのが度を越している。無印。

ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」組曲

○クリュイタンス指揮ORTF(SMC)1959/5/9モスクワ・CD

ソ連でクリュイタンスがこの演目をこのオケで。信じがたい面白い取り合わせだが、録音は悪い。茫洋として篭っている。クリュイタンスらしい要領良さが曲も後半になって活きてきて、リズミカルで、クリュイタンスのルーセルというものをもっと聴いてみたい気にさせる。ソ連録音の緊張感は感じ取れないが、珍しい録音としてマニアなら聴いてもいいだろう。

ルーセル:バレエ音楽「蜘蛛の饗宴」

○マルティノン指揮ラムルー管弦楽団(FR:CD-R/PHILIPS)1953/2

リズムが切れている、繊細な配慮が行き届いているとかそういう類の演奏ではない。単純に楽しい。オケの特性もあるんだろう、ロマンティックな音楽の流れができていて、単純に聴き入ることができる。マルティノンというよりデルヴォがやりそうな芸風だと思った。○。
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