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ペンデレツキ:広島の犠牲者に寄せる哀歌

作曲家指揮ポーランド国立放送管弦楽団(EMI)1975/2/3-7・CD

明晰な録音であるがゆえに相当の覚悟をして聴いたほうがよい。心臓が弱いならスピーカーよりむしろイヤフォンで聴いたほうがいいだろう。弦楽器だけでこれだけの音が出せるのか、驚嘆する「音響」であり、実際明滅する、あるいは起伏する斬新な響きに驚嘆しっぱなしである。不安と焦燥、シェーンベルク以降音楽の一部はかつてなかった人類の直面する悲惨な状況に対し、それを慰めるのではなく、寄り添った「荒んだ響き」を選んだ。一度でも、飛び降りてしまいたいほど追い詰められた経験のある者、また、絶望的な気分がえんえんと続いて終わりの予感すらしない者には、甘い歌やロマンティックな夢は何の意味も持たない、逆に唾棄すべき「頭上に胡座をかいた貴族の遊び」にきこえてしまう。このての現代音楽にそういった要素は一切ない。殺伐とした気分そのものであり、「わかるわかる!」とホッとする。同曲はそれでも行き過ぎたもので(若干は解釈によるがこの演奏は指定より遅いながらかなり先鋒をいっている方)さすがにここまでの荒み方は、後付けの題名に従えば唯一人生き残るも原爆病に蝕まれ心をも病み生活もままならない状況に寄り添う、あるいは、日々サイレンに苛まれ体中を傷つけられながらついに最後に打倒され意識が遠のいていく者の心象風景なのである。ただの机上論的な音響実験でも記譜実験でもない。何か一貫したものを持っている。これはさらに、連続した三部を三部ときちんと意識させながらも、フィナーレは少しも解決をみない。終わりなき苦痛の静かな持続を思わせる。永遠性を感じさせる。ビビッドで耳を突き刺す音でも、こんな私にも、とても響く時があるのである。ホールで聴く気にはならないが。
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ペンデレツキ:広島の犠牲者に寄せる哀歌

オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団(PO)1969/1/10放送live・CD

極めて抽象的なクラスター音楽である。当初8分37秒(時に8分26秒)と題されたことからもそのままの「哀歌」では無いことがわかる。戦後ポーランドを代表する作曲家のフィテルベルク賞を受賞した出世作であり、同時代の西欧の前衛作曲家と一気に歩を合わせることとなった(ペンデレツキ自身は後に作風を変えた)。広島というのは日本人に吹き込まれた後付けの表題とも言われるが、本人は初めて実演を耳にした後、これを説明する言葉をthrenody(ほんとはロマンティックな哀歌ということばより残酷な悲歌ということばが適切だろう)、そして自ら最も適切な表題として、決して忘れえぬカタストロフ「広島」の犠牲者に捧ぐ、としたというようなことを語った(英語のwikiにもそれらしきことが書かれている)。それは楽曲が先にあって、その「雰囲気」を説明するのに「threnody」があり、そこに当時自分が最も重く受け止めていた事象を当て嵌めたということだと思う。これは漫然と聴くだけでは伝わらない。エキセントリックな響きに一度に理解することは到底能わず、私は何度も何度も聴いて初めてわかったようなわからないような気がした。ただの新しい音響、非常なものとして「シャイニング」等に使われてはいるが、それも「雰囲気」に事象を当て嵌めたという意味では外れた用法ではないだろう。精緻な構造と厳しく計算された構成を持つ作品であり、音要素の全てに削ぎ落とされた創意が注ぎ込まれている。荒んだ気分の粗暴な描写音楽ではなく、宗教的な厳粛さを感じさせる細密作品だ(それでいながら演奏者(解釈者)に任される部分もすくなからずある)。音楽というのが妥当なのか、建築物とすら感じる。

オーマンディがフィラデルフィア管弦楽団の豊潤な弦楽セクションを使って演奏したというのは驚きだし、曲の一種清澄さにそぐわないと思ったが、案の定良いステレオ録音であっても、マスの迫力のみが伝わり各要素の特徴はあまり伝わらず、響きの細部も聴きとれない。寄せては返すような音の密度の変化、特殊奏法による音響的なアクセントも、あまりに総じて音が大きすぎて耳で識別しづらい。それが雑味に繋がっている。スピードも速過ぎるのではないか。曲を知っている人が聴くべき録音だと思う。客席は物凄い大ブラヴォである。

ペンデレツキ:シンフォニエッタ

○作曲家指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア(DIRIGENT:CD-R)2008/8/26live

大して知らないのに書いてしまうのが私の傍若無人なところだが売りでもあるので勘弁。小交響曲的なまとまりはさほど感じない。ルトスワフスキとかと同じような、バルトーク晩年の日寄った作品を思わせる民族舞踊を激しいリズムで叩き出す作品であり、演奏もまたそういったもの。余り惹かれる曲ではないが前座プロにはふさわしいだろう。○。
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