マキューアン:弦楽四重奏曲第2番

○チリンギリアン四重奏団(chandos)CD

伝統的な四楽章制の国民楽派弦楽四重奏曲で、中欧志向の強い作品だが、既に自然な旋律美と独特の調性変化が表れており、マキューアンを代表すると言っていい佳作になっている。緩徐楽章のワルツ主題の美しさはウィーン的で筆舌に尽くし難い。響きが浅く中欧ふうと言うには躊躇もある楽章だが、続くスケルツォ楽章からフィナーレの律動は重い響きに支えられ充実している。もっともこの後半楽章の雰囲気が同じような感じであるためにやや飽きもする。チリンギリアンは上手いが、もう少し艶のある表現が欲しかった。○。
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マキューアン:弦楽四重奏曲第8番

○チリンギリアン四重奏団(chandos)CD

ドビュッシー色の非常に強い和声感覚で仕上げられているがよりどぎつく力強い音楽になっている。わずか10分余りの三楽章制であるからあっさり聴けるし、この作曲家特有の旋律の美しさは響きのフランス的透明感をもってとてもいい。毒も灰汁も無いが毒や灰汁のある作曲家に匹敵する個性も発揮されており、それが演奏困難さを産んでチリンギリアンくらいしか録音しないことにつながっていようが、これはいい演奏であり、とくに他に必要性は感じない。

マキューアン:弦楽四重奏曲第15番「小四重奏曲~スコットランドのムードで」

◎チリンギリアン四重奏団(chandos)CD

快活で軽い出だしから掴まれる。突如転調して晦渋になったとしても長続きしない。透明感のある民謡音楽がRVWらの前期を思わせる聴き易さと、そこに僅かにプラスされる個性的な「前衛性」のミックスでマキューアンの到達した領域を垣間見させる。特筆すべきは3楽章で、こりゃ奇妙だ。冒頭、平易な民謡調で通している楽曲では異質の、これも民謡から来ているのだろうが、奇怪な装飾音型にリズム、響きには瞠目。この律動は新鮮で魅力的でもある。再現されるさいには待ってましたと思ってしまうほど。適度にモダンでもあり恥ずかしい旋律も素晴らしく、これはイギリス民謡室内楽としては名曲である。小規模だがそれなりのボリュームはあり、書法はヴァイオリン偏重で複雑ではないが上記のとおり聴いていて面白い部分が多く、しっかりした3楽章制が生きている。演奏はこれ以外ないほど素晴らしいし、実際これ以外録音されていない。◎。

マキューアン:弦楽四重奏曲第4番

○チリンギリアン四重奏団(chandos)CD

突飛な転調により常套的な表現を途中で捻じ曲げるといったマキューアンの個性が既に現れているが、基本中欧ふうの前衛傾向の強いながらロマンティックな内容もふくむ暗い音楽から抜け出せないまま楽曲は進み、、、しかし終楽章でいきなり民謡になる。これがマキューアンなのだろう。この終楽章の民謡編曲も一筋縄ではいかないアレンジが加えられてはいるが、楽天的すぎて1楽章がうそのようだ。晦渋で難しいがやりがいはありそうな曲で、もっと聴かれてもいいかもしれない。演奏は達者。○。

マキューアン:弦楽四重奏曲第17番「ファンタジア」

○チリンギリアン四重奏団(chandos)CD

単一楽章からなる小品ではあるが連続して演奏されるいくつかの部分で性格分けされている。低弦により奏される暗く律動的な旋律によりアーチ構造をなしており、それはロマン派的なものであるが、中盤には目の覚めるような前衛的転調を盛り込んだ意欲的な表現やミヨー的な響きを持つ部分、あるいは古典的な表現も入ってきて、近現代要素の展覧会となる。この10分の間に詰め込むマキューアンの「個性」を実感できる。あの奇怪な転調はこの人じゃないとやらない。どちらかといえば中欧的でいつものフランス風の表現は目立たずそのようなものを期待すると裏切られるが、この短さなら耐えられる。演奏家は達者。○。

マキューアン:弦楽四重奏曲第7番

○チリンギリアン四重奏団(CHANDOS)CD

なんというか、リズムというか構成というか、独特な感じのするマキューアンだが、ここでも和声はまったくドビュッシーの枠から出ていないし、高音の使い方はミヨーだし、民謡使うし、マンネリズムを感じないといえば嘘になる。フランス的なスコットランド。レントに始まりレントに終わる小品で、その短さが飽きをきたさないゆえん、まあ、ドビュッシー影響下でかかれたSQ好きという人はいるだろうから、かなり薄味だけれど、チリンギリアン四重奏団の腕込みですすめておく。

マキューアン:弦楽四重奏曲第16番

○チリンギリアン四重奏団(CHANDOS)CD

一言で言って変な曲。各楽章には夏の朝など夢想的なフランス語の題名がついているもののまっったくその雰囲気は無く、ただただ「個性的」である。何かを拗らせてしまったような曲。確かに個性的だが、チリンギリアン四重奏団も大変だな・・・と思ってしまった。

マキューアン:弦楽四重奏曲第8番「ビスケー」

○エジンバラ四重奏団(meridian)CD

細く金属質の音でいかにもイギリス(スコットランドだけど)的な音楽を紡ぎ出していく。これは英国(スコットランドだけど)産室内楽好きとして、とても納得感のある演奏だった。RVWの1番の音響を彷彿とさせるような、清々しい音でロマン性の高い作品の「匂い」を現代的に聴こえるよう編み直しているかのようだ。チリンギリアンQの技術や、恐らく楽器にも及ば無い楽団であり、ギリギリのところで力づくでなんとか弾ききった、という高音処理部分など、逆に真実味があり私にはむしろ音「楽」的に思えた。◎に近い○。チリンギリアンのほうが上なのは確かだから。

マキューアン:弦楽四重奏曲第3番

○チリンギリアン四重奏団(CHANDOS)CD

20世紀初頭の作品だがみずみずしい感性に溢れ、中欧的な古風な音楽のていをなしながらもリヒャルトであるとかロシア国民楽派といった新しい和声感覚、おそらく自国の民謡によるものも含むであろう「異質さ」をそうと感じさせないように浸透させている。無茶苦茶達者なチリンギリアンの力量もあるかもしれない。とにかくメロディーが強いマキュアンの作品だが、一本でソリスティックに弾きまくら無ければならない場面がひんぱんにある。これがまた魅力的ではあるのだが、その技巧的なフレーズの中にも細かい表情の機敏が汲み取られ難無く弾き熟されている。いや凄い。けして若書きではなく円熟した作品なので、これで楽しんでください。

マキューアン:弦楽四重奏曲第13番

○チリンギリアン四重奏団(CHANDOS)CD

個性が時代性を呑み込んで昇華された佳作。古典的な4楽章構成をとり内容的にも国民楽派が同時代的に進化しただけのようなところはあるが、まずは聴いて単純に楽しい。発見もある。ドビュッシー後の弦楽四重奏曲の世界の変貌というのを如実にあらわした作曲家が多かったイギリスではあるが、ここまで旋律的で面白い曲に結実させられている人というのはそうそういない。RVWですらどんどん希薄な作品になっていったのだから。といってもRVWの習作弦楽四重奏曲と似たようなところはあり、そういうところがメジャーになれない折衷性なのだろう。楽団はこの難曲を激しくやりきっている。

マキューアン:弦楽四重奏曲第6番「ビスケー」

○チリンギリアン四重奏団(CHANDOS)CD

結局全集にはならなかったのか。数はやたらと多いマキュアン。フランスの風物を描くといいながらドヴォルザーク風の民謡音楽で始まり、主として和声面でモダンさを持ち込んで行くミスマッチさが魅力。内声から調えるハーモニーの正確性、細かい動きの的確さが求められる難曲であり、チリンギリアン四重奏団くらいの円熟した腕がないと聴かせるのは無理だろう。解釈的にはより旋律的でロマンチックな音楽としてとらえ、古臭さが勝ってしまう感もある。ワグナーからドビュッシーといった先進的な響きに色目を使い、目まぐるしい転調に鮮やかさな色彩感をかもす場面はあるが、借り物感もなくはない。○。

マキューアン:タイムの香る地にて

○アラスディア・ミッチェル指揮LPO(CHANDOS)CD

これまたRVWがウェンロックの崖あたりに加えてそうな曲だがじっさい曲もRVW的。ただもっと身近で「ちゃんと書かれた曲」感がある(両義的な意味で)。美しくたゆたうようなイギリス音楽が好きな向きはぜひ。演奏達者。

マキューアン:ヒースの丘

○ウェルシュ(Vc)アラスディア・ミッチェル指揮LPO(CHANDOS)CD

これは佳作。RVWあたりが書きそうな題名だが弦楽器を単独で鳴らすのが得意なこの作曲家らしくチェロソロを効果的に使って荒涼とした、でもどこか暖かな風景を描き出している。RVWくらいには印象派的でありその点でも期待していい。演奏もまたいい。何より、この作曲家はメロディである。ソルウェイよりこちらのほうが聴きものかもしれない。

マキューアン:交響曲嬰ハ短調 「ソルウェー交響曲」

○アラスディア・ミッチェル指揮LPO(CHANDOS)CD

島嶼系作曲家として知られるマキュアンだがこれはスコットランドとイングランドの境界にあたる風光明媚なソルウェイのあたりに焦点を置いた、陸地系の曲。
参考:http://pedia.mapion.co.jp/art/%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4%E6%B9%BE
マキュアン代表作のように言われるいわば表題的な交響詩だが(マキュアンは交響曲を何曲も書きはしたが一般的にはこれが唯一の交響曲とみなされる)冒頭よりよく鳴る交響楽に余り達者ではないが前時代的なロマンティックな音楽のやり方を踏襲した構成感は、時代がら印象派の影響がもう少し出てもいいのではないかと思わせるところがあり、それを期待した私は少しあてがはずれた。表出力が強いし持ち味として旋律が強いので、聴き易いし、2楽章あたりではとくに鮮やかな転調の連続がワグナーともドビュッシーともつかないカラフルな印象をあたえ印象的だが、これもマキュアンのいつものやり方なのかもしれない。3楽章制なのにけっこうなボリュームがあるので、体力のある時に聴くといい。LPO達者。指揮者も並みではない。○。

マキューアン:弦楽四重奏曲第2番(6もしくは8番)「ビスケー」

○ロンドン四重奏団(M&A)1951/3/2live・CD

この楽集(LSQ図書館ライヴ集)の目玉だと思う。イギリスの楽団がイギリス近代をやると音色的にしっくりくるが、スコッツマンであるマキュアンの民謡に基づくこの作品(8番として出版され6番として知られるがここでは2番とされており現在も盤によって表記が異なるという大混乱)、古風な国民楽派のフォーマットを踏みながらも横溢する独特の音形(このての個性を「知られざる作曲家系」で見出すことは私は稀である)とこの年代(68年生まれ)の作曲家にしては和声的と言う点で明らかに英国群小作曲家とは違うものを持っている。晩年シェーンベルクすら取り入れたというから貪欲だ。とはいえしょせんアマルガムといえばそうだし問題はある。陰鬱な始まりの1楽章はファーストだけが魅力的な旋律(民謡的ではない)をろうろうと歌い、他は刻む。印象としてはヤナーチェクだ。2楽章も出だしは陰鬱なのだが突如明らかなドビュッシーが投入され頭を洗われる思いがする。3楽章はこのために聴いてきたんだというような素晴らしいヴィバーチェで民謡を活かす手腕に胸がすく。移調転調の鮮やかさ、個性的な旋律の魅力、まあ、よくぞまあ、埋まっていたものだ。もちろん楽団のやる気によるところも大きいが。あと、これはアマチュアはやりたがらない類の書法で、繰り返すがファーストばっか目立ってアンサンブルとして楽しめるところは3楽章ぐらいだと思うので(それは19世紀までの国民楽派弦楽四重奏曲の特徴でもある)、仕方ないかも、とも。もっと聴かれていい作曲家であるので、とくに平凡な民謡音楽は嫌だが新しいのも聞き飽きたという人におすすめ。ところで、ビスケーとはビスケー湾のことである。この作品も各楽章にフランス語の題名がついている。1楽章が灯台、2楽章が砂丘、3楽章が牡蠣掻き。民謡って、スコットランド民謡じゃなくフランスのものなのだろう。1913年の作品。
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