カプレ:赤死病の仮面

カンブルラン(hrp)プレートル指揮モンテカルロフィル(EMI)CD

通常室内楽編成で演奏されるがこの弦楽合奏版が原型で、前者はConte Fantatastique(幻想的な物語)と副題される。ドビュッシー風の音楽に強いアクセントを加えて(多分にハープの低めの弾音に依るが弦楽合奏版だといっそう押しが強くなる)、ストラヴィンスキー風の異化はされず巧く品を保ったまま、舞踏会の典雅な光景に毒を混ぜてゆき、シニカルに爆ぜるさまを描写している。正直音楽としては室内楽版のほうが楽想に対しバランスが良く耳に優しいが、ポー劇としてはこのくらい押し付けがましい方がいいのかもしれない。これは比較対象がすくないので評しづらいが、ハープの野太い音と合奏の力強さが印象的な演奏。
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キャプレ:赤死病の仮面~E.A.ポーの幻想的テキストによる

◎F.スラットキン指揮コンサート・アーツ管弦楽団、M.ストックトン(hrp)(capitol)

テスタメントのシリーズでCD化されているかもしれない。とにかく迫力の演奏である。分厚い弦楽合奏の筋肉質な働きによるところが大きいが、多少幻想的な意図のあるハープの挿入も冒頭以外ではかなりギタリスティックな効果と化けているところがあり、まあ、原作の雰囲気がこんなにアグレッシブで前向きに明るいものではないにせよ、合奏曲としての純粋な音楽的興味は惹かれる。テキスト設定は個性的だが内容的には決して個性的でもない、同時代のハープを利用したフランス楽曲の一つと言ってしまえばそれまでだが、しかし、ここにはほんとに赤くなり死んでしまうアグレッシブな病がこれでもかと猛威を振っている。しかも邪悪じゃない、ビリーのように明るくアグレッシブだ。アメリカだ。でも、はっきりいってアンサンブル曲としてこういうリアルな描き方、面白いです。◎。

キャプレ:幻想曲「赤死病の仮面」


◎ラスキーヌ(HRP)ヴィア・ノヴァ弦楽四重奏団(ERATO)CD

アカデミックでロマンティックな場所からドビュッシーの薫陶をへて、更にルーセルにも似た神秘主義的作風にいたった頃の名作である。生徒でも友人でもあった評論家カルヴォコレシがその化け具合、ドビュッシイズムからも離れた孤高の境地に強く惹かれた、一連のハープと弦楽器のための作品群の頂点ともいえる。ドビュッシーとメシアンのミッシングリンクというライナーのくだりは日本盤CDで訳されているだろうか。指揮者としても国内外で評価を勝ち得ていたキャプレは、シェーンベルクの管弦楽のための五つの小品をフランス初演したことからも伺えるように(フランスは早くからシェーンベルク受容の進んだ国であったが)常に前衛的な新しい音に興味をいだいていたことは間違いない。ドビュッシーの影響は残るが、活動的には早いうちに離れたことからも、先進的なキャプレの移り身の速さ目先の鋭さを伺うことができる。最終仕上げを手伝った聖セバスティアンにも神秘の要素はあるが、シェーンベルクからの影響を受け更に「月に憑かれたピエロ」に先んじた技法に至る(別項の七重奏はドビュッシーの無歌詞歌唱の器楽的用法からシェーンベルクの確立した朗誦法までの間に生まれた作品として注目される。キャプレが長生きしていたら室内作品でも大成したことだろう、その手法は一見単純素朴だがそのじつ精緻で無駄のないかつ個性的なものだ)、当時としての極北を進もうとしたこの作曲家が、志半ばで頓死したことは返す返すも残念である。

これはポオの本にもとづく。亜麻色の髪に蒼い顔のキャプレらしい不健康さがある(指揮をよくしたことからも人間的には快活だったようだが)。ゴシック・ホラーな場面から始まり(独特、だが美しさの範疇からは決して出ない)、カルヴォの言葉を借りればまさに「きびきびしなやかに」自然な場面転換から、非常にドビュッシー的なハープのリリシズムに、生来のロマンティックな弦楽器の音線(旋律の形にはならない)を絡め、時折ゴシックホラーなハーモニーやモダンなパセージが絡まるものの、おおむね精密に選ばれた音の動きや単純なアンサンブルにより、徒に難しくすることなく、バレエ音楽的なイマジネーションを掻き立てる耳馴染みのよい作品になっている。カルヴォはディーアギレフのためにバレエ改作を勧め断られているが成る程バレエになりそうだ、しかもそれまでにない怪奇な。楽器を叩く音や、末尾の神秘も極まるハープの繊細かつ不可思議な動き(ローマ賞で打ち負かしたラヴェルの操る器械的な響きに寧ろ接近している)など、劇伴的ではあるが、この超名盤の取り合わせ、とくにラスキーヌの有無を言わせぬ美質を備えた完璧な表現力をもってすれば他に何もいらないと思えてくる。私はこのLPではじめてヴィア・ノヴァを知ったのだがこれこそ「フランス的」なるものかと膝を打った記憶がある。他にも長いキャリアでいろいろやっていて来日もしているが正直、この盤の印象を凌駕するほどの完成度を感じたことが一度として無い。これはハープがとどのつまり主役なのであり弦楽器は賑やかしなのだ。

何が言いたいかというと、◎以外に思い付かないということである。下手な演奏聞くならこれだけ先に聞いておいたほうがいい。曲のイメージがここまでクリアに描き出された演奏はないから。録音も透明感があって柔らかなステレオで素晴らしい。

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キャプレ:無歌詞女声と弦楽による七重奏曲

○ルイ・オーベール指揮カルヴェ弦楽四重奏団他(LYS)CD

非常に魅力的な印象派ふうのフレーズから始まる透明な美感に溢れた曲だが、曲の中心がSQによるがゆえに曖昧なままの音楽にはされず、序奏の激しい刻みに象徴される剥き出しの音楽には明確なフォルムがあって、寧ろ前期RVWを思わせる。ドビュッシーよりはラヴェルに近いのかもしれない。コード進行からはドビュッシーのうつろいを感じるものの、音楽はよりリアルで技巧的だ。カルヴェQの非常に美しい音色がかなりプラスに働いており清々しいロマンチシズムがそこはかとなく漂う。欠点のない素晴らしい曲だが逆説的にひっかかりがないとも言えよう。しかしこのフランス近代好きをのけぞらせるような憎い編成といい、看過したら損します。歌声も懐かしい。カルヴォコレシによれば1909年に創作されたこの作品はまだ戦争に行く前の一連の美しい室内作品の一角をなすもので、年上の弟子で友であったこともあった彼は、女声の器楽的用法などの独創性と可能性を高く評価していたが、その方向には本人は余り興味がなかったようだ。この作品も生前には出版しなかったようである。
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