バックス:交響詩「ティンタジェル」

グーセンス指揮新交響楽団(HMV/dutton)1928/5/17,23・CD

グーセンスは戦前戦後アメリカでのオケトレーナー(シンシナティ)及び作曲などの活躍があまりに有名だが(コープランドに代表作「庶民のためのファンファーレ」を依頼し太平洋戦争開戦に際して兵士の応援とした)イギリス音楽にも特別の思い入れを感じる。これはダットンがレストアし過ぎて堅い音色過度な残響によりSP復刻の悪例を示しているが、グーセンスのイメージに無い色彩性や穏やかなドラマの演出ぶりがストコフスキーなどと違う、音詩への的確な理解ぶりをアピールしており、半音を行き来する揺れっぷりはまさにディーリアスのようにきこえ、バックスの代表作としての魅力をよく引き出している。
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バックス:交響詩「ティンタジェル」~フィナーレ

○ストコフスキ指揮BBC交響楽団(SCC)1954/5/7・DVD

ダイナミックな抜粋演奏で、最初と最後だけ指揮姿が映るがあとはティンタジェル城や海辺の風景。レクチャーコンサートの形式をとった白黒テレビ番組の録画である。既に老けている顔のストコフスキーだがカラヤンをすら思わせるカッコのいい指揮姿、映像状態は悪いが音は酷いという程ではなく映像があれば聴けるレベル。フィナーレだけとはいえ曲の要は押さえた演奏なので、十分楽しめる。オケもいいのだろう。○。

バックス:ヴィオラ・ソナタ

○ターティス(Va)作曲家(P)(pearl他)1929/5/27プライヴェート録音・CD

pearl GEMMがLP時代に発掘したテストプレスのSP音源で、これが唯一のターティスの同曲録音である。緩急緩の三楽章に明確に性格分けされ、バックスらしい晦渋さと暗い夢が交錯し、総じては「怒れる曲」のように聴こえてくる。ヴィオラという楽器の特性を活かした書法、それを自在に演ずるターティスの腕は、テストプレスで終わってしまったのが不思議なくらい完成度が高い(バックスのピアノは曲に沿ったような感じ、でも下手ではない)。プリムローズと比べればミス(か指のすさび)が僅かにある点落ちるかもしれないが、楽曲の激しい魅力を伝える力は上かもしれない。ヴァイオリン的なプリムローズの音にくらべてまさにヴィオラの深い音色、とくに低音域は美しい。○。

バックス:オーボエと弦楽のための五重奏曲

○L.グーセンス(ob)インターナショナル四重奏団(NGS/oboe classics)CD

グーセンスの依属作品でオーボエ協奏曲的な側面が強い。冒頭のオーボエソロのオリエンタリズムにはびっくりするがその後フランスっぽい雰囲気も併せ持つ民謡風メロディの親しみやすさとディーリアスを思わせる妖しげなハーモニー進行にはイギリスの近代音楽特有のものが現れていて面白く聴ける。RVWなどに比べて複雑なバックスなりの書法の新鮮味があり、弦楽の扱いが若干下支えのハーモニーに徹するような部分も多く見られるものの、アンサンブルとしての面白さは諸所にある。グーセンスは軽やかに上手い。ラヴェルの録音でも知られるインターナショナル弦楽四重奏団もそつなくこなしている。NGSのSP録音でも優秀な演奏記録だろう。○。

バックス:交響詩「ティンタジェル」

○エルダー指揮ハレ管弦楽団(ho)2005/11/3・CD

アーサー王伝説で観光化されたティンタジェル城を極めて描写的に、また「即物的に」描いた代表作である。個人的印象ではこの個性的とは言い難い、ケルト旋律とワグナーを「アーサー王と関係するということで」直接的に引用し、前時代的なロマンティックさを固持しすぎており、ダイナミックな音表現も波濤や崖の視覚的印象そのまんま、といったところでバックスが交響曲でやったような晦渋で特徴的な表現はここにはない。この演奏は透明感は余りなく、最初は往年のハレ管を思わせるドガジャンとした響きで一流ではないオケとの印象をあたえるが、構造は見えやすく楽曲理解はしやすいと思う。エルダーはまずまずといったところか。○。

バックス:ファンドの庭

○ビーチャム指揮RPO(SOMM)1949/3/30BBCスタジオ・CD

ディーリアスの夜明け前の歌などを彷彿とさせる交響詩だが、より規模が大きくワグナー的なブラスがディーリアスとはかなり違う。和声の繊細さについてはむしろドビュッシーの方かもしれない。バックスの代表作である。これは放送用録音のようだが音が悪く、雰囲気を損ねる、ないし変えてしまっている。ビーチャムの力強い推進力はRPOの持ち味である透明感を損なうほど。演奏はこなれておりその点では心配無い。

バックス:交響曲第2番

○リットン指揮ロイヤル・フィル(放送)2011/8/16プロムスlive

後期RVWを思わせるモダンなひびきと抒情性を兼ね備えた曲で三楽章制の立派な作品。演奏がなかなか素晴らしく、リットンを久々に聴いたがロイヤル・フィルの明るくやわらかい特質によって曲の陰りを抑え聴きやすくしている。なかなか。プロムス特有のブラボー。

バックス:弦楽四重奏曲第1番

○マリー・ウィルソン四重奏団(NGS)1930/4/15-16・SP

この時期の録音特有の奏者のぎごちなさ窮屈さはあるものの、曲紹介には十分な演奏ではある。バックスは技巧的な表現を駆使することがままあるが、この曲でもファーストは酷使というか名技性を発揮させられる。何せ1楽章なんて殆どボロディン2番とチャイコのカルテットを混ぜて英国民謡で換骨奪胎したような曲だし、スケルツォなんて殆どドヴォルザークのアメリカなので(強いて言えば全曲そうなのだが)ファースト偏重傾向や構造的な限界を感じさせる。とはいえバックスの特徴はそこにウォーロックや(当たり前だけど)アイアランド前期のような前衛的な要素をスパイス程度に絡めてくるところで、この作品ではまだまだドビュッシーからしか「採集」できていないような感もあるが、東欧からロシアの国民楽派室内楽が中欧の影響を払拭しきれず鈍重さや野暮ったさから脱却できなかったのと比べては、軽く美しい印象をのこし、前進することに成功しているように思える。RVWのように露骨にフランス罹るのでもなくディーリアスのようにハーモニー頼りのややバランスの悪い民謡室内楽に仕上げるでもなく、特有のものの萌芽を感じ取ることができる。演奏の無難さと録音状態から無印でもいいんだけど○。

バックス:幻想ソナタ

○ジェレミー(Va)コルチンスカ(Hrp)(NGS他)1928晩夏

これも正規のネット配信が始まっているが、ヴィオラ集の一部としてCD化されたことがあるようだ。非常に美しい曲ではあるが、前半2楽章はどうしてもドビュッシーのトリオソナタの影響を払拭しきれない。旋律に民謡を取り入れたりRVWふうの単純な音形やイベールふうの感傷的な表現によって、ドビュッシーの神秘的な世界から世俗的な脱却をなそうとしているようには感じるものの、いかんせんそのまんまな音ばかり使われては・・・といったところ。だから逆にドビュッシーの同曲が好きな向きはとても楽しめよう。後半は世俗性が増し民謡的な部分やロマンティックな重さも含めバックスらしさが(それが良いとも言えないが)出てくる。しかしこの曲にもまして印象的なのはハープ!SPならではの硝子のような響きがその原音に迫っているかのよう。深く透明な音で、ヴァイオリンのニスのような渋茶を奥底に覗かせながら、フランス派とは少々違った古雅な趣を醸している。楽器自体違うのかもしれない。古い音だ。ヴィオリストはヴァイオリンと聴きまごう音だがこれはこれでよい。◎にしたかったが録音状態が悪いので○。

バックス:ヴィオラ・ソナタ

○プリムローズ(Va)コーエン(P)(DOREMI)1937・CD都会的な趣をもつピアノと民謡調のしらべをかなでるヴィオラのハーモニーが印象的な、イギリスの作曲家アーノルド・バックスの佳作のひとつ。バックスには珍しく難しいパッセージも晦渋な雰囲気もなく、ここでは二人の名手によっていくぶん感傷的な音世界が繰り広げられている。ヴォーン・ウィリアムズと比較される事があるが、どちらかというとウォルトンの室内楽作品を感じさせるような所もあるし、旋律構造やピアノ伴奏にはドビュッシーからの顕著な影響がみられる。強烈な個性は余り感じないが、連綿とうたわれる旋律やちょっと特殊な伴奏音形には魅力があり(傾倒していたアイルランド音楽が引用されているらしい)、ロマンティックな中にも近代的な作曲手法が施されたバックスならではの世界を堪能できる。27分弱というかなりの大作であるが、全般にゆっくりとした箇所が目立ち、「アレグロ」とされる部分でもさほどスピーディではない。名技性より音楽性を重視した曲作りは結果としてかなり聴き易い音楽を産み出しており、この点バックスの曲にしてはわかりやすいという印象を与える。バックス入門盤としては適切であろう。コーエンは洗練された手さばきで「イギリスの印象主義音楽」をそつなくかなでている。プリムローズにかんしてはもはや何も言うことはあるまい。少々ヴァイオリン的な明るい響きが快く耳朶を震わす。テクニックの必要な曲ではないが、それでもこれだけ印象的な音楽をかなでられるというのは20世紀のヴィオリストを代表する巨匠にして可能となったものであろう。感傷的な雰囲気が何ともいえない、この曲を聴くには最適のソリストだ。名演。 ,

バックス:交響詩「ティンタジェル」

○マリナー指揮ミネソタ管弦楽団(MO)1985/9/27live・CD

雄弁な調子のリヒャルト的作品だがマリナーはこういう曲だとまた室内楽団相手とは違ったスケールの大きな演奏を行う。ただ威容を誇るだけではなく、しなやかな表現にたけ、なめらかでごつごつしないところがイギリスの楽曲にはあっている。少し古風でエルガー的なところもある曲だが、ロマンチシズムが決して臭くならずすがすがしく響く、アメリカオケ相手でも表現にいささかの変化もない。とても美しくしっかりした演奏。
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