猫の子供たち

キャットウォークしながらつら書きしているわけですが、ありていにいって、まぁ質の悪いクラヲタ(クラシックマニア用語で「クラシック音楽おたく」のこと。自虐的に利用され、彼ら(我等)の間でしか通用しない)なら誰でも知ってるあの古参bbs(表向廃止)の思い出である。ネットでは滅多に目にしなくなった名だが、びっくりするようなところで目にすることがあった。うーん、と思い出してしまった。

無知なのは自明な自分であるが特につとめて無知であろうと振舞っていた場である。ネットがまだ強い奇臭をはなっていた時期で、世界が狭かったいっぽう、プロモーションの場として金払いのいいヲタのサークルにリーチしやすく手っ取り早い安価な所とみなされていたこともあり、プロのけっこう有名な人も関係したりしていた。荒れた時期もあったようだがよく覚えていない。既に自分の場を持っていて、常駐が必要だったわけではないので・・・たまにあほな初心者的質問をして、変な議論に曲げられない率直な情報を貰っていたくらいである。

だがまあ、けっきょく「匿名掲示板」なのである。子供の暴言が頻発しだし、ヲタの中でもセグメントが細かく分かれ互いに閉鎖的になり、かなりの常駐者が離れたのち、末期は登録制という「名目」をもっていたが時すでに遅し、内容的には既に枯れていた。そのころ出入りを始めた者は幸いである、誰にも怒られず、そのかわり誰からも情報を貰えない、ただ「独壇場」を作れたのだから。私は滅多に書かなかったが、余りに情報量が減り堂々巡りの惨状を目にして、いっそ吹っ掛け、予定調和にキレて登録抹消してもらった(といってもたんに登録自己紹介と発言を消してもらっただけであるが)。パソ通の時代から覗いていた場所の末裔だし、最後っ屁のつもりだったが、屁の香りも消えぬままbbs自体が消滅するという状況にはいささか驚いた。

その名をほんとに目にしなくなったなあ、という思いがあっただけにちょっと「懐かしくはないが」びっくりしたので、挿話にあげてみた。ベトコン終楽章のフラジオの話は、私のたくさんあるどっかの場に一応情報を挙げているので、まあ、ちょっと調べればわかる話なんだけど、興味のあるかたはキャットウォークしてってみれば見つかるかもね。

情報には信頼関係か、対価が必要である。信頼関係を築かずに且つ対価を支払わない者は無言で自分の労をとるべし。

なんて、ほんとたいしたこと調べたわけじゃないけどねえ。

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ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

クーレンカンプ(Vn)シューリヒト指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(archiphon:CD-R)1947

SPからの単純な板起こしらしいが正体不明。継ぎ目があからさまでちょっとどうかという質。演奏自体は部分部分でじつに出来がバラバラで、もともとバラバラつぎはぎ演奏だったのだろうか?冒頭など重々しくいいかんじで始まるものの、3楽章の技巧的なフレーズで思いっきりよたっていたりムラがありすぎる。シューリヒトは「ドイツ臭い」感じでそれはそれでずしりとくる演奏ぶりがこのイタリアンな曲には特異さをおぼえさせ面白いが、いささかデジタルなアーティキュレーション付けが人工的に感じられる。クーレンカンプはいい音を出したものだが戦後は・・・うーん・・・無印。

ショスタコーヴィチ:交響曲第7番

○マキシム・ショスタコーヴィチ指揮プラハ交響楽団(SUPRAPHON)CD

長い曲ですが、敵の鼓笛隊を意味するキッチュな主題のボレロの模倣でシュワルツェネッガーと宮沢えりが踊るだけではない、ショスタコがほんとに切羽詰った状況で、頭でっかちの主義主張ではなく、純粋に苦境の人民を鼓舞しレニングラードを内外の精神的に守りきった内助たる記念碑的な意味の篭められた曲。曲の「前衛的」評価については後からは何とでも言えるが、エリヤスベルグが生き残り逃げ残りのオケマンを集めてナチの包囲下で初演した、スコアはマイクロフィルムにされ大陸横断鉄道から海路をへてアメリカの反ファシズムの名指揮者トスカニーニの手で国外初演された(録音もされた)というまさしく第二次世界大戦のドキュメントに他ならない。しかし時代は遠くなった。ソヴィエトにおける新しくまとめられた全集の一枚であるこれは最近のCD実売価格の趨勢からしてボックスとしてはやや高値。堅実な、硬めの指揮ぶりで息子ショスタコらしい入り込む様子のない客観的な演奏だが、いっぽうで録音もよく壮大さがかんじられる。強い印象は残さないが変なアクのないところは聞きやすく、適度に重い演奏は終楽章まで一貫した調子を維持し、それによって壮大なクライマックスを築き上げブラヴォの渦を呼んでいる。スタンダードな演奏として薦められる。

ダンディ:フランスの山人の歌による交響曲(交響曲第1番)

○ダレ(P)ヴォルフ指揮ラムルー管弦楽団(TIMPANI)1932初出・CD

アルベール・ヴォルフは比較的新しい指揮者だが録音を余り出さなかったため現在知られていないのが残念。だがこの即物主義的な指揮ぶりはパレーに近い強靭さを伴い一部のマニアには受けると思うのだが。ところでこの古い音でもラヴェル同等の聴感の新鮮さをあたえるとはダンディ、やっぱりなかなかです。無理のない構成感とリズムに和声変化がじつに心地よく、ドビュッシー初期にも影響をあたえているのだなあ、と思ったりもする。この録音は但しヴォルフの常で基本的に直線的ではあり、オケとソリストの古風だが楽しげな響きに助けられている部分もあるか。スピーディな演奏は好きなので個人的には○。

レスピーギ:ローマの松

ストコフスキ指揮アメリカ交響楽団(DA:CD-R)1969/11/23live

最初からのんべんだらりとした拡散的な演奏で集中力がなくただ明るくて響きだけ派手。表層的と言われても仕方のない印象だが、録音のせいだろう、ストコの広がりのある音響空間を再現するのに昔のステレオエアチェックではこの聞こえ方は仕方ないか(松はバンダまで入れてそもそも音響空間的発想を取り入れてやることが多いわけで)。アッピア街道までわりと遅めのインテンポで進み派手に散漫に終わる(ように聞こえる)のだが、客席はブラヴォ拍手喝采の渦。うーん・・・生きているうちに聞いておきたかった、ストコの松。。


ドビュッシー:三つの交響的エスキース「海」

○ミュンシュ指揮シンフォニー・オブ・ジ・エア(NBC交響楽団)(M&A)トスカニーニ追悼1957/2/3live・CD

M&Aが何とトスカニーニ追悼演奏会の全プログラムCD化という快挙だったが、やはりM&A、音質はイマイチ。DA並み。しかしまあ、いつものミュンシュというか、いつもの外様オケを振るミュンシュと言ったらいいのか、荒い。どうにも彫刻が粗雑で、オケの堅い響きを取りまとめずにただ力で押し切った感じが「いつものミュンシュ」の範疇を出ていない。追悼色があるとすれば、あのうねるような感じ、異様なクライマックスのルバートがやや抑え気味で、トスカニーニの単刀直入指揮を意識したような感じがしないでもない。だからだろういつもの異常なブラヴォ拍手喝采もない。○にはしておくが、ミュンシュの海は別にこれでなくてもいいだろう。

ホルスト:組曲「惑星」、冥王星(マシューズ作)付

○ロイド・ジョーンズ指揮ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団(NAXOS)2001/2・CD

無難な演奏。しかし悪くはない。スコティッシュ管らしいちょっと硬質でささくれだったような音も録音のやわらかさによっていかにもイギリスらしい柔軟な音にきこえる。しっかりした指揮ぶりではあるもののいささか無個性さがあって、個々の楽章のコントラストもいまひとつ。演奏レベルは高いと思うけど。。ちなみに蛇足の冥王星は作曲されてまもなくあっというまに太陽系の惑星から除名されてしまったが、アイヴズをリゲティふうに仕上げたような変な曲。スクリアビンのプロメテあたりに近い合唱が奇異さを煽る。もっと小さい星でしょ、だから除名されたのに。

ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第2番(ロンドン交響曲)

○ヘンリー・ウッド指揮クイーンズホール管弦楽団(DECCA,DUTTON)1936/4/21-22・CD

ドラティのような職人的指揮者の演奏にきこえる、さすがウッド卿といった颯爽とした演奏振りだが、どうも叙情的な場面になると表現がリアルで音も硬く、録音が旧くて仕方ないとはいえやや入り込めない。序奏の終わりを告げるビッグ・ベンの響き(これを「学校のチャイム」と表現するやからは日本にしかいません)もハープの金属質な音が近くて幻想味を失っている。しかしそこからの「オペラ座の怪人」にパクられた劇的な主題からの展開は素晴らしくリズミカルで力強い。この時代の指揮者そのもの、クーセヴィツキーやトスカニーニなどを彷彿とさせるスピードとテンションに、イギリスオケならではの適度な規律正しさがまたかっこいい。異様なハイスピードぶりは他の楽章でも聞かれるがSP録音特有の事情によるものかもともとそうだったのか、多分後者だろう。レント楽章が精彩に欠けるのはRVWを本質的に理解していなかったのか録音のせいかはたまた職人的処理の対象としてしか扱っていなかったのか、ボールトとは違ったブラームス臭さを感じさせる中低弦も特徴的である。エピローグの最後、一日の終わりを告げるビッグ・ベン、こちらのほうは冒頭よりやや遠く幻想味を醸しているが、後奏は何かよくわかっていないようなブラームスっぽい感じでいただけない。ラヴェル要素を抜き去りブルッフだけにされたようなRVW、といったら言い過ぎだが(1楽章の現代的なスペクタクルなど素晴らしいし)、この時代にはまだ、こういう表現しか受けなかったのか。○。

ヴォーン・ウィリアムズ:グリーンスリーヴス幻想曲

○ヘンリー・ウッド指揮クイーンズホール管弦楽団(DECCA,DUTTON)1936/4/22・CD

グリーンスリーヴズといえばRVWの編曲によるこの抜粋曲をさす、しかしウッド卿による演奏はグリーンスリーヴス「ではない」中間部主題を異常に強くスピーディに扱ってコントラストをつけており、SP録音特有の金属質の響きとあいまってやや、情緒的に足りない感じも受ける。もともとトスカニーニやビーチャムのやり方に近いものを持っている指揮者なだけに、RVWのしっとりした抒情とは本質的に相容れないものがあるのかもしれない。中間部が引き立った特異な演奏として○にはしておく。

ヴォーン・ウィリアムズ:タリスの主題による幻想曲

○シルヴェストリ指揮ORTF(vibrato/SUNJAY:CD-R)1966

20世紀に生み出された最も素直に情緒深く、優しい優しい曲・・・それにしても何という彫りの深さ!冒頭より陳腐なまでに引き伸ばされる音符、しかしいずれの楽器も明るくリアルな硬質の音、それと指揮のルバーティッシモな伸縮・デュナーミク変化の慟哭、アーティキュレーション付けの極端さのミスマッチ、いずれも「シルヴェストリ!」という強烈な存在感を示している。曲が室内楽的な部分を多分にのこし鄙びたひびきで決して踏み外したロマン性を発露させないものであるために、可笑しさは余り感じないのだが、この曲をよく知る者には奇演と聞こえるかもしれない。兎に角ダイナミックすぎる。・・・でも、知らない者は、これ以外聞けなくなる恐れもあるのだ。こんなに哀しく美しい曲をこの前衛の時代に何故書けたのか、と思わせる名曲、しかもRVWにとっても特異なくらいの深みを示している名曲、それをこうもデフォルメされるとまた違った側面も見えてくる。原典主義など何のその、そもそもが主題流用の擬古典を目した曲じゃないか、というシルヴェストリの声が聞こえてきそうだ。どうもドイツ臭い太筆描きの表現が気になるところもあるが、RVWファンでも一聴の価値はある。ただ、初心者が最初に聞くのはどうかなあ。○。こんなにフレーズの一個一個にあからさまに意味を持たせた演奏は初めて聴く。バルビもたしかにそういう方法をとっているが、もっと滑らかで自然だ。RVWの曲が映画音楽と揶揄されるのもこういう演奏なら納得いくなあ。それにしてもほんとに、こんなに引き伸ばされた音符で始め、また締められる演奏初めて聴きます。


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モーツァルト:フリーメイソンのための葬送音楽

○クレンペラー指揮ハンガリー放送管弦楽団(archiphon:CD-R)1948/11/2ブダペストlive

重くロマンティックなくぐもりの感じられる演奏ぶりでこの曲を幾度となく演奏してきたクレンペラーの他録と余り違いは感じられない。オケもしめやかに比較的押しは弱いがはっきりした表現で、指揮者に任せているのがわかる。○。

ガリベン!の問題

勉強になるなあ。骨伝動で音を聞いたベトの話は改めて身につまされるわー。


つかあのフラブラ偽通の小芝居だけはゆるせん。ルーのイタリア語版みたいなアホ丸出しな。。まー、狙いだろうけど。


品川まじですげえ。

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マーラー:交響曲「大地の歌」


○クレンペラー指揮ハンガリー放送管弦楽団、レスラー(T)シャーンドル(A)(archiphon:CD-R/MEMORIES)1948/11/2ブダペスト放送live・CD

2017/1に他の録音とまとめてMEMORIESより廉価CD化。同盤はこの音源のみがCDフォーマット初出(私個人の記録上歌曲の歌手情報が混乱しているがMEMORIES盤については販売代理店に特記がないので確実に既出と思われる)。大地の歌の表現者としてはマーラー直系のワルターとともに双璧をなしたクレンペラーの驚愕のライヴ記録である。このときの放送スピーチ内容がシュトンポア編野口剛夫訳「クレンペラー指揮者の本懐」春秋社1998に収録されている。推して知るべしな音質ではあるがリマスター状態はよい。録音エアチェックなのだろう、歌手がマイクを通したように生々しく捉えられオケはやや引きで聞こえるが、前半楽章はクレンペラーの気合の掛け声と劈くような切り裂くような響きが圧倒する。気になるのはテノールのハイの出なさで、音痴で非力と言ったほうがいいくらい(それでもこれ見よがしにオペラティックな表現をとったりするのがまた。。)、もう1楽章から別の意味で酔ってしまうような感じだが、ソプラノはパワーも表現力も中堅どころマーラー歌いのレベルは十分に果たしている。そして何よりクレンペラーだがまだ戦前ベルリン時代の即物的な表現様式を高速インテンポという方法で維持している。しかしオケが素晴らしく感傷的である。クレンペラーが指示しているのだろうが(ライヴですし)大づかみには即物主義にもかかわらずよくよく聞き込むと実に細かい繊細な表情が諸所に付けられており、微妙なテンポの揺れを最大限に活かし音楽的に、じつに音楽的に、ワルターすら陳腐に落ちるとしたクレンペラーの確信的な表現が、落涙すら辞さないほどに絶妙の煽り方をして身を惹きつける、とくにやはり、「告別」だ。堅牢とした構造を最後は美しく、号泣にも落ちず昇華もせず、ただ、ひたすらに美しい。それが二次的に「悲しい」のである。速度についていけない部分もあるにせよオケは立派にマーラーオケとしての役割を果たしている(多分にオケ自身がノせられ過ぎて勝手にソリスティックな細かな動きを突っ込んでしまった要素が強いが)。クレンペラーの過酷なトレーニングもあったのだろう。しかし・・・ほんとに素晴らしい記録が出てきたものである。オケにはシューリヒトの旧いACO録音を思わせる生気がやどり、指揮にはさすがにライヴなこともありマーラーにどうしても共感せざるをえない部分も残しつつも、慄然とした「これはクレンペラーである」という筋の通った表現、これらの総合が実にバランスがとれている。このすぐのち50年代というとVSOとの不遇時代だが、VSOの録音が単なるクレンペラーだとすれば、これは「クレンペラーとマーラーの対話」である。ちょっとしばし、考え、沈んでしまった。こんな演奏に出会うことは滅多に無い。クレンペラーは、例え奇人で厭な大男だったとしても、稀有の芸術家であった。不遇時代とて例外ではない。これほどの指揮者に、今後我々は出会うことができるのであろうか?歌唱の不調と録音の不備でやむなく○にするが、告別一曲だけで私は◎をつけたく思う。他の楽章も素晴らしいのだが。。クレンペラーが告別で鼻歌、なんてのを聴くことができるとは。「永遠に」主題の最初の出現のときのマンドリンがなんとも涼しげで憂いがあって・・・

モーツァルト:セレナーデ第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」~Ⅳ

○フリード指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団(arbiter)1927・CD

ロンドだけの録音で、フリートとは関係の深いベルリン歌劇場オケとのものである。フリートの古典指揮は速くて揺れない。古典は古典としてそういう客観的なやり方をしたのか、SPの録音時間を意識したのかわからないが、厳しい律しぶりが聴いて取れる。音は悪くても演奏は新しい様式なのでなかなか聴ける。○。

モーツァルト:交響曲第40番

○フリード指揮ソヴィエト国立放送管弦楽団(arbiter)1937・CD

これはマーラーの大地の歌と共に新発見のものでやはりライブラリーから発掘された晩年の指揮記録である。音質はいいとは言い難いが時代を考えるとよくここまでしっかりした音の全楽章の記録が残されたものだと言うべきだろう。演奏はとにかく速い。揺れない。あっさりした(でも音は強靭な)新即物主義的な、いわゆるトスカニーニ的な表現をとっており、それがロシアオケにしては極めて厳しく統制され、真剣な精緻な演奏となっている。潤いというか、個人的に感傷的なものも含めて欲しい楽章はあるが、モーツァルトとしては立派にモーツァルトになっており、フリートの手だれぶりが発揮された佳演。○。

マーラー:交響曲「大地の歌」~Ⅳ(欠落あり)

○フリード指揮BBC交響楽団(arbiter)1936/2/1ロンドン・CD

「美について」だけであるが、イギリスのライブラリーからの驚愕の新発見音源であり、マーラーの使徒、不遇の指揮者オスカー・フリートの真価を問うための材料がまた増えたことになる。最後が8小節切れる(SPの収録時間のせいか?)のと、きわめて状態が悪い(SPからの板起こしだろう)のが残念だがそれでも価値はある。このCDはほとんどこの一曲のために作られたようなものでそこに賛否はあろうが、私にとってはそれで十分だ。歌唱は若々しく明るい、軽さすら感じさせるもので、オールドスタイルでありながらも原盤の状態からか新人の歌唱のようにすら思わせるちょっと独特のものがある。歌に詳しい人なら余り評価しないかもしれない。バックオケはこの指揮者が史上初の全曲録音を果たした復活よりも音に厚みがあるように感じる。円熟味はこの録音がこの指揮者の西側での最後に近い録音であることからくる感じなのかもしれない。録音状態のためかもしれないが、予想したより重く、うねるようなロマンティックも鼻につかないなかなかに大人のしっかりしたマーラーである。ワルターのような心酔は感じられない。BBCを使っているので重苦しさや変な演奏陣のルバート表現がないのはそのせいか、ドイツっぽいというほどしっかりしたフォルムを示しているわけではないし、武骨でもない。特徴をあげるほど長くないので評しがたい部分もあるが、個人的にはじつにマーラーを理解した演奏ぶりだと思った。真価を問うにはまだまだ足りない。ライナー筆者ではないがもっと音源が発見されることを期待しつつ○。

コダーイ:ハーリ・ヤーノシュ組曲

○テンシュテット指揮フィラデルフィア管弦楽団(memories他)1982/11/12、13live・CD

ツィンバロンのような新しい音響要素(民族的には古いものなのだが)が加わってはいるものの、ヤナーチェクあたりと大して変わらない世界でむしろ旋律性をはじめとするわかりやすさからいうとかなり古風なものを備えている。音楽的にはテンシュテットらしいしっかりした作りで力強くフォルムを崩さない骨太の演奏に仕上げている。ブラスが完璧なオケならお手の物だろう。ライヴなりの感興はあるがプラスアルファはない。○。

プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第1番

○スメタナ四重奏団(SUPRAPHON)1961・CD

アナログで聴いていたときにはずいぶんと客観的に整えすぎの印象があったが、確かに整えすぎではあるが、プロコの「仕掛け」はここまで縦をあわせ数学的に組み合わせないと効果を発揮しない側面もあり、盛り上がりどころでは「ドイツ式」の盛り上げ方、すなわち決してルバートによるのではなく縦をきっちり揃えたまま音の強さと太さで人工的な大きさを形づくっていく。それがわかるとなかなか熱のこもった演奏に聞こえてくるから面白い。ろくに曲を知らずにいきなり譜面から入った私はこういう「学術的な1楽章」にはどうしても違和感を感じてしまう。旋律が強すぎる、すなわち熱気があって当たり前の楽章、逆にそこを制御できることこそがプロなのだろう(でもやっぱりひたすら丁々発止にライヴ的にやる1楽章が好きだけど)。2楽章が肝の曲で、三つの楽章の中で飛びぬけて細かく難度も上だが、スメタナにかかるとそこがいちばんの聴き所となる。終楽章の暗さ重みはじつはこの曲の要でもあるのだが、そこはちょっと透明感がありすぎ、純音楽的すぎるようにもおもう。

シベリウス:交響曲第5番

○チェリビダッケ指揮トリノ放送交響楽団(WME:CD-R)1970/5/1live

シベリウスの傑作交響曲であり、1,2番の知名度に比べて落ちるが緻密な設計、流麗な筆致と壮麗な盛り上がりは何の欠点もない紛れも無くロマン派の最後に輝く金字塔である。余りに流麗がゆえに音楽的にこじんまりと聞こえてしまうというか、モノラル録音だと更にその点が強調され印象に残らない場合もあるのが難点だが、チェリまだまだ壮年の覇気が爽快な勢いある音楽を突き通し、晩年のガチガチさも若い頃の暴虐さもないバランスのとれた演奏振りが、すっかり馴染みのイタリアオケと組み合いラテンなノリさえ感じさせる。シベリウスを聞くとやはりどうしても自然を想起する。蒼みがかった氷壁を吹き抜ける風、北斎じゃないが凱風快晴、といった清々しさがある。けっこう複雑なアンサンブルや現代的な音響を駆使しているのにそこには非常に素直な自然への賛美が聞こえる。チェリはいささか人間臭いがそれでも旧いシベリウス指揮者たちに比べればずいぶんと透明度はある。チェリのシベリウスはいい。悪い録音のライヴばっかりだが、それでも。○。

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ストラヴィンスキー:交響曲(第1番)

○ドラティ指揮デトロイト交響楽団(DECCA)1984/11・CD

ストラヴィンスキーの習作だが、やはりグラズノフとチャイコフスキーの影響が強く、とくにこの演奏では僅かに織り交ぜられた楽想の清新さが引き立たず、完全にロシア国民楽派のデロデロ節をやろうといったふうの態度がとられている。にもかかわらず1楽章などかなり人工的でオケにもやる気が感じられない、まあドイツ式といったらいいのか、ノリが感じられない重くて客観的な演奏になっている。スケルツォは木管がたどたどしい。これはロシア伝統のソリストに過酷な技巧を要求する書法によるものであろうが気になる。3楽章は曲が地味だが、4楽章になると壮麗にアグレッシブに盛り上がり、ドラティらしさがやっと出て大団円になる。まあ、こんなもんかもしれない、職人的に処理するとなると。○。
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