マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

○ベイヌム指揮ACO(IMC)1958/6/4live・CD

2楽章以降の音質が非常に悪い。テープよれや途切れ、最大音量がとらえきれずに聞こえなくなるところなど、私みたいなすれっからしですら耳を覆ってしまうほどの音だ。終楽章にいたっては冒頭のティンパニソロが一部欠落。演奏自体は力強くロマンティックで、これこそ昔ながらのマーラーだよ、と膝を打つことしきり、コンセルトヘボウも冴えていてマーラーオケの名に恥じない力量を発揮しているためにこれはほんとうに惜しい。ドラティと似て非なるのはやはりオケの差か(ドラティに7番はないけど)。音の悪さに耐えきれる自信があればどうぞ。マーラーらしさ、ベイヌムらしさは健在。
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ストラヴィンスキー:ペトルーシュカより3つの楽章

◎ワイエンベルク(P)(EMI)CD

技術的には言うことが無い。音楽の勢いに指がまったく負けておらず、録音も明瞭で、しいていえばケレン味が無いことが挙げられようが、そういうものが必要かどうかは別問題で、少なくとも透明感あふれる音色は曲にマッチしている。粒だった音はいかにもワイエンベルク、残響過多気味ではあるが私は好き。◎。

カウエル:交響曲第5番

○ジーン・ディクソン指揮アメリカンレコーディング協会管弦楽団(ARS)LP

アメリカ実験音楽の祖とも言われるが案外と穏健な作風を持ち、ロマンティックな旋律とわりと保守的な管弦楽法を駆使する作曲家の印象もある。むしろ実験性はピアノ曲におけるものなのだ。この作品は1楽章が聞き物で、多彩なパーカッションと他パートのやり取りが丁々発止、しかしコープランド後期を思わせるところがあり、複リズム的なフレーズもおり混ざり清新だが、全般にはとても聞きやすい。だが、2楽章以降が凡庸である。新ロマン派の作品と言われれば聞ける内容だが、カウエルの特徴としてこの時代にしては簡素なオーケストレーションが気になり、それで前時代的な交響曲のなりをしていると、1楽章の勢いはどうしたんだろうと思ってしまう。盛り上がるは盛り上がるし、独自性も感じられるのだが。ディクソンは浮き立つようなリズム表現がうまい。オケはうまいがそれほど力強くはなく、それをここまで引き締めて表現させたのは特筆に値する。○。

フランセ:クラヴサン協奏曲

○作曲家(hrps)ナウモフ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団(wergo)1988・CD

華やかなハープシコードの八連符連打に始まるフランセらしい明るく軽く楽しい音楽。楽器の特性のせいで、あの世俗的なピアノ小協奏曲に似た内容であるにもかかわらず、典雅さや古雅さが漂うのも面白い。オルガンのように響く重音もフランセの響きとしては異色。5楽章制だがフランセにありがちなこととして「尻すぼみ傾向」があり、特に終楽章はもっと派手にしてほしかった。漫然と聴くより数十倍演奏するのが困難なことが予想される数学的な書法が目立つ中間楽章など聴きこむとそれなりに面白みも見いだせそうだ。巧みな対位法、不規則なリズムや休符の飛び交うさまは聴いているぶんには楽しい。ハープシコードはきほんひたすら伴奏音型を弾き続けるのだがここではフランセの前進的で目覚ましい技師ぶりを再確認できる。○。

ストラヴィンスキー:レクイエム・カンティクルス

○ミュンシュ指揮パリ管弦楽団(Altus)1967/11/14シャンゼリゼ劇場live・CD

Altusのやらしい再発盤に収録されたトラックで渋々これだけのために買った。ミュンシュのストラヴィンスキーというとペトルーシュカとアゴンくらいしか手元にないが他に何があるんだろうか。初物好きだし嫌っていたというわけでもなさそうなのは、この最晩年作、十二音技法を取り込んだ「ちっとも楽しくない音楽」を、「音楽は楽しい」を体現してきたようなミュンシュがパリ管デビューの演目に選んだということからもうかがえるようにおもう。そして演奏がけっこう、しっかりしていて、かつ「楽しい」のだ。たとえばギーレンがやってもこうはならないだろう。前奏曲のポリリズムにハルサイを想起するなと言うほうがおかしい。ここからしかし、ストラヴィンスキー「らしくない」響きが、前衛的な雰囲気を醸していく。といっても、合唱や独唱には前衛の匂いは薄いし、最小限に抑えられた楽器の用法は他の作曲家にも、ストラヴィンスキー自身にもみられなかった独特の「面白み」がある。この「面白み」を引き出す、「前衛の匂いの薄さを突く」のがミュンシュは上手いのか。典礼が進むにつれ本来の意図であるレクイエムに沿った作品構成であることに気付かされ、あっという間に終わってしまうのだが、つまりはポケットレクイエムなのである。

分析的なことはよそでいくらでもやっていると思われるのでここでは触れない。ただ、ミュンシュマニアなら聴いておいて損はない。中古を探してください<おい

マーラー:大地の歌

○ジュリーニ指揮ベルリン・フィル、ファスベンダー(Ms)アライザ(T)(testament)1984/2/14,15live・CD

2/14のみの実況が7年ほど前に裏青盤で出ていた。じつに好意的に書いた覚えがあるが、今聴くと、ライヴなりの粗さも感じられ(ソロミスに煩い向きには気になる個所もあろう)、解釈的にも地味で、ファーストチョイスに向くかと言えば疑問がある。個人的には歌唱も飛びぬけたものは感じなかった。この曲は「告別」の悲壮感が全体の印象に暗く影を落としているが、歌詞はそこまで悲しいものではないし、諦念諦観といったものは必ずしも悲壮感と並置される感情ではない。ジュリーニの告別は古い時代の演奏に聴かれた「闇とそこから開ける光明」といったものとは少し違う。清澄な空気感が支配的で、楽器の一つ一つ音符の一つ一つの純度が高く、休符が効果的に使われ音量に細心の注意が払われており、室内楽的なアンサンブルをBPOの力感みなぎる音によって崩さぬべく抑える配慮が感じられる。それが一貫して、歌詞の起伏や調性の変化に左右されることなく、悪く言えば平板だけれども(録音が歌唱偏重なせいもある)、ゆったりとうとうと流れる大河のように聴かせていく。音量を抑える余りヴァイオリンパートソロの「歌」がばらけて聴こえたりはBPOらしいといえばらしい音なのだけれど、気になる人は気になるかもしれない。オーケストラだけの再現部(?)、弦楽器の息が長い旋律におけるレガーティッシモな表現。じつに表情変化が細かく、統制が行き届き美しい。「永遠に・・・」のくだりもそれほど明瞭な変化をつけて突入することはないので、ドラマチックな告別が好きな人には向かないが、セレスタの煌めきに彩られながら静寂の中に消えていく末尾は出色。これぞ大地の歌。○。

アイヴズ:ピアノ三重奏曲

○ニューイングランドトリオ(HNH)1977

初録音盤。抒情的で大人しめの演奏。アイヴズ特有のふざけた方法(当時の世俗音楽であるラグタイムの執拗な引用など)、意図的に発生させられるカオスに際し、エッジの立ったやり取りを楽しみたい向きには受けないか。この曲はちょっと中途半端なところがある。ヴァイオリンソナタ第三番に似た生ぬるいロマン派的な進行が目立つが(むろん皮肉であろう)、そこに演奏困難とも思われるポリリズムや無調的な響きの横溢するパセージが唐突に織り交ざり、その温度差が激しすぎてどう聞いたらいいのかわからなくなる。この発想が大規模交響楽に投影されるとなると第四交響曲のように「うまく機能する」のだが、三本の楽器でやるとなると誤魔化しがきかず、演出的に難しいものがある。いいからピアノは冷えた情景を散発的に示し、残りは静かにコードをなぞれ、と言いたくなるほど喧しく感じる個所も多い。アイヴズの室内楽はアイヴズの作品中では一般的に決して推奨できないものがあり、ヴァイオリンソナタやピアノ曲に比べ一段下がる感も否めないが、そういう曲においてこのような穏やかな演奏は聴きやすく、悪くは無い。○。

ピストン:交響曲第2番

○ジーン・ディクソン指揮アメリカンレコーディング協会管弦楽団(ARS)LP

(ドゥーガルではなく)ジーン・ディクソンの名前はアメリカの指揮者を好む人のあいだでは有名だろう。同時代音楽の紹介において定評がありヘンリー・カウエルのシンフォニーも録音している。適度に引き締まった、ちょっと乾いた表現が、この曲のように前時代的なロマン性の前面に立つ曲では甘さ控えめ、聞きやすい。1楽章モデラート、序奏の暗さは嫌な予感がするもののすぐに前向きな音楽に転じ、ちょっとロシアロマン派やシベリウス初期を想起する柔らかな、ちょっと無難な交響世界が展開されてゆく。中間楽章も決して陰鬱さを醸さないアダージオで聞きやすい。しかしやっぱりこの作曲家はフィナーレの華やかさだ。アレグロ楽章でのディクソンの表現は水際立ったというものではないがリズムがしゃんとしており弛緩がなく、ピストンのコープランドとはひと味違った地に足の着く愉悦的なダンスを、そのままに表現している。これは聞き物。この盤はけっこうな値段もつくが、アマゾンでも中古が出ているくらいで希少性はなさげなので、機会があればどうぞ。ネットでも(音飛びを厭わなければ)聞ける。○。
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