ブラームス:交響曲第3番

フルトヴェングラー指揮BPO(EMI/MYTHOS/PASC他)1949/12/18ティタニア・パラストlive・CD

普通に聴けば全体構成からいっても後半のほうが面白い。大前提としてフルトヴェングラーベルリン・フィルの集中度の高い素晴らしいコンビであるというレベルから俯瞰して、冒頭はずわーんという感じでザッツが雑というか柔らかい印象もあるし、それは中音域以下の響きを重視するドイツ流儀でもあろうが。むしろ弱音部に魂が宿る。入りが優しい。ブラスなど明確に底深い響きを放ち、毅然とした演奏なのに楽想の変化にけしてディジタルな動きはつけない。すこし雑味のある弦楽器より木管に聴くべき箇所か多い。大きな流れの中に自在に取り込まれすぎてわからないほど板についたテンポ操作など、この人の特徴であり他が聴けなくなる人もいるだろう。3楽章はこの曲の有名部分、感情的でも俗謡的な歌い回しを持ち込まず純音楽的に、雄渾なほど描ききった緩徐楽章はフルトヴェングラーを特徴づける名演。四楽章はその勢いもあいまって満足度は最高度に達する、末尾の弱音までもが勢いに取り込まれるようだ。けして私はこの曲が得意ではなく、飽きるほうだけれど、後半楽章は何度も聴ける。変にいじらないほうがこの音源は良いと思う。そんな綺麗に整形された演奏ではないはずだ。
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ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

シルヴェストリ指揮ORTF(belle ame)1959/2live

随分ハッキリした牧神で、ソロ楽器はいずれも音色表現よりハッキリした音を出すことに主眼に置いて吹いているように聴こえる。モヤっとした印象派的ではなく、純音楽的と言えば聞こえは良いが、冒頭フルートがどうのこうの、と拘る方には噴飯物かもしれない。最後の音なんて敢えて棒吹きしてるのかと思うくらい。ハッキリしているので、拍手もハッキリしている。録音のせいか?

ラヴェル:ボレロ(欠落あり)

シルヴェストリ指揮ORTF(belle ame)1959/2live

音量が最初から大きいという。テンポがちょっと足踏みしたり、音外しまくったり、だいたいが冒頭欠落しているのも音源として問題なのだが、響きがシャキシャキせずガシャガシャしてるというか、そこが逆に飽きさせない作り方になっている。まあ、ほとんど打楽器のせいなのだろうが、ヴァイオリンも音色鄙びてますね。。ペットが入り明るい音に変なクレッシェンドまでついて初めてシルヴェストリらしいなあと思う。フランスオケらしさが良くも悪くも出てはいる、ORTFなのにローカル色の感じられる演奏。派手。ブラヴォも。

ドビュッシー:交響曲(ファルドナー管弦楽編曲)

ファルドナー指揮シカゴ交響楽団の団員(koch)1991/12・CD

3楽章構成はとってはいるが断章を束ねたものに近い。原曲がピアノ譜の断片なのだから動機と変容くらいしか原型を留めていないだろうし、一方一楽章がほとんどピアノ五重奏曲というのも交響曲らしからぬところで、ほかの楽章も最低限の管楽ソロが加えられるのみで、生のままの曲を届けたい意図は伝わるがどうせならしっかりオーケストレーションしてもらいたかった。ドビュッシー修行時代の書き残しであり、チャイコフスキーの時代と重なっていることを思い出させるロマン派に立った楽曲で、疎な響きによる明るい色調はドビュッシーだからというより教科書的な書法の結果であり、わかりやすいアンサンブル、明確な構成感は、一瞬フランクを思い出させるところもあるがほぼ一瞬でしかない。ピアノのための幻想曲を八割削ったような作品。

デュカス:ラ・ペリ~ファンファーレと舞踏詩

マルティノン指揮ORTF(erato/warner,icon)1971/9/21-23,27・CD

ファンファーレが別途作られたのは承前。新鮮な響きで旧来の鈍重だったり乱暴だったりしたファンファーレとは一線を画する「印象派後のファンファーレ」。本編は妖しい半音階に彩られた官能的な音楽で、寄せては引く波のような感情のゆらぎを、強調して煽るのではなく繊細な色調で描いていく。ワグナーやスクリアビンを思わせる演奏になっておらず、あきらかなフランス音楽として認識させるのは和声への鋭敏な配慮ゆえだろう。

ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」

ブリス(SP)マルティノン指揮ORTF(ina,parlophone/icon,warner)1972/1/3パリ・シャンゼリゼ劇場live・CD

全曲版。ファリャの管弦楽の色彩、ソプラノを入れることも含め独特な創意のみられる曲(ただ全体としてはそれほど先進的には感じないのだが、、、)。落ち着き払った出だしに「いつものマルティノン節か、30分もつのか?」と思うが、モノラル期より録音してきた曲だけあって、テンポこそ前のめりにならないものの心地よいリズム感、透明感ある色彩により構築された音楽は、組曲に採り入れられた部分で耳が切り替わってしまう戸惑いはあるものの、まさに「BGM」にふさわしい心地よさ。終盤になってちょっとライヴ的な雑味がある気はするが、マルティノンは「律する心」が強く乱れることを許さない。派手にぶちまけるような表現もそれほど粘りはなく軽い突進でそのまま終わり。乱暴なブラヴォが散発、といった感じで感興を呼ぶような雰囲気はない。

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ブルックナー:交響曲第7番

ロジンスキ指揮クリーヴランド交響楽団(SLS)1938/3/16放送・CD

どうもこの曲が苦手です。親しみやすい旋律、ワグナーの死にさいし捧げられることとなった2楽章の感傷的な表現、わかりやすい構成など、この曲がブルックナー指揮者以外にも盛んに取り上げられた(4番ロマンティックよりも骨董録音は多いかもしれない)、その理由は挙げられるだろうが、正直飽きるのも早い。長大な8番などにくらべ「くどさ」が少ないと言われるがワグナー的なモチーフなど却ってウンザリさせてしまうわかりやすさで、ロジンスキのような即物主義的な指揮者の演奏だと最初こそ飽きさせない隈取の濃い表現で耳を惹くが、何も共感していないような一本調子(ブルックナーは共感してロマンティックな起伏をつけるたぐいの作曲家ではないのだが、飽きさせず聴かせるためにはそれも必要だ)、録音はノイズのほうが大きいくらいで音量変化もなくそこは仕方ないが、これを聴いてブルックナー好きになるとは思えない。演奏レベルはクリーヴランド交響楽団との幸福な時期のものだけあって高い。大規模編成を使いこなすのには定評のあるロジンスキらしいブラスの鳴らし方で、ヨーロッパ的ですらある。あまりにもノイズが多いゆえ全く勧めないが、カットせずちゃんとやっているからロジンスキマニアには薦める。ミュンシュのほうが同じスタイルでも面白いだろう。クーセヴィッキーがやったら同じような感じになったろうがカットも激しかっただろう。

ヴォーン・ウィリアムズ:富める者とラザロの五つの異版

アブラヴァネル指揮ユタ交響楽団(vanguard)CD

アブラヴァネルといって覚えておられる方はいるのだろうか。亡くなってからこちらマーラー全集のことすら口辺に上らなくなって久しい。だがオケに弱みがありながらも強くしっかり引っ張っていくこの人の、どちらかといえば中庸ではあるが、このような曲においての確かな表出力は意識せずとも耳を惹き付ける。フレージングはきわめて丁寧だが滑らかな旋律の起伏を聴かせるたぐいのロマンティックな演奏ではなく、各音符を明確に必要な長さと厚さをもって曳きつけ、ハッキリ重層的に響かせる意思的な演奏であり、楽曲の抽象度を上げるとともに、叫び咽ぶようなことを絶対にしない、一種高潔さをもったヴォーン・ウィリアムズ本来あるべき姿を提示している。この曲を誤解なく聴くには、バルビローリなどよりも向いている。専門室内楽団がやるようにピリピリ厳格な表現ではなく少し古い厚みのある部分も聴きやすい。この曲集ではおすすめ。

ドビュッシー:ピアノと管弦楽のための幻想曲

ニコレ・アンリオ・シュヴァイツァー(P)ミュンシュ指揮ORTF(DM他)1962/5/8live・CD

有名な演奏だが往年の名指揮者が振った記録としては破格の音の良さで、ほんの僅かの放送撚れと環境ノイズ以外満点のステレオ録音だ。ミュンシュとレジスタンス仲間でもあったアンリオとは実に多くの録音や演奏記録が残されているがこの曲はこれだけだろうか。正直アンリオは傑出したソリストではなく技巧的な瑕疵も繊細な味わいの希薄さも、ミュンシュは何故彼女を選んだんだろう、という時しばしばで、しかしこの曲くらいになると音が少なく、ただ力強く弾いても悪印象にはならず瑕疵もすくない。1楽章など他の演奏で感じられる同曲の生硬さを上手く丸め、雰囲気で聴かせていく。2楽章の法悦はむせ返るように美しく、ミュンシュの響きへの配慮が行き届いていて、アンリオもそこに融和している。3楽章はアンリオのバリ弾きスタイルで(テンポ感が僅かに揺れる箇所があるが)きっちりまとめながら美麗な初期ドビュッシーの明晰な再現をなし、オケは少しマイクから遠いが、それに沿ってきちっと律せられている。緩徐部はじっくり聴かせる。過度なほど。。イマイチ縦が人工的な感じの揃い方ではあるが、変に情に寄ることもなく、音が少ない曲をスケールの大きなものに持っていこうとする意思が感じられる。冗長感は増しているが。。そんなところ。

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アーン:ヴァイオリン・ソナタ

ソリアーノ(Vn)マリー・ダルレ(P)(meloclassic)1959/2/28パリ フランス放送スタジオ録音・CD

1926年、フォーレ没後2年の作品である。レイナルド・アーンといえばまずもって歌曲の作曲家であり、唯一著名なピアノ協奏曲も「人間の」歌謡性に貫かれた時代に取り残されたような作品。だがこの作品は演奏次第で変わるような脆弱な作品ではない。「人間の」歌謡性を感じさせる表現は終楽章など少し現れるが、はっきり感じられるのはフォーレの特に晩年の旋律や和声のエコーである。フォーレはアンサンブルにおいて独特のユニゾン表現など単純化を進めていったが、この曲に支配的な横の旋律や和声(とても慎ましやかではあるが)はそれに近い。フォーレは全盛期の技巧においてはアルペジオを多用するなど装飾的な表現を個性としていて、アーンはそれとは違うむしろ伝統的なヴァイオリン・ソナタの模範的表現を(ピアノ伴奏においても)とってはいる。対位法を駆使する場面など円熟した技法に目を見張る。自動車のエンジンを主題とする(このあたりの世俗性がアーンらしい)2楽章のスケルツォは特殊な聴感を与える時代なりの清新さをもった聴きどころで、ここははっきりと違う。けれども3楽章に落ち着くと、そこにはやはりフォーレの影の感じられる美しい旋律が立ち上り、最後に循環主題に戻って終わるさまも世俗性は感じられず、なかなかの佳品ぶりである。ソリアーノは表現が強靭で影が無い。またゆるやかな情緒も篭めないから、アーンのメロディの世俗性が隠れているところはあるかもしれない。でも技巧的にすぐれたソリストであるからこそ作曲家の鮮やかな手腕が浮き彫りになる。初期で終わってしまったイメージをもたれるかもしれないが、アーンはアカデミックな教育を受けたれっきとした純音楽の作曲家でもある。メロディ頼りの部分は飽きてしまう可能性もあるけれど、そのメロディに力があることは認めねばならない。録音はモノラルで良くも悪くもないがしっかり聴こえる。

フォーレ:ピアノ三重奏曲

トリオ・ド・フランス(ゴーティエ(v)レヴィ(c)ジョワ(p))(pretoria/FORGOTTEN RECORDS)1958

乱暴に言えばラヴェルのトリオ後に敢えてフランクのヴァイオリンソナタの様式に則って仕上げたような作品で、最晩年の簡潔な作風に拠り音の数自体がすくない。3楽章では少し細かな動きと晦渋さが交じるが、すべての楽章は明確な旋律に貫かれ、フォーレ特有の浮遊する和声感覚も、音域が高めで推移することで保たれているが、半音階的な複雑さより明らかな変化のさまを清新に示す表現に収斂されている。そして楽団が非常にやりやすいようだ。ラヴェルでは荒々しくならざるを得なかったようなトリッキーなものがないから、却って音楽性の真価を問えるというもので、その意味でいくと同曲に要求されるものを的確に描き出していると言える。音色の統一感、ピアノと弦のバランスも良い。録音さえよければ、この音色で聴くのはとても心地よかっただろう。

バルトーク:組曲「中国の不思議な役人」

マルティノン指揮ORTF(warner,icon,ina)1971/6/24シャンゼリゼ劇場live(1971/10/31放送)・CD

これもina音源で、ina.fr配信のものと同じかもしれない。比較的新しい録音のためライヴであってもめくるめくドギツイ色彩とパラードのような至極諧謔的な雰囲気、ストラヴィンスキー火の鳥の遠いエコーのような(野蛮主義であってもハルサイからは遠い)、やはり劇音楽であったことを匂わせる筋書きめいたものに沿った不可思議な音楽がよく浮き彫りにされている。マルティノンのような人は新古典主義の音楽より、こういった複雑な音楽を鮮やかに捌き拡げるほうが向いているように思う。スクリアビンのように幻想的で、えげつなさすら感じさせる重層的な響きは、つねに焦燥感を抱えながらもどこかしら楽しませる要素があり、それはやっぱり鮮やかな指揮と録音によるところが大きいし、オケもよく演じきった、この明るく美麗な音色でやってくれると土俗的なくぐもりが払拭されてとてもいい。管楽器群がとにかく、よくやっている。客席からはブーのような声が聴こえるがこの曲なら仕方ない。

ルーセル:交響曲第3番

マルティノン指揮ORTF(warner,icon,ina/ina配信?)1970/6/21シャンゼリゼ劇場live・CD

実は、このマルティノン後期録音集ボックスを知ったのが最近で、バラバラ集まっていたフランス秘曲CD、eratoからEMIの録音が網羅されているばかりかina所蔵のライヴ音源(しかもina.fr配信の音源と違うもの!)等初音盤化トラックも多くて、14枚2000円台とはなにごと!と思った。昨今古いモノラル音源や余りに名の通った指揮者の音源ボックス叩き売りは多いが(そしてその多くがEMIからワーナーに流れたものだったりするが)、マルティノンクラスの指揮者でこれをやられると、今までの投資なんかどうでもよくなって、聴いてない音源をひたすら再生させ続ける日々になる。つい最近もプレートルで。。このライヴ、データ上は初出だが、ina配信のものは放送日が記載され演奏日とは限らないので、ダブっているかもしれない(確認したところ音源には6/21という日付だけが記載され演奏日・場所は第三者による推定なので、同じ可能性が高い)。もっともあちらはストリーム配信、もしくはmp3なので耳にはこちらのほうが優しい。

と言って、正直これはちょっと打楽器のドガシャーンで誤魔化しているようにも思う。オケに弛緩が否めず、集中力を欠いているかのように聴こえるところがある。これをスケールがでかくなった結果と取るか、統率力の問題と取るか、解釈の問題ととるか。そのすべてだろうか。でも、ina配信で聴いてない方には、このルーセルの弟子が同曲に籠められた意図、特にバレエ音楽的な要素や、前衛的な響きや陶酔的な表現を強調することによって師の歴史的位置を改めて示し直したものとして、薦められる。娯楽作品というだけではない、この曲にはこれだけ情報がこめられているんだ、というのをついでにユーチューブ的なところで何年か前のプロムスライヴで視覚的にも確かめて(あちらBBCsoなのに緩いがルーセルの効果的なオケ(とくにブラス)の使い方がよくわかる)、楽しんで欲しい。最後の妙に性急な終わり方はマルティノン独自のもの。一声ブラヴォが入る。

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

ミュンシュ指揮ORTF(ConcertHall/GIDE/ESR/sbribendum/FNAC)1968/2パリ(放送)・CD

FNACはinaが保管していたであろう稀少音源をいきなり廉価で変な詰め合わせで出したレーベルですぐ消えた。データも詳らかでないものが多く、これも何か他の盤と同じものであろう(ディスコグラフィーに従ったデータを記載する)。最初何も見ずにこれがかかって、何だこの押し付けがましい牧神は、と思ったらミュンシュだった。しかもボストンかと思ったらORTF。フランス国立放送管弦楽団をこんな機能的に、力強く使いこなすのはミュンシュしかいない、そういうことだった。環境雑音はあるがライヴではないとのこと。

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ

◯シェリング(Vn)シュレーター(P)(meloclassic)1957/4/15フランクフルト放送スタジオ録音・CD

スタジオ録音だが環境雑音がある。一発録りだろう、しかし壮年期シェリングの表現力に圧倒された。まったく、これはこう弾けば良いのだ、とヴィルトゥオーゾらしさを見せつける。力強く、しかしピアノとの微細なやり取りも疎かにせず、「こんな音の少ない曲どうやったら届くんだ?」という疑問を、「音を太くすれば良いのだ!」とまあ、そんな単純な話でもないのだが、無伴奏ソナタでもやるように、これは独壇場である。たぶん、同曲の演奏としては特異なものであろうが、この説得力は同曲が苦手な向きも納得させるものがある。透明感と線の細さが特徴的な後年のシェリングと同じ人とは思えない素晴らしい記録である。特異と言ったが、和音も音線もまったく加工されているわけではなく、ドビュッシーそのものである。

ドビュッシー:チェロ・ソナタ

スカノ(Vc)ゴメズ(P)(ensayo)1970'・LP

パレナンのカルテットと組み合わせられた録音だが音質が違うので同じ場所で録られたものではないだろう。ちょっと荒っぽいというか、金属質な感じのする音で(薄盤のensayo特有の薄っぺらいステレオ録音起因かも)、脇の甘さの感じられる部分がある。一楽章のスペイン情緒をかもす旋律で南欧風の歌い回しをするかと思いきや、そこは冷たくラヴェルでいるのに、ポルタメントをかけまくるとは。。音色はともかくそういう面白さは楽章が進んでも、ある。左手が柔らかいのだな。

ドビュッシー:弦楽四重奏曲

パレナン四重奏団(ensayo)1970'・LP

一部ではスペイン録音で、EMIの録音とは違うとされている。正直違いはわからない。だが私の思い入れのぶん、いつも落ち着いたテンポで現代的な表現をなすこの団体に、部分部分に情緒的な揺れや起伏の感じられる演奏にも聴こえる。2楽章ではどうしても落ち着きが気になるが、3楽章はこの演奏の白眉たる美しく感動的な緩徐楽章に仕上がっている。両端楽章ではカルヴェを思わせるソリスティックな動きが僅かではあるが聴き取れるし、また、音色のそろった楽団と思わせながらも3楽章冒頭など実はけっこう違っているのがわかるのも面白い。ensayoのフランス音楽シリーズはドビュッシーでは他にスペインの奏者によるピアノ曲集、さらにラヴェル(これもパレナン)、ストラヴィンスキーがあるが、ラヴェルなど今すぐでも手に入るような代物なのに、これは10年かかった。やっと昨日、スペインから届いた。どういうわけか、高級中古店の人もこの盤は稀と言っていたが、取り立てて凄い演奏ではないのはプレミア盤の常。特筆できるのは併録のスペインの奏者によるチェロソナタの存在か。いずれとっくの昔にCD化しているかもしれないが、数少ないWant Listから一枚減った。

マーラー:交響曲第3番

ラーション(A)スヴェトラーノフ指揮スウェーデン放送交響楽団他(WME)1999live

スヴェトラーノフはマーラーをレパートリーとしていて、手兵国立響を率いて九番を演った頃は「日本人に馴染みのないマーラーを教えてやる」(1990年代にもかかわらず!)というような調子で、バーンスタインを尊敬していたということからも、また晩年N響で7番などをやったこともあるように、大曲志向などという言葉にとどまらない好感を持っていたのだろう。壮年期の力感や破天荒な表現は退行し、この曲の最後もいつもの「引き伸ばし」はするが音量や表現の起伏は付けられていない。だが円熟した解釈を常に明瞭な発声で表現させていくさまはマーラー指揮者と言ってもいいくらいしっかりしたもので、地に足の付いた演奏である。牙の抜けたロシア国立とのチクルスしか正規の全集が残っていないのは残念で(最初の九番の評も良くなかった)、全集くらいでないと演奏されない三番が第二の手兵と言えそうなスウェーデンの手練れ楽団とのコンビで音盤化されたのは歓迎されるべきことだ。じっさいバランスの良さ、解釈の浸透ぶりはロシアのものとは比べ物にならない。自身の指揮方法の変化や穏健な解釈への変化(相対的にはけして穏健ではない)があったにせよ、マニアックではなくニュートラルに聴けるスヴェトラーノフというのはそれだけで真価を問えるもので価値がある。この曲のほとんどの魅力は両端楽章にこめられているが、一楽章は期待に違わぬハッキリした演奏でいちいち発音の頭が強く、わかりやすい。シェルヒェンをちょっと思い出させるが歌心というか横の流れも程よく、晩年陥った響きへの過度なこだわりもない。終楽章でオケがバテたのかうねるような感情表現までいたらず、平凡な印象なのは残念。少年合唱の音程が少し。。全般に聴く価値あり。

グリーグ:ペール・ギュント第一組曲~Ⅲ、Ⅳ

ピエルネ指揮コンセール・コロンヌ管弦楽団(ODEON)SP

恐らく第一組曲全曲録れているだろう、ひょっとしてモイーズが吹いたかもしれない「朝」が無いのは如何にも惜しい。四曲とも極めて有名で、世俗感と清潔感の同居する、国民楽派と次世代の間に位置する「辺縁音楽」である。アニトラの踊りはいかにもピエルネにふさわしい。グリーグの古い中にも特徴的な和声進行を鮮やかに浮き彫りにする。すこし弦楽の縦線が合っていないような感がするのは気のせいか、これは次の、山の魔王の宮殿にて、でも感じられる。高弦が低音のピチカートより前に、つんのめるようなテンポ感。でも弾けるような瑞々しさは民族主義の臭みを取り除く。魔王の宮殿はムソルグスキー的な超有名な低音旋律を聴かせる。78回転盤ではなかなか捉えづらい重心の低い音をよく捕まえていると思う。回転するような同じ旋律の繰り返しが大円舞に至るのはラ・ヴァルス的でもあるな、と思った。まあ、あっさりした演奏でもある。

ラヴェル:ツィガーヌ

グリュミオー(Vn)ヴァイスマン指揮トリノRAI交響楽団(ANDROMEDA他)1962/2/2トリノlive・CD

巧い。グリュミオーの音は一部すこしこの曲には重い感もあるが色は綺麗で技巧的にはすこぶる安定し、危うさの微塵もない。スピードや曲芸的な表現に陥らず、ただやってやろう感は伝わる演奏で安心して聴ける。オケの音色はカラフルだが反応が遅く、重くもあり、グリュミオーの厚い音とあいまってむしろ東欧的な民族音楽色が濃厚になっている。これは良いのか悪いのか。あと、ANDROMEDA盤は元がモノラル板なのにステレオ起こしされているので左右に揺れて非常に聞きづらい。モノラル再生設定で聴くことをお勧めする。
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