ラヴェル:ピアノ協奏曲

○園田高弘(P)ブール指揮バーデン・バーデン南西ドイツ放送交響楽団(EVICA,日本クラウン/SWR)1965/12/13・CD

入りからびっくりしたのだ、あ、ロンの音だ、と。フランスの至宝と呼ばれたマルグリット・ロン女史(ロン・ティボー・コンクールのロンね)の、明快だがどこかロマンティックな軟らかい色のある音。タッチが似ているのか。ライナーにもあるとおり園田氏はブールより、「直伝」と言われたロン女史の解釈(じっさいにはラヴェルは最盛期の女史に容易に口出しできなかったとも言われる)とは異なる、譜面にあるとおり「だけ」の演奏をするように強いられたという。しかし器楽演奏というものは指揮者や作曲家の考えるものとは違う部分がある。統制のきかない部分は確かに残る。これは「ドナウエッシンゲンのブール」の世界に園田氏が埋没させられてしまったのではない、素晴らしい技術的センスと鋭敏な反射的能力を駆使した園田氏が、ブールが思い描く「客観即物主義的な音楽観」を損なわず、かつ(無自覚のようだが)自らのほうに見事に融合させている。寧ろその性向的にブールでよかったという結果論も言える(晩年のロン女史のような「突っ走り」は無いが、フランソワのようにスピード感が失われることも決して無い)。

両端楽章においてはこの盤の表題になっている「若き日」とはいえ、浅あさしい技巧家ぶりは無い。2楽章は最も繊細な感覚が要求されるがここで古典的構成感とロマン派的旋律性の狭間に確固としたテンポで柔らかく奏される絶妙な音楽は、より直伝に近いと言われたスタイルを持っていた(しかしこの曲は時期的に直伝ではない)ペルルミュテールに似ているかもしれない。

ブールのラヴェルはロスバウトより色が無く、音は軽やかでも揺ぎ無い構造物となる。だが遅さや重さというのは感じない。巧緻な設計のなせるわざだろう。全く別種の指揮者とはいえ同じ指向も感じさせるケーゲルのムラある芸風とは違い、スコアを固持はするものの、ギリギリ「どちらにも振り切らない」ことにより晩年ラヴェルのロマンティシズムを失わず、あっさりもしすぎない魅力的な演奏を仕立てる。ライヴではこうもいかなかったかもしれないがブールのライヴに精度の低いものは知らない。少なくとも同じ即物的傾向の強い透明なラヴェルを得意としたベルティーニの無味乾燥とは違うものではある。うーん、これは知られざる名演だが、一般的ではない。何故だろうか。○。

tag : ブール

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