オネゲル:交響曲第2番

ミュンシュ指揮BSO(SLS)1956/11/30live

意外と良い録音で迫力がある。3楽章制の弦楽合奏曲でオネゲルでも特に緻密に書き込まれたアンサンブル、それは晦渋さをかもし、この作品と格闘中にパリ陥落となった時代背景もあってその反映ととらえる向きは多いが、作品としてはあくまで「バッハに倣え」である。1,2楽章の陰鬱さについてもただ同じムードの音楽として聞き流すのではなく、弦楽器各パートの絡み合いを聴くべきところで、古い録音でもそのやりとりの精密なさまが明確にわかるところがオネゲルらしい職人性といえる。同郷(オネゲルはほぼフランス人だが)ザッヒャーの室内楽団に向けてのもので、これがかつての小品にみられた機械的律動を音楽的に抽象化したものという、何か別のものに捧げてレクイエムを書いたのではない、楽団に楽曲として演奏されるためのコンサートピースであるという点を見失ってはならない。そこを見失うと最終楽章しか聴けなくなる。ミュンシュはしかし占領下でこの曲の録音を開始しパリ開放直後に最終楽章を録音、以後数限りなく演奏し続けた指揮者で、つまりこの曲をあきらかなレジスタンス音楽として捉えている。だからこそえんえんと闇のやり取りをし続ける弦楽合奏、2楽章中盤になって不意に低弦より立ち上る夢のような響き、ヴァイオリンの儚く甘い旋律が心に響く。オネゲルはそれほど意識してこのパセージを挿入しているとは思わないが、ここで2楽章までの音楽が悲観的な「ファシズム国家による占領、刹那にあらわれる往時のパリの思い出」なのだと思わせてしまう。3楽章はそれまでの音楽とは違う。バルトークのようなピチカートが闘争の開始を告げる。これはベートーヴェンにおける「悲劇から勝利へ」の交響曲なのであると、ミュンシュははっきり意識してアンサンブルを引き締める。オネゲルの書法自体は同じ「バッハへ倣え」であり、バルトークのような前衛的な手法はとらない。演奏者のことをよくわかっている(ザッヒャーのバーゼル室内楽団を見くびっているようにもとらえられるが・・・)。トーンは変わり、形勢は有利に働き、そして弦楽合奏曲なのでオプションではあるが、ほとんどの場合導入されるペットの凱歌が高らかに響き、しかしきっぱり終わる。ベートーヴェンのように終止音を何度も何度も叩きつけることはない、既に勝利しているのである。ここは表層的な演奏効果を考え操作して大きな音楽的クレッシェンドをつけることもできると思うが、ミュンシュはそれはやらない。録音バランスの問題もあるし、この音源はモノラルなのでなおさらだが、ペットはあくまで上に載るのみで、「高らかに」という感じではない。むしろオネゲル自身の意図していたであろうところの、弦楽合奏を補完する「オルガン的な響き」として重ねているのみで表情は作らせていない。音量も録音では際立ってこない。これでいいと思う。パリがフランスのもとに戻り、ナチは倒れ、しばらくたってアメリカのオケでこれを演奏し続けるミュンシュに対し、ヨーロッパではカラヤンが積極的に取り上げた。録音こそほとんど残っておらず、DGのものはミュンシュにもましてベルリン・フィルの分厚い響きで古風な室内合奏を作り上げているが、音楽家は政治とかかわろうがかかわらなかろうが、ただ音楽をやりたい、音楽をやるために生きているという点で、考えさせられるところもある。

☆参考資料

「オネゲル:交響曲第2番」ミュンシュ指揮
2017/1時点確認可能な音源(ディスコグラフィと個人的調査に基づく。すべてCDないしCD-Rフォーマット(andanteを除く))

・パリ音楽院管弦楽団(gramophone/DANTE,LYS/cascavelle(「音楽のレジスタンス」所収)/artone/SLS)1942/10/15-16、3楽章のみ1944/3/1(パリ開放後)スタジオ

・BSO(DA)1953/3/27live

・BSO(RCA)1953/3/29スタジオ

・BSO(SLS)1956/11/30live

・チェコ・フィル(multisonic/living stage)1957/5/17live

・フィラデルフィア管弦楽団(andante配信※2010閉鎖、未聴)1963/3/17live
フィラデルフィア管弦楽団(DA)1964live
※DA他CD-Rレーベルには同オケ名義で1962,1964年録音と記載された音源があるが、同オケは記録上1963年3月にしか客演しておらず、同一の可能性大
<参考>ディスコグラフィ上確認できるフィラデルフィア管弦楽団との1963年3月録音記録(2017/1時点)
7日LIVE philadelphia orchestra BOXset(ダフクロ2組)1999初出・恐らく現役)
14日スタジオcbs/sony/RCA(現役)
17,24日LIVE andante配信(閉鎖)

・ORTF(DM/Valois他)1964/9/1live

・ソヴィエト国立交響楽団(melodiya)1965/5-6LIVE

・BSO(SLS)1966/12/6live

・NYP(DA)1967/2live

・パリ管弦楽団(angel/EMI他)1967/12/28スタジオ
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