リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」

カラヤン指揮ACO(RCO)1943/9live 放送・CD

戦中録音にしては音は良い。弦の懐かしく輝かしい音が印象的である。ウィーン風のポルタメントをまじえリヒャルト・シュトラウスに必要な音色感、物語性をよく浮き彫りにした覇気ある演奏となっている。楽想をはっきり描き分け変化を明瞭にした、というほど中身の伝わる録音ではないが、後年のカラヤンと同じは思えない、ぼわんとしたゴージャスな演奏よりも、トスカニーニらの集中度の高い演奏に近いが、それも立体感を犠牲にしてまで凝縮したものを目しているわけでもなく、リヒャルト・シュトラウス自身の指揮ほどの乾燥は全くなく、まっとうに聴かせる。最近不意にまたカラヤンの真実といった海外ドキュメンタリーをやったようだが、何十年も前、戦時を含むカラヤンの「音楽家としての側面」がいくつか時間をかけて放送されたことがある。この人はナチを「利用し」まだ若い才能をよく録音に残した。それが戦後とは違う、もちろん当時の巨匠には肩を並べられない没個性的な部分もあるかもしれないが、カンテルリ程度には十分の力があり、楽曲をよく研究し、オケを厳しく鍛えることのできた獅子であったことを確認できる。ストコフスキがベル研究所と長年研究をかさね、やっと非公式にではあるが世に出すことのできたステレオ録音に遅れること数年で、ストコフスキの横に平板な立体音を上回る精緻なステレオ正規録音を作り上げたのは、指揮者として、もちろん録音経験者としても何十年も先輩であったストコフスキーに対しプロイセンの力を国をかけて見せつける以上に、カラヤンの録音芸術に対する才覚を見せつけるものであった。それほど録音「操作」に積極的だったカラヤンの実像は、そういった飾りを取り去ったこのような放送録音で聴くところ、やはり、虚飾に塗れたものではない、実力者であったと思うのである。
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