ホルスト:組曲「惑星」

バーナード・ハーマン指揮LPO他(decca)CD

左右の分離の強いステレオで最初は戸惑う。録音操作もあり、でもそれだけに音場の拡がりがあってしっかり圧もかかり、木管など細かい楽器の動きが明瞭で、スペクタクルでメロディアスな音楽がいっそう引き立ち、同時代クラシックの指揮にも積極的だった映画音楽家の「わかりやすくさせる腕」が光る。この演奏を惑星の決定版とする人がいるのもわかる。元より小編成、ほとんどピアノ四手版だったものに、非常に理解ある協力者らを得て創り上げた(米英ではしばしばある)大管弦楽曲であるからして、手を加えるのが通例なところもあり、火星についてもいきなり銅鑼が大きく鳴らされ続けて面白い。テンポはゆったりしていてじっくり横の流れに重い響きのうねりをのせて楽しませていくやり方で、しかし激しい曲で縦もそれほどしっかり揃ってないながらさほど弛緩を感じさせないのは、アタックを尽く激しく付けさせているからで、それ含めて効果の狙い方が通俗的と思われるかもしれないが、息遣いまで聴こえてくる明晰な録音(撚れている箇所もあるが)で各楽章の性格をはっきり描き分けてきて、この比較的穏健なテンポとアーティキュレーション付けの穏当さでも飽きない。木星は聞かせどころとみて力が入っている。土星では民族音楽要素と現代音楽的な金属音のコントラストを鮮やかに提示している(このトライアングルなど使った金属質の音響はホルストが好み神秘主義的に他の曲でも使った「常套手段」である。ラストの海王星では多用されている)。両大戦間の不安な空気を伝える曲でもあり、楽天的な中に空疎な勇ましさや夜の空気を漂わせる、構造的に複雑ではないながらも内容には重層的で、他の作品にみられないものが詰め込まれ、指揮者はすでにリヴァイヴァルしたスペクタクル作品と捉えてはいるが、ゆっくりしたテンポを崩さず内声まで音を余さず出し切らせているのは、答えはここにはないが、聴く者の中に何か立ち上らせようとしているのだろう…アイヴズの時のように。最後のクライマックス、軍隊行進曲となる天王星の過激で壮大な音楽、カラヤンもやっていたオルガンのグリッサンドで上り詰めてからの死滅するラストは一聴に値する。海王星で甘美さが戻るのが、原曲のせいとはいえ少し安っぽいが。スター・ウォーズといった感じである。無歌詞女声合唱に至っては宇宙戦艦ヤマトである。それでも、これは聴きやすい。長くじっくり楽しむ人向けである。
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